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安多化粧合板ギャラリーを見学して

ninkipen!さんが設計された安多化粧合板のギャラリーを見学して来ました。

安多化粧合板は建築家やインテリアデザイナーの方に愛用され、世界中の山々から独自の突板を供給されているようです。

簡単ですが、見学して感じたこと、考えたこと私的なレポートをさせていただきます。

配置計画の妙

敷地は東西二面が道路に面し、西側の道路を隔てて既存の工場があります。
今回の建物用途は純粋にギャラリーのみ。
そして設計された建物は木造で架構が特徴的なのですが、私は配置計画の素晴らしさにまず目がいきました
上述の通りの敷地であれば普通は、両方の道路に面してそれぞれ駐車場などを設け、セットバックして建物を配置してしまうと思うのです。
東側がお客様エントランス、西側がバックエントランスといった形で。
ところが建物を北側に寄せ、南側に大きく外部空間を確保している。
その効果が素晴らしくて、まず建物の裏側を作らない、そして表側に道路ー外部空間ー内部空間という重層性を生み出している。外部空間(庭と駐車場を兼ねたような場所ですが)を設けることで人が敷地に入り易くなり、東西に長い敷地なので、東側にファサードを設けた場合より、ギャラリーとして必要なワイドフロンテージを生み出している
ギャラリーとしての本質がまず配置計画で解かれていることに感服しました。

木造のヴァレリオ・オルジアティ

建物の形状はとてもシンプルです。南側の庭に向かって片流れ、庭に対して大きく庇が突き出ています。
対して内部空間は少し複雑な印象を受けます。プランはワンルームでシンプルなのですが、木造で大スパンと大きな庇を支持しているため、割と複雑な形状が目に留まります。
そこで思ったのですが、もっと架構をシンプルにしようとすれば出来るのに、あえて複雑な力の流れを可視化する構造形式を選択している。
建築は往々にしてシンプルなアウトプットを目指し複雑な構造計算を経るものですけれど、ここでは逆に自然な構造の在り方に身を任せて、あるべきアウトプットが導かれているようでした。
その建物の佇まいに対してスイスの建築家ヴァレリオ・オルジアティが木造で建物を作ったらこんな感じになるのかな、とふと思いました。
空間の中に柱が2本とそこにスチールの細いブレースが架かっていて、ワンルームが緩やかに仕切られていました。

配置計画からプラン、架構形式に至るまで構成が明快な建築で清々しい印象を持ちました。

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