就活遠征の合間に

水上バスに乗るのは記憶にある限り初めてだった。遊覧船は乗ったことがあるけれど。

 私はちょうど就職活動の真っ最中で、あと何社かの試験を控えているところだった。地方在住だった私は、東京の親戚の家に居候しており、就活の合間に東京観光をしようと思い立ったのだった。

 桜が美しく咲く浅草寺の波止場から、隅田川をくだる。無数のビルのあいだにスカイツリーが見える。いくつもの橋の下をくぐり、浜離宮へとたどり

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麗らか

春朝の白白明けに、幽幽とした空が次第に明るくなった。
 わたしの裏中も、だんだんに目覚めた。

 雑雲がない、真夏の清んで大空。
 もし、その働きすぎな太陽が少しサボるなら、皆も気軽に過ごすと思う。
 わたしの中身も、一緒に冷やすでしょう。

 秋のある日、スカイラインの端っこに、
  いつも通りに日が暮れているところ。
 また、こんな長閑な金色に一日がおしまい。

 深くて、何も見えない夜空の中

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台湾へ来たら、街で私と会えるかもしれない~★♪
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Daily Lights: 春

去る2017年3月,東京大学本郷キャンパス・駒場キャンパスで撮影した写真を,卒業間際にLab+Cafeで展示させていただいた.年度末という忙しい時期かつあまり宣伝もしなかったので,知り合い中心にポツポツと見にきてくれたくらいだったが,大きくプリントした写真の迫力を感じ取ることができたし,ワクワクしながらフライヤー作成や挨拶文を考えたりしたのはとても楽しかった.ご来場してくださったみなさま,ありがと

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『春待つ幽霊』

二〇一九年、明けて六日目にぼくはケガをした。自宅の階段で転んだのだ。年末には忘年会を、年明けすぐには新年会を開き、ふだんなかなか顔を合わすことのない友人たちの笑顔を目にし、そして彼ら一人ひとりの新年の抱負などを耳にして、自分も頑張ろうと、身体をふるわせた直後のできごとである。
「俺も負けちゃいられない。さあ頑張るぞ」の第一歩目を、ものの見事に踏み外し派手に転倒したのだ。右足首の靭帯を全面的に損傷し

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八幡交番の桜

去年、桜を巡るエピソードを募集していると知って、大学院通学途中で見てた八幡交番の桜の木を思い出した。

立派な一本の大木で、傘を開くように横に広がった桜の木が、交番の屋根のようで。ジブリの世界に出てくるような桜だった。大学院の修了式は9月だったので、もう何年も見ていない。まだあるだろうか。気になって応募してみた。

私にとって、あの桜の木は特別だった。

ハタチの誕生日、摂食障害を診断された。当時

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【詩】粧う

アザミの花が吹いた粉(こ)を頬紅に

差して 眦(まなじり)に影を

つけて 

蝶々の鱗粉を白粉(おしろい)に

にきびの跡には黄色い蝶のを

のせて

たんぽぽを化粧筆にしてはたいた

イチイの蜜を艶出しに薬指で

えぐり

山葡萄を見上げながら唇をつついた

指に巻きつけた蜘蛛の糸で

落として

ふきの葉に溜まった露(つゆ)で肌を整えた

暑くなったら

蜻蛉(とんぼ)の羽で皮脂(あぶら)

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心安

とうとうこの時が来た。

 ここ数日、ばたばたと追いかけているゴールは、今目の前に迫っている。
 このボーディングを待つ時間の短い間で、心は少々落ち着き。

 広い待合ロビーで、涼しい空気がのんびり游いでいる。
 その爽涼な雰囲気に浸るまま、盛り上がりすぎる胸中を冷やしている。
 この旅出前の穏やかさ、
  旅プラン中の細い末節は、もう一度頭をよぎった。

 ちょっと怖くて、面白い異邦グルメ。
 

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