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『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』の魅力とは? 体験レポート~優美から深美な世界~

シャネル、グッチ、ルイ・ヴィトン……数多くある国際ブランドの中で「イヴ・サンローラン」と聞いてどんなイメージを持ちますか?

シャネルやグッチのような印象的なロゴや、ルイ・ヴィトンに代表される誰が見てもわかるようなモノグラム柄が、イヴ・サンローランには薄い分、ブランドイメージは謎に満ちているのかもしれません。

そんなイヴ・サンローランの歴史を紐解くかのように、『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』では、彼の幼少時代から始まり、「ディオール」のデザイナー時代、自身のオートクチュールの栄華を極めた時代、そして後年まで、長い人生を追いかけた展覧会となっています。

会期は、2023年9月20日〜12月11日、国立新美術館にて開催。

ファッションに興味がある方はもちろん、あまり詳しくない方も、現代の洋服に至る成り立ちを知るキッカケになるはず。

あなたの知らない「イヴ・サンローラン」を見つけてみませんか?

『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』はどんな展覧会?

『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』は、2008年6月1日に逝去したイヴ・サンローランの半生を追いかけた展覧会です。

フランス・パリにある「イヴ・サンローラン美術館」の全面協力のもと、彼の残した作品や洋服、ファッションの起源に迫る内容。

会場は、以下の11フロアで構成されています。

「0.ある才能の誕生」

「1.初となるオートクチュールコレクション」

「2.イヴ・サンローランのスタイル アイコニックな作品」、

「3.芸術性 刺繍とフェザー」

「4.想像上の旅」

「5.服飾の歴史」

「6.好奇心のキャビネット ジュエリー」

「7.舞台芸術――グラフィックアート」

「8.舞台芸術――テキスタイル」

「9.アーティストへのオマージュ」

「10.花嫁たち」

「11.イヴ・サンローランと日本」

所要時間は1時間〜2時間程度。途中休憩スペースもあるので自分のペースでゆっくり見てまわることができますよ。

特に「9.アーティストへのオマージュ」は、写真撮影が可能なスポットなので、イヴ・サンローランの絢爛豪華な衣装をじっくりとカメラに収められます。

目や心に焼き付けることも大事ですが、写真に残しておける貴重なこの機会をお見逃しなく。

イヴ・サンローランの魅力~優美から深美~

ここからは筆者の感想も踏まえて、特に注目してほしいポイントを紹介しましょう。

「0.ある才能の誕生」

最初のスポットは、イヴ・サンローランが幼少時代から学生時代に描いた下絵を見ることができます。

例えば、17歳の時に「国際羊毛事務局のコンクール」のドレス部門で入賞しており、その時の撮影プリントが展示されていました。

※「国際羊毛事務局のコンクール」とは、現在ザ・ウールマーク・カンパニーが開催するデザインコンテスト「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(International Woolmark Prize)となっており、当時無名だったイヴ・サンローランやカール・ラガーフェルドを発掘した権威性のあるコンテストです。

他にも、20歳の頃に創作した『おてんばルル』という絵本のストーリーボードなども見られ、若かりし頃のイヴ・サンローランがファッションだけでなく、絵本など、ジャンルにとらわれず、さまざまな分野で創作に取り組んでいたのが伺えます。

イヴ・サンローランの細身でスタイリッシュな風貌とは逆に、内面に秘めたクリエイティブなエネルギーが作品から垣間見え、若い頃から才能を発揮していたのを感じました。

「4.想像上の旅」

「4.想像上の旅」では、彼が手掛けた「アフリカンスタイル」や「中国人モード」といった、多国籍なファッションに触れることができます。

もともと彼は、旅行好きではなく、インドア派だったというから驚きました。それまでの作品はモノトーンの色味が多かったのに対し、

パートナーと過ごしたモロッコやいくつかの外国への旅が、自身のファッションスタイルを変化させるキッカケへと繋がります。

アフリカの大地やアジアのオリエンタルな空気に触れて、色彩やスタイルが進化していったのです。

上品で’’優美’’なファッションが、より造詣の深まった’’深美’’へと、洗練されていきました。

※編集部注釈)「深美」はライターによる造語です。


「11.イヴ・サンローランと日本」

「11.イヴ・サンローランと日本」では、日本を訪れたイヴ・サンローランの楽しむ姿が、当時のビデオカメラに残された映像で鑑賞できます。

ホームビデオのような内容で、素に近いイヴ・サンローランの姿がそこにはありました。

小さなテレビモニターでしか流されておらず、音もなく、プライベート映像のような感じですね。

しかしそこには、三島由紀夫との交流もあり、親日家のイヴ・サンローランが日本で愛着を持って過ごしている様子が映し出され、微笑ましく、同じ日本人として嬉しくなりました。

本展覧会を日本で開催する意味を、感じ取れるコーナーです。

躍動を感じるファッション

後年イヴ・サンローランは、女優カトリーヌ・ドヌーヴとの交友関係を通じて、映画や舞台衣装も手掛けることになりました。

名作『昼顔』はカトリーヌ・ドヌーヴ演じる上流階級の女性が、自身の内に秘めた欲望を満たすため性を売るという難しい役柄。

イヴ・サンローランの衣装も、上品すぎると場違いになり、逆に淫靡な装いになると淑女としての気品が落ちてしまいます。

赤や黒を基調としつつ凛とした風貌に仕上げることによって、孤高の気高さを感じる衣装へと創り上げたのです。

▼アマゾンプライムで『昼顔』がご覧になれます。

https://www.amazon.co.jp/dp/B019MJ9Z7S

舞台衣装では『ジジ・ジャンメール ショー』の絵コンテが見られました。

絵コンテだけだと一見するとお祭り騒ぎのような衣装にもかかわらず、舞台上の姿を見ると麗しさと躍動感を感じるスタイルに驚愕。

実際に展覧会のラストにある映像コーナーでは、舞台で動き回る姿が見られ、日常で着る洋服と、エンタメショーの衣装の違いをハッキリと理解できた瞬間でした。

普段、生活で着る洋服は、華美になり過ぎず表にでない隠れた存在感が大事。一方、舞台衣装は一目で観客の度肝を抜く奇抜さが重要になってくるのです。

本展覧会の真骨頂は、前のフロアで見た絵コンテが頭にインプットされたのち、ラストの映像コーナーで実物を見ると、”頭の中のイメージ”が”実物として動きまわる”という感動体験です。

二次元だった作品が、三次元として現れるのです。他のアーティストの絵だけの展覧会にはない醍醐味が、『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』にはありました。

行こうかどうか悩んでいる方や、デートや遊び先を探している方は、『イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル』に足を運んでこの感動体験をぜひ味わってみてください。

あなたの知らなかったファッションの真髄が、きっと見つかるはず。

※図録は完売済みのため、公式サイトからネット販売で購入できます。
公式サイトはこちら

体験レポートを動画にまとめました。イヴ・サンローランの有名な「モンドリアン・ルック」など、記事では紹介していない衣装があるので、展覧会の雰囲気がわかるはず。参考にしてみてくださいね!


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