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スナックに行くおじさんの気持ちがすこし分かったお話

僕はスナックに行く人の気持ちが分からなかった。見ず知らずの人の隣で粛々とお酒を飲むこと。

前の職場で可愛がってくれた先輩がいた。歳は40代前半で同い年の奥さんとの間に子どももいる。

週末どこか行きましたか?と聞くと、
「奥さんの買い物に付き合って子どもの相手して、奥さんに許可もらって近所のスナックで飲んだかなぁ。」

って言うの。当時20代で若かった僕はそんな週末やだなぁ!って心の中で思ったの。

だって何処の馬の骨か分からない、見ず知らずの人の隣でお酒飲んで何になるのっていう気持ちが大きかった。まして奥さんや子どもがいる身でって。

それにスケベ心があるんじゃないの?って思ったりもした。店員さんや女性客に顔覚えて貰ったりとか!


でもね、ほんとこれは僕がいかに何の想像力もない人間だったかをこの歳になって思うきっかけがあった。

昔の記事に登場したイケメンを覚えているかね?
良かったら読んでみて欲しい。


彼とも変わらず交流がありかれこれ5年の付き合いになる。整った顔立ちに、いつも精悍な印象だ。

重い責任の仕事をこなし、結婚後は奥さんも従業員として共に働くことにした男だ、

そんな彼から久々に連絡があり年の瀬に会った。小皺が増えたようにも見えたがどこか味があって、32歳ながら良い歳の取り方するよなぁ。と思う。

話しているうちに今日は君の行きたいところどこへでも付き合おう。奥さんに内緒でエッチなお店でもいいよ!と言うと

「さなぎくん。それしたら僕スナックに行きたい。ガールズバーでもいいし、キャバクラでもいいし、今話題のコンカフェでもいい。ゲイバーでもいい。とにかく誰かと話したいのが俺の願いかな。」

なんとなく毎日が同じことの繰り返しになっていて、ほんの些細な刺激でもいいから欲しいんだと言う。

じゃあスナックに行こうかってことになった。若い女性や中年の女性がカウンター越しに話しかけてくる。

どこから来たの?
2人はどんな仲なの?
仕事はもう休み?

なんとも他愛もないことだ。

あとは仕事は大変なの?とか家族や子どもはいるの?とか
(僕はスナックのママにこんなところほっつき歩いてないでさっさと良い人見つけろと言われたw)

お互い独身に戻ったときのように
「俺は⚪︎⚪︎ちゃん推しだね!」とか「僕は熟女も好きだ」などと謎の意見交換会をする。

そんで奥さんと約束してるから帰らなきゃ。って帰って言ったけど、表情は明るかった。

彼は「見ず知らずの人と話すとなぜか気分転換になる」と言った。

同情して欲しいわけじゃなくて意見が欲しいわけでもないんだろうか。まして感想も要らないから、ただなんとなく誰かに近況を聞いて欲しい。


僕から見て順風満帆な彼の人生を眺めてたけど、虚無感を感じたり、いっときの現実逃避を味わいたいと思うこともあるんだなと驚いたよ。

何年前だろう?マツコさんがテレビでこんなことを言ってて全く理解を示せなかったけどじわじわと感じる。

誰にも虚しさを感じることもある夜もあるだろうし、知らない誰かとなんてことない話をする場所や些細な現実逃避の場所って、僕が思っていた以上に必要としてる人が多かったのかな、と思った。

「このご時世に大変だよね。」
「よく頑張ってるよね。」
このささやかな一言に救われて頑張ってる人が世の中にはきっと多くいるんだなと思った今日この頃。

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