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隔絶から繋がりへ

印象的には、人と自然は切り離されがちだが、やはり人も自然の一部で、どれだけ威張ろうとも、自然の循環の中における一部でしかないことに気付かされた出来事があった。


ベランダに、育てている植物目掛けてミツバチがやって来た。
今の時期は、花粉をつけたデイジーが窓辺で咲いているから、おそらくそれを狙ってきたのだろう。
しかし訪問の際に何かに激突したのか、足を怪我したようで、デイジーより低く生えているカモミールの若苗たちの上に転がっていた。
トネリコの枝をちぎって足場を作ろうにも、もう足が変な方向に向いているのか、酔っぱらったような挙動をしていた。
羽も不自然な形にひん曲がっており、飛ぶことも難しそうだった。
壁をつたってどこかへ行くのか、最後の力を振り絞って羽ばたいていくのか行く末は分からないが、手を出さずに好きにさせていた。
少し時間を置き、再度窓際を観察すると、ミツバチはどこかに消えていた。


大自然を代表するウグイスが、突然近所で鳴き始めた。
ずっと同じ町で暮らしていて、記憶の限りでは、こんな現象はまず無かった。
いつもの緑地で鳴いていたのではなく、街路樹こそ茂ってるものの、立派な公営住宅に挟まれた通りを歩いている時に、耳に入ってきた。
緑地から飛んで来たものかと一瞬思い浮かべたが、そもそも緑地ですら鳴いているところを聴いた事が無い。
その日から突然町の鳥がすべてウグイスになったかのように、少なくとも彼が歌っている間は、カラスの声も、スズメの声も聞こえなかった。
この時町は、自然と調和された町に様変わりし、自分たちも結局、自然のごくごく一部でしかないことに気づかされたのだった。


自然は好きなのに、なんとなく切り離されている感覚に日々苛まれていたが、動物たちが繋がりについて、改めて教えてくれたような気がした。


ミツバチの訪問。
コーヒーの表面にさえ、
繋がりが映されていると気づく。

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