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外との繋がり

4日ほど前、それは各所で春らしさが1日に数回ほど見られるようになったころ、その頃から毎日鳥の鳴き声で起床するようになった。
どの日もきっかり5時50分に1羽の鳥が、家のかなり近くで鳴くようになった。
スズメに似ているが、もう少し鋭く響き、短く切った音をしていた。
あまりにも時間が正確すぎるから、隣人か家族が鳴らすアラームかとも考えたが、鳴き声の中には不規則さ(息切れやテンポの違い)があるから、野生からの使者として間違いは無い。

おそらく、私が住む家には軒が多いことから、巣作りでもしようかと物件の内覧のために何部屋か訪れている最中なのかも知れない。
そういえばまだ自分が幼かった頃は、その軒の下にツバメの巣もあれば、アシナガバチの部屋が隣同士で3つほど並んでいたころもあった。
あの頃は、フンを撒き散らす小鳥や痛々しい針を持つハチに対して嫌気がさしていたが、今思えばそのイベントが自分と生き物・自然の間を結ぶ橋になっており、その橋を自ら渡っていくことで豊かな好奇心を育めた。
街の開発が進み、あの頃の豊かさが戻らないことを思うと、少し悲しい。

ただ、1日の間の細切れの時間ではありながら、今でも自然との繋がりを感じられることは嬉しい。



久しぶりに、掃除も兼ねて網戸を取り外した。
いつも閉めきっている部屋に外向性が生まれ、自然からの空気をふんだんに取り入れていく様子を感じていた。
網戸のない、開け放たれた窓へ向かって手を伸ばせば、外とじかに触れられる。
食い気味に窓から顔を出し、空気の匂いを嗅ぐと、やはり間近に緑地があるので、森の匂いが少しだけする。
あのペラペラの網戸が、自分と自然を隔てる肉厚の壁になっていた。



人に対して壁を設置しているのは、大概こちら側なのかもしれない。
仲良くしてくれない、話を聞いてくれない…と思うのは、自分がそうしてしまっているからかも知れない。

カブトムシとか、毛虫やクモ、ヤシの木やバラなどには壁を隔てることなく直に触れられている気がするけど、人に対してはまだまだ難しい。


速度を落とす、午後3時。

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