ぺんだんと 第八章 作:Erin

「や、やめて!」

璃子がペンダントを放り投げようとした。

そのとき、窓から璃子の腕をつかむ手がシュンっとでてくる。

「きゃああ! だ、だれ!?」

「お前こそ誰」

窓から手を出すなんて一人だけ。瞬だ。

「瞬、だめ!!」

瞬が璃子を殴る構えをしている。だけど、私の声は届かず、璃子を殴ってしまった。

「きゃああああ!!!」

殴られた璃子は右手を床につき、殴られた頬を左手で押さえている。

その光景を見て申し訳なさもあったが、今までされた事と比べると、お互い様かもしれない。

でもやっぱりね……

そんな璃子を周りにいた女子が彼女を抱えて教室を出た。

瞬は私の目の前で足を止め、ペンダントを渡してくれた。

「由梨から聞いた。大丈夫か?」

「それよりなに璃子殴ってんの!? 女の子だよ!」

「え、女だったのか。男かと思った」

「下半身みろよ、スカートはいてたでしょ!」

「え、ああ、なんかごめん」

安心したからだろうか。自分の裏を瞬に見せてしまった。

「あいつらのことだから絶対先生にチクるよ! 停学させられるよ!」

私はガタガタ震えながら言った。自分のせいで瞬が停学になるなんて絶対嫌だ。

巻き込みたくなかったーー

「大丈夫だって。俺はやりたいことをやっただけだ」

瞬はそう言って私の頭をくしゃくしゃとなでた。

なんでみんなは瞬を不良なんていうんだろう。

自称真面目でもやればできるし、こんなに、こんなに優しいのに。

気づけば涙が出ていた。強気でいられなくなったから、瞬が側にいたから……

瞬が抱きしめてくれる。

あたしが泣き止むまで、抱きしめていてくれた。

その後、瞬は一か月の停学。

先生もいじめのことに感づいていたらしく、璃子たちは反省文を書かされた。

その日からいじめもうわさもなにもなかったようにすべておわり、平和な毎日に戻った。

そして3月、久しぶりに瞬が登校してきた。

先生たちはもう来ないだろうと思っていたけど、普通に来ていることにびっくりしていた。

お弁当は由梨と、たまに瞬と一緒に食べている。

「ねぇねぇ、4月から拓斗が転校してくるって!!」

由梨のその言葉にはびっくりした。受験した中学の授業についていけない理由で転校してくるそうだ。

「やったー! みんな同じクラスだ!」

4月、始業式。由梨とクラス発表の紙を見ていた。

由梨も、拓斗も、瞬とも同じ7組になって、胸がとても熱い。

どれだけ嬉しかったかって?

嬉しすぎてにやけてしまうくらいだよ。

これから楽しい学校生活が始まると思うと。

私の胸ポケットには銀色の星のペンダントが入っている。

瞬、まだ言えてないことがあるの。

でもね、この2年生の間には絶対言うから、

ーーーー『好きだよ』って。

「夏美!」

瞬が手を振ってくる。あたしも、手を振りかえす。

Part1 End