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ゆるす範囲の広がり

うちの部屋には、たくさん植物が居る。
飽き足らず口にしたいのは、やっぱり静かな中にも動きがあるということで、ウンベラータからはバレリーナ、マドカズラからは海の波のような姿を見て取れる。
そんな様子をじっと眺めて、色々と考えたりするのは楽しい。


植物は思い通りになってくれない。
右へ伸びることを願っても左に行ったり、また自らが妖怪のような見た目に望んで変身しにいくように、葉を付け過ぎたり落としたり。
しかし、そうやって人間からの期待を無視してくれていて、内心良かったと思っている。
今、(あくまでも物・情報に対して)思い通りになることに慣れてしまい、人に対してもその期待を押し付けつつある理想主義の中、思い通りにならないことや、それを許せることを学べるからだ。


どの時間を切り取っても、すべてが楽しくて満足のいく1日は一生訪れないと思っている。
ゆえに、ああ楽しかった幸せだ、と思いながら眠りに落ちたことはない。
楽しくても悲しくても、その日の経験が多いほど考えを巡らせるので、どっちに転んでも不眠になる時はなる。
そう考えると、もはや幸せな1日が幸せな眠りを運んでくるとは考えにくくなる。
幸せに1日を終えたいという願いは、これにて潰えるわけだ。

ただしかし、ペースを落とし、自分を受け入れる機会を設けていると、その日が丼一杯の不満だったとしても、ことによると小さじ一杯しか不満のなかった日のように、その日の幕を下ろすことができる。
先週や昨日の疲れ・後悔を、翌朝に持ち越さなくても良くなるのだ。
なにより、「幸福神話」を挟まずに、気軽に今日を生きてゆける。


植物にはこれからも、期待をどんどん圧し折ってもらうことにしよう。


バレリーナ。
海の波。

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