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浦島太郎をなんとかしてハッピーエンドにする 2

浦島太郎は浜辺の岩陰で隠れていました。山で囲まれたこの土地はから誰にも見つからずに逃げ出すには、海へ行くしかなかったのです。筏を作る時間もない、船を盗むと漁師さんに迷惑がかかる。泳いで逃げるしかないのだろか。母親の為とはいえ、なんて無計画なことをしたのだろう。太郎は途方に暮れてしまいました。

すると波打ち際の方から子供たちの声が聞こえてきました。岩陰から覗くと、4,5人の子供たちが亀をいじめていました。

国が圧政でギスギスしているから、子供たちも暴力的になり弱い者いじめをするようになるのだ。太郎は岩陰から飛び出して子供たちに駆け寄り、やめるように言いました。子供たちは、わーっと言って逃げて行きました。

「あ・・」浦島太郎は青ざめました。子供たちに姿を見られてしまった。彼らは浜辺に知らない男がいたことを大人たちに言うだろう。そしてすぐに役人に伝わるだろう。私が捕まったと知ったら、母は自害するに違いない。

「私と一緒に海の中へ逃げませんか?」

その声は助けた亀の方から聞こえてきました。直接心に話しかけてくるようでした。

とにかく、ここではないどこかへ。

浦島太郎は亀の背に乗って、波をくぐり、海の中へ入って行きました。

到着したところは、目もくらむ美しさの竜宮城というところでした。この城の主は乙姫様という大変美しいお姫様でした。亀は事情を話し、浦島太郎を竜宮城に迎え入れて欲しいとお願いしました。乙姫様は困りました。陸と海の中では時間の流れが違うのです。亀はそれを知りませんでした。乙姫様は亀にすぐに陸に戻り、様子をうががってくるように指示しました。国が安定していれば、なるべく早く帰るべきだと思ったからです。

亀が様子を見に行っている間、乙姫様は浦島太郎を宴会でもてなしました。太郎は、鯛やヒラメが舞い踊る、絵にも描けない美しさに驚くばかりでした。

亀は再び陸に上がりました。ちょうど夕日が海に沈む頃でした。浜辺で老女が海に向かって手を合わせていました。亀は心の声で話しかけました。

「私はここで毎日、息子のために祈っているのです。20年前、命を追われて姿を消したのです。息子のおかげで私はこの歳まで生きることができました。どこかで元気でいて欲しいと、海に沈むお日様にお願いしているのです。」

老女は浦島さんのお母さんでした。

「浦島さんは無事です。この浜から私の国に来てもらいました。村の様子はいかがですか。争いは治まりましたか?」

「あれから、君主はさらに厳しい政治を行いました。国中への監視を光らせて、人々はおびえて暮らしました。しかし、10年前に隣の国に攻められてあっという間に政権は変わってしまいました。誰も、君主を守ろうとしなかったのです。それからは、争いもなくこの村も穏やかな村に戻りました。」

「おーい。暗くなるから、もう、帰ろう。」

その声は、浜の岩の上に立つ男の人からでした。

「太郎がいなくなってから、村の男の子が家のことを手伝ってくれるようになったのですよ。」

それは、亀をいじめていた子供の一人でした。浜でお祈りをしているときに出会い、山で一人暮らしをしていると聞いて、力仕事をしてくれたり、魚を届けてくれたりするようになったそうです。

亀は浦島さんのお母さんの無事と村の平安を伝えに、急いで竜宮城へ帰って行きました。

つづく



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