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はるのにおいがするね

娘は小さな頃から、季節の変わり目の少し前あたりでそんな事を口にする子だった。

からだにあたる風だったり、雲の雰囲氣、花の匂い。
そんな変化を見つけたときには、コロンッと口からこぼれるみたいに言葉がでてきた。

まるで、まだみんながきづいていない秘密を1人だけ知ってしまったみたいに嬉しそうにしながら。


わたしは子どもに対してどう接していいのかよくわからないままに、どうにかこうにかやってきたような母親だけど。
娘のその言葉が出てきた時にわたしは、心底共感していて、そしてその透明な言葉を口にする娘の事がだいすきだなと、今でも、ただそう思う。



3学期になってから、娘が登校する日がそれまでと比べてとても増えた。

笑顔も口数も増して、以前のような柔らかい雰囲氣を感じるようになった。

"今のわたしは、子どもの思春期をはじめて経験して、対応できずにうろたえてあせって、挙げ句、先生たちに迷惑をかけているただただ迷惑な母親じゃないのか…

そうなのかもしれない。

きっとそうだ。

黙って現状を受け入れて、本人にも周囲にも余計な口出しをせずに、見守る。
少しでも子どもの安心が増えるように。

わたしがいちばんしなくてはいけないのはそういうことなんじゃないか。"

この、約10ヶ月の間に何度頭を巡ったかわからない。
寝ても覚めても とはこの事か、と感じた。

朝起きたら涙が流れていることが何度もあった。

でも結局、わたしは黙れなかった。
本人にも学校側にも。

"娘が感じている違和感が、これまでの13年間を側で過ごしてきたわたしにしか分からないものだとしたら…。"

その思いが張り付いてどうにも消えなかった。

"苦しい" と言って言葉を紡げなくなっている娘を、自分と切り離して捉えることはできなかった。

学校は組織だ。

「なつきさんはとても優しくていい子で。ちょっといい子過ぎるんですよね。
気も遣いすぎるから疲れるんでしょう。
私もタイプがちょっと似ているので分かりますよ。」
最初にそう言っていた担任の先生は、義務的な薄い笑顔が意味を成さないくらいに、明らかに面倒そうだった。

わたしが何を話そうが、
"優しすぎる" "いい子すぎる" "几帳面だから"
がベースで、結局は何も動こうとはしない。

「本人の問題ですね」

と、先生のこころの声が透けて見えていた。

学校に配属されているスクールカウンセラーの方に関しては、もう。。
この人が居ることで何の変化があるというのか…全く想像が出来ないくらいだった。

1度だけで終わった(私が終わりにした)面談で感じたのは、学校(スクールカウンセラーを配属している教育委員会も含め)への不信感と落胆だけだった。

でも、あとになって思えば、それは良かったのかもしれない。
スクールカウンセラーの方からの言葉が突き刺さらなければ、私はあんなにも強い焦燥感に駆られて動き出すことはなかった。

まだ娘と会ったことがないカウンセラーさんの言葉は、わたしにとっては辛辣なものだった。

「今まで娘さんは、お母さんを喜ばせる為に頑張ってきたんですよ。」

"私は慣れることに時間がかかるタイプだから、あと1ヶ月くらいしたら大丈夫になるかもしれない" と、休み出した頃に娘が言っていた事を伝えた時のカウンセラーの言葉、
「娘さんの言葉は矛盾していますよね。
学校に来ていないんだから、慣れる事はできないですよね。」

「自信をつけさせる為に、何か役をやらせるという方法もありますけど…来てないんだからそれも出来ませんよね。」

「娘さんは自分の理想が高すぎて、実際の能力との差がありすぎるんじゃないですか?乖離というか。」

「お母さんの話を聞いていたら割合に違和感を感じたんですよね。
娘さんの良いところの話はたくさんでてきますけど、弱点や苦手なことの話が少ない。
お母さんが、そういう娘さんの良くない部分を見ようとしていない、目を背けている感じがします。そういう見えてない部分に不登校になっている原因があるんじゃないですか?」

わたしの話を1時間程聞いてくれた後に出てきた感想の言葉が、これらだった。

ここの時点でもう、わたしの落胆は相当だったけれど…

「娘さんは今まで、自分で考えて決めて来なかった。そうですよね?」

"うーん、、"と下を向いて考えていたわたしに向けて、顔を覗きこむようにこの言葉を投げられた時。

"あ。これは、完全に違う。
この人の言っていることはあてにならない。"
そうハッキリと思えた。

同時に、

"学校に任せておけない。"

と強く感じた。

すぐに、その時視野に入っていたフリースクールにわたしが見学に行き、数日後、娘の氣持ちが向いたタイミングで娘も行ってみた。

以前の記事にも書いたけれど、娘にとってスタッフの方たちは信頼できる相手で、心を開いて関わることが出来る人だと、2度目に訪問した時には認識しているようだった。

何より、そのスタッフの方はわたしの話も、そのままの娘のことも、最初から全部を信じてくれた。

人間同士だから、やっぱり感じるものがあると思う。
完全であることなんてあり得ないけど、

"どこを向いているのか"

その感覚は、言葉に出さなくても相手に伝わるものだと思う。

わたしは、そのスタッフの方たちの胸の中にある情熱や葛藤が見えた時に、

"この人たちならお願いしたい。いまの娘に関わってもらいたい。"

と、心からゆだねたいと思った。


ここからまだもう少し書きたいので…
長くなるのでまた後日書きたいなと思います。

あいかわらず、個人的なせまい話ですがここまで読んでくださってありがとうございました。

以前、7月に録音した長ーい音声も貼らせてもらいます。(ただただカウンセラーさんとのやり取りのあたりの話を長々と喋っているような音声です👀)
もしも、聞いてくださる時は、喋りが遅いので1.2倍速とかなにかしらの倍速で聞いてもらう方がいいかと思います。



*miyu283さんの写真をお借りしました。
ありがとうございました😊
わが家の玄関にも水仙が咲いています。
昨年の球根から、また今年も花を咲かせてくれました。逞しさと可憐さ。見るたびに氣持ちが明るくなります。

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