ウィル・スミスの件

僕の妻は社会不安障害です。


アカデミー賞授賞式で、ウィル・スミスが妻の病気を揶揄されたとしてクリス・ロックに平手打ちをしました。

この問題、僕としては決して部外者ではいられないものです。

なぜなら、僕はウィル・スミスと同じく病気(障害)の妻を持ち、そしてクリス・ロックと同じコメディアンだからです。


まずこの一件についての僕の考えですが、ウィルの主張には100%同意し、ウィルの取った行動(ビンタ)を100%否定します。

妻の病気を揶揄されて(クリスは病気のことを知らなかったという話もありますが)黙って見過ごすわけにはいかないでしょう。
しかし、正当な主張だからこそ、”正当な手段”で主張するべきで、そうしてほしかったです。
やはり暴力は許しがたく、暴力に訴えたことによって抗議が通らなくなってしまいました。
やり方を間違えたと言わざるを得ません。


ウィル・スミスはスターであり、発言に影響力があり、受賞スピーチという発言する機会もあったので、僕も「あのビンタは間違いだった」と言えますが、そうでなかった場合はどうでしょうか。

日本のバラエティ番組やお笑いライブ等でもいわゆる「イジる」ということが多くあります。
今回のアカデミー賞の件と同じような場面も。

先日放送されたテレビ番組(芸人がたくさん出てトークをする番組)で、「コイツの母親は巨乳」と”イジる”場面がありました。
放送では「そこはイジるなよ!」と当該芸人が言う形でおさまっていました。
放送されたということはこれでヨシとされているのでしょうが、果たしてそうでしょうか。

芸人として出演している以上、ある程度のイジりは容認しているということですが、あくまでそれは本人に関してであって、その場にいないかつ一般人であるその芸人の母親はイジってはいけないと思います。

もしその母親が巨乳にコンプレックスを持っていたらどうするつもりでしょうか。

母親をイジられた芸人は「本当にダメなのでカットしてください」なんて言う機会があったでしょうか。
仮に言えたとしても、ヘタをすれば「カットしてください」の発言まで”お笑い”の一部として放送されかねないと思います。


日本では、特にお笑いの舞台では、「冗談じゃん」「みんな笑ってたからいいじゃん」で済まされることが多すぎます。
「コイツの彼女ブスなんですよ~」
「メンヘラと付き合ってて~」
とか、しょっちゅう聞きます。


芸人でもない人間を貶として作るお笑いなどあってはならないと思います。

「お笑いがつまらなくなる」と言うのであればそれはたまたま傷つく側にならなかっただけで、人を傷つけてそれをみんなで笑っていた今までがおかしかったということです。


一方で、芸人としての僕の立場では、本当に”誰も傷つかない笑い”というのも不可能だと思います。

しかし、「特定の誰か」を傷つけることは避けられます。

「誰も傷つけないなんて無理だ」ではなくて、誰も傷つけない完璧な笑いに近づけようと努力をすること、それがプロとしての責務だと思います。



今回は社会不安障害のこととは離れてしまいましたが、ジョークと病気という、あまりにも自分と関係の深いことだったので書かせていただきました。

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