1からはじめる日本の建築家10選
建築って海外では一般教養です。
その国の代表的な建築家の名前くらいは国民はみんな知っています。
日本では建築って一般の方にはなかなか馴染みがない気がします。
でもアートや文学のように、建築にちょっと詳しいとクールだと思うのです。
そこでまずは戦後の日本に絞って、知っておくべき建築家10人(組)を紹介します。
SANAA
絶対に知っておくべきはSANAA。サナアと読みます。妹島和世さんと西沢立衛さんが主宰する建築ユニット。
スチレンボード(建築模型でよく使う白い発泡スチロールを白いケント紙で挟んだもの)の模型がそのまま立ち上がったようなミリマルなデザインが特徴です。時代によってプランや材料、屋根形状などを探求されています。シンプルながら常に新しいアイデアを世界に投げかけ30年以上建築界をリードしています。
建築界のコム・デ・ギャルソンみたいな存在。
「SANAAの建築が気になるよね」と言えば、ソフィスティケートされた印象を与えます。
金沢21世記美術館などが有名です。
隈研吾
100人以上が働く大アトリエのボスにして、東大建築学科教授。最後の巨匠建築家の匂いを漂わせています。
石や木、土など素材の扱いに特徴があり、和風建築を現代的に昇華させる手腕も右に出る者なし。工事中の国立競技場の設計者ですが、ちょっとビッグマックっぽいデザインには賛否両論があります。
様々な素材を次々にプロデュースする建築界のTETSUYA KOMURO。
「隈さんの建築ってあんまり好きじゃないんだよね」と言えば、反体制的な雰囲気をまとえます。
根津美術館などが有名です。
安藤忠雄
大阪が生んだ建築界のレジェンド。東大卒が当たり前の建築界に元プロボクサー、高卒で建築を独学で学んだという経歴で彗星の如く現れました。
コンクリート打放しの建築が特徴です。しかし訪れてみると、空間と空間のつなげ方=シークエンスや光の扱いに天才的な才能が発揮されています。
氏のキャリア、人を魅了する言動からして、建築界の田中角栄です。
「結局、安藤さんの建築が好きかな」と言えば、ものすごく建築を見てそうな印象です。
代表作は多すぎますが、例えば直島の地中美術館などはわざわざ行く価値あります。
伊東豊雄
安藤さんと同い年で東大卒のエリート建築家。いろいろな点で安藤さんと対比的で、安藤さんが半世紀以上コンクリート打放しに拘っているのに、伊東さんは時代に応じて、というか時代を先取りした新しいスタイルを取り入れ建築界をリードしています。
近年はアルゴリズムデザインを活用した建築をデザインされています。国立競技場のコンペでは惜しくも隈さんに敗れました。
SANAAの師匠でもあり、数多くの建築家を輩出していることでも有名です。
まさに建築界の吉田松陰。松下村塾。
「伊東さんの建築は初期が好きだな」と言えば、ツウな感じがします。
近年では台中のオペラハウスが代表作です。
坂茂
アメリカの南カリフォルニア建築学校というところを卒業した逆輸入建築家です。
坂さんといえば紙の建築。紙管パイプを使った唯一無二の建築を作っています。これを応用して被災地支援を行なっていることでも有名です。
建築界のイッセイミヤケみたいな存在。
坂さんを知っていれば社会派な印象です。
代表作は富士山世界遺産センターなど。
丹下健三
日本の近代建築の巨匠を挙げればキリがありませんが、せめて丹下さんだけは知っておくべきです。
戦前の建築家はヨーロッパにその模範を求めてきました。丹下さんの上の世代もパリのコルビュジエの事務所に学び、モダニズムの洗礼を受けました。丹下さんもモダニズムの影響を十分受けていますが、それを日本的に再解釈し日本建築を世界のトップレベルに押し上げました。
建築界の天皇です。
丹下さんを知っていると年配の方から感心されます。
広島ピースセンターが代表作。
内藤廣
東大と双璧をなす早稲田大学建築学科を卒業後に単身スペインに渡った無頼派。なぜか東大の土木学科で教鞭をとっていましたが、土木の世界にデザインという概念を植え付けた氏の功績は大きい。
屋根の架構に特徴があります。いわゆる建築家のような奇抜なデザインはせず、真っ向勝負しています。駅の建築も得意です。
建築界の良心、国会の参議院みたいな存在。
「内藤さんの建築に惹かれる」と言えば誠実で浮気しない印象を与えます。
代表作はとらやの店舗など。
藤本壮介
東大を卒業後、どこにも所属せずに独立した新しい建築家。
とにかく建築を再発明するスタンスで創作されています。そうしたところがコンペで評価され、若くして海外でも活躍されています。
コンペにやたら強い点では、建築界の小泉進次郎といえるかもしれません。セクシー。
「藤本さんがこの間海外コンペで勝ってたよね」と言えば、オタクな建築学生とも話が弾みます。
武蔵野美術大学図書館などが有名。
長谷川豪
建築家を多く輩出する東京工業大学出身の若手建築家。
住宅を中心に作品を作られていますが、小さいながらどれも実験的な取組みが行われています。コンセプトは日本的ですが、出来上がった建築はどこかスイス建築のようなミニマルな佇まいをしています。
作品数は多くないものの、それぞれの完成度の高さはバルミューダの家電のようです。
「今度、吉野杉の家に泊まりに行こうよ」と言うと、友達は喜んでも、彼女は嫌がるかもしれません。
上賀茂神社の休憩所はコーヒーさえ買えば誰でも見学できます。
田根剛
大学卒業後、海外に渡り、アトリエで働いている時に、仲間と応募したエストニア国立博物館が1等を獲ってしまい、一躍有名となった建築家。
博物館竣工後にユニットは解散しましたが、いまもパリを拠点に世界中で活躍しています。
高校時代はJリーガーになれるほどのサッカーの腕前だったそうです。
まだ作品は多くないので、特徴は語りにくいですが、プロジェクトを始めるに当たって、徹底的なリサーチを行うのが特徴のようです。
パリから日本に逆輸入される建築界のメゾン・キツネのような存在。
田根さんを知っていれば、にわか建築好きは卒業と言えるでしょう。
代表作はいまのところエストニア国立博物館ですが、弘前の美術館など日本でも様々なプロジェクトが進行中。
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意外と10人を挙げるのは大変でした。でも書き終えるとあの建築家も入れたいなあと欲が出てしまいます。
プリツカー賞という建築界のノーベル賞と言われる賞があるのですが、日本人の獲得は最多なのです。日本で建築のブームはあまりありませんが、海外から見ると日本って建築最強国、サッカーでいうとブラジル、ラグビーでいうとニュージーランドみたいなかんじです。
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