見出し画像

犬と暮せば

「コルクの好きのおすそわけ」の担当が回ってきた。

マンガや小説などの作品に限らず、好きなものを存分に語っていいとのことなので、お言葉に甘えて今回は好きランキングNo.1である「犬」について語りたい。

--

小さい頃からずっと、犬を飼っている。

初めてうちに犬が来たのは、僕が6歳の頃。
小さくてかわいい柴犬を飼い始めた。

当時流行っていたドラマ『家なき子』に影響されてリュウという名前にしたかったけど、兄にジャンケンで負けて、ロクという名前となった。

小西家は六人家族だからという理由で、ロクだ。今考えてみると、ロク以外の名前は考えられないので、あの時ジャンケンに負けた自分を褒めてあげたい。

ロクはとにかく好戦的で冒険心の強いワンコだった。

ロクは我が家に来たばかりの頃、小西家の末っ子である僕にたくさん襲いかかって、よく泣かせていた。後で知ったが、犬は所属する集団の中で最下位になるのがイヤで、自分より下の存在を持ちたがるそうだ。

こうして早々に、小西家における僕の最下位が確定した。すると、ロクはとたんに優しくなり、兄のように僕に接してくれるようになった。

とても厳格な教育方針の家庭で小さい頃よく父に怒られていたのだが、そのたびにロクはいつも僕を守ってくれた。

父が僕に怒り始めると、ロクは最初は二階の寝室で、怯えて震えているのだが、途中で意を決してダダダッと階段を駆け下りてきて、そのまま全力で父に見事なショルダータックルをするのだ。

ロクの健気なかわいさに押し切られ、父が僕を怒るのは、そこで終了となる。それを一度ではなく、僕が怒られる度に、毎回やってくれていた。

あの頃ロクが守ってくれていなかったら、僕はもしかしたら非行少年になっていたのではないかと思うことがある。ロクよありがとう。

ロクとの思い出は数えきれないほどある。

たとえば僕が風邪で小学校を休んだ時、ロクは散歩中に脱走して全校集会中の学校の校庭にいき、皆の前を全力疾走した。その場は大パニックになったらしい。

きっと僕の代わりに登校して、インパクトを残そうとしてくれたのかなと思っている。この騒動以降、ロクは一気に有名犬になった。多くの生徒たちがロクのことを知ってていて、よく声をかけてくれるようになった。

ほかにも、節分の日に脱走して1日豆を食べて凌いでいたり、家族で自転車にロクを載せて一緒に遠出したり、僕が落ち込んでいる時はロクにたくさん話を聞いてもらったり。ロクは我が家の生活を彩ってくれた。

でも、僕はロクの死に目に会うことができなかった。

当時大学三年生で、オーストラリアに短期留学中だった。間に合うかなと思ったけど間に合わなかった。

オーストラリアのバーリーヘッズという街でホームステイをしていた時にロクが亡くなったこと知り、その夜はたくさん泣いた。

外に出て、満点の星をみながら、ああ、あそこで輝く星がロクなんだ、と思ってたくさん頭の中でロクと話をした。その時に聞いていた、Jetの『Shine on』、Coldplayの『Yellow』はとても思い出深い曲となった。

ロクが亡くなって、家が一気に暗くなった。ロクがこれまで明るくしてくれていたのだ。うちには柴犬が必要だった。四十九日を待って、また柴犬を飼い始めた。名前はまた、ロクにした。二代目ロクだ。

数年後、猫も飼い始めた。名前はロクの次に飼い始めたからナナにした。ロクとナナはとてもいいコンビとなった。ナナも今は二代目奈々となり、引き続きとても仲が良い。

二代目ロクが我が家に来たころ、僕は21歳だったので、今度は僕の方が上かなと思っていたが、結局また僕がロクの下、最下位だった。やっぱりそれがしっくりきた。

ロクはとても懐いてくれて、僕が帰宅するたびに嬉しくてグルグル回ってから飛びかかってきて、全力で喜びを表現してくれた。

社会人になって数年が経ち、実家を出て一人暮らしを始めた。ロクはたびたび僕がいた部屋に覗きにきて、今日は僕がいないかな、と確認していたらしい。だからなるべく週末帰れる時は少しでも帰って、ロクと散歩にいくようにしている。

ロクはもう結構な高齢になるのだけど、週末帰るたびに散歩に行くと、とてもよく歩く。

すごい元気だなあとずっと思っていたけど、実は僕が帰った翌日は疲れて散歩にあまり行きたがらないということを親から聞いた。普段も、あまり長距離の散歩はしたがらないらしい。

僕がロクを散歩させている気になっていたけど、きっとロクも僕のことを散歩させている気になっていたのだ。二代目ロクも、初代と同じでとても優しいワンコだ。

--
と、ロクからたくさんの優しさをこれまでもらってきた。

犬のいいところ、それはとにかく「まっすぐ」なところだ。
好きなもの、好きなこと、好きな人に対して、とてもまっすぐ向かっていく。だから、こちらもまっすぐ向かい合っていこうと思わせてくれる。

東京事変の好きな曲『透明人間』にこんな歌詞がある。

あなたが笑ったり飛んだり大きく驚いたとき
透き通る気持ちでちゃんと応えたいのさ

あなたが怒ったり泣いたり声すら失ったとき
透き通る気持ちを分けてあげたいのさ

この歌を聴くたびに、まさしくロクに対して思っていることだなあ、と思う。犬はとにかくまっすぐだから、こちらもそれにちゃんと応えたいのだ。

犬は本当にたくさんのことを教えてくれる。パアッと明るい気持ちにさせてくれる。別れはもちろん寂しいのだけど、一緒に生きていると人生を豊かなものにしてくれるのだ。

長めの文章を書いたが伝えたいことはひとつ。
犬はほんとにかわいい。ただそれだけを言いたい。

犬と暮せば、いいことばかり。
これからも長生きしてね、と思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?