記録に残すと、人生の道標を振り返ることができる
今までのコラムでも書き綴ってきたが、若い時は何かと悩み、迷い、焦る。
今の日本の若者は、特にその傾向が顕著になってきたと思う。
高校、大学の進学で悩み、就職活動になると、人生のすべてがこれで決まると思い込んでは悩み、迷う。
中には、内定を何社も獲得して、それでどこに決めるかを悩み込む不思議な人もいる。
20代そこそこで、自分の天職など決めれるはずもないのに、職業選択で迷走する。
一部の変わり者と見られるかもしれないが、若くして起業家を目指す者もいる。
彼らも総じて焦っている。
「早く成功せねば」と。
もっとも、日本全体が、先行き不透明で、不安や心配が先に立ってしまい焦燥感で溢れている。
まあ、若者だけに「焦るな」云々言うのは可愛そうな気もするが・・・。
私も、20代、30代を振り返ってみると、随分些細なことで悩んだし、焦ったものだ。
今と比べると、大して仕事もできていなかったと思う。
当時のビジネスの場面場面を思い出してみると、10年先のことなど、おぼろげながら考えてはいたが、実際は目の前のことしか見えていなかったと思うことが多い。
過ぎ去った過去のことだから、冷静に振り返れるのだと人は言うだろう。
その通りである。
しかし、今の社会はとにかく周囲の情報や噂に振り回されやすい。
その結果、焦燥感が募る。
世界の中でも、主体性を失った日本を象徴するかのように、ただ何となく流されるように生きている人が増えた。
その一方で、身近な人の話や噂、インターネットの真偽の判断ができない情報、メディアの偏向報道に振り回されている。
働くことだけを考えても、この20年でぞっとするほどの情報が溢れるようになった。
就職活動、仕事に関する書籍などの情報など・・・。
私が、社会人の一員となった頃は、こんなに情報は溢れていなかった。
専門書やノウハウ書を探すのも一苦労だった。
当時は、私にとって思いがけずに、専門外の職種であるITに関する仕事を始めることになったが、勉強しようにも、本屋には満足するような本は存在しなかった。
一方、転職しようにも、今ほどの転職情報は溢れていなかったし、若くしての転職はあまり世の中で認められていなかった。
ところが、今は、転職を誘う情報も溢れている。
就職支援会社などは、新卒採用支援をしておきながら、一方では、第二新卒歓迎と明らかに矛盾するビジネスを展開する。
一つの会社にじっとしていれば良いのか、転職すればよいのか?
若者に焦るなというほうが無理なのかもしれない。
時代に関わらず、どんなスーパースターも、成功している人は、“自分”を持っている。
決して、周囲の雑音には振り回されない。
意志が強いのだ。
明確な目標を持って、コツコツと自分のペースで根気良く努力を重ねているのだ。
とはいえ、そもそも人間は弱いものでもある。
いきなりプロスポーツ選手のように、タフな精神力は身につかない。
少しずつ、メンタル面の強化が必要だ。
人間は、自分の存在の小さいことに気付いた時、ホッとする。
そして、客観的に自分を見つめることができる。
例えば、外国に住み、日本のことを外から見るのも良いだろう。
最も良いのは、宇宙から地球を見ることだが。
簡単だが、意外と役に立つとっておきの方法を紹介したい。
これは私自身も実践しているものだ。
まず、自分のその時の目標と歩んできた道標を記録すること。
自分を客観的に見つめ直す方法として、記録することは意味がある。
もちろん、計画どおりに事が達成できるとは限らないし、実際達成できないほうが多い。
この秋、プロゴルファーの片山晋吾が25勝を達成し、国内ツアー永久シードを獲得した時のニュースが印象に残った。
実は、デビューした20代の日記に、35歳で永久シードを取ると記していたそうだ。
私は日記ではないが、一年に一回の節目には、人生の目標を記録している。
仕事だけではなく趣味や遊びも書くことにしている。
もっとも、達成できていないことも多いが、少しのできたことに焦点を当てれば、自信にもなるし、また、やる気が湧いてくる。
その当時、何を目標としていたのかを振り返り、わずかばかりの成長を確認する。
なんとなく嬉しくなるものだ。
さらに、3年、5年、10年単位で、自分の仕事や勉強を具体的に振り返ると、過去とてつもない膨大な時間があり、地道に活動をしてきたのだと気付く。
そこで、また、これから先の3年、5年、10年を考えて目標を立てる。
そうすれば、相当多くの活動や取り組みができることに気付く。
極端に言えば、時間をかけてコツコツやれば人間なんでもできそうな気さえする。
この繰り返しがモチベーションの維持に繋がる。
何歳になっても、この感覚が大切だと思う。
日記を書くことは、相当な根気が必要だと思うが、誕生日や年初に、自分の夢、将来の目標、今年達成したいことなどを記録しておくぐらいは意外と簡単だ。
繰り返しになるが、人間は何かと焦る。
人と比べては焦り、自分の勝手に決めた目標に対して焦り、周囲に振り回されて焦る。
アテネ五輪に参加した柴田選手の言葉が強烈に印象に残っている。
下馬評とは裏腹に競泳で金メダルをとったのだ。
彼女の口癖は、“あわてず、あせらず、あきらめず”。
もう一つ、私が好きなフレーズがある。
『人生何かを始めるのに遅すぎることは何もない』
(本記事は、ブログ「近藤昇の会社は社会の入り口だ」に、2009年1月5日に投稿したものです。)