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経営者は何のためにミッション・ビジョン・バリューをつくるのか

「自分がいったい何者で、何がしたいのか。幸せでいるためには、それを見失わないことが大事だ。」
嬢王というマンガでそんなセリフが出てくるんですが、今でも強く印象に残っている言葉です。個人の人生における格言ですが、法人においても通じる言葉なんじゃないかなと思います。

なぜミッションとビジョンとバリューを掲げるのか。以前はぼんやりしていたが、組織の成熟を目指すようになった今なら少し分かります。現場で働くメンバーにとっては、進むべき方向性を見失わないため。経営者にとっては、意思決定や事業推進にあたってブレない判断軸をもつため。端的に言うとそう理解しています。

どういう会社で何を目指しているのかが明文化されていることによって、その価値観に合わない人間は遠のき(これ大事)、価値観に合う人間は共感して近づいてくれます。これは、採用においても広報においても重要ですし、上場している会社においてはIRにおいても機能するものだと思います。

余談ですが、1年前に入社した当社のエースは会社の問い合わせフォームに連絡してくれたことをきっかけに採用に至りましたが、当時の問い合わせ時の文言を確認してみると「貴社のミッションや広告事業に大変興味を抱き、今回問い合わせさせていただきました。」と書かれてありました。良いミッション・ビジョン・バリューは良い採用の力になってくれると思います。

ミッションは北極星

ミッションは北極星だとよく言われますが、良い例えだと思います。会社を取り巻く状況が変わろうともそうそう変わりはしない、会社として追求し続けたいと思う目標のことを当社はミッションと定義しています。時代が変わってもそうそう変わりはしない目標なので、自ずと抽象度が高いものが目標になります。
対してビジョンは、ミッションに到達するためにあるべき中間目標のようなものだと理解していまして、ミッションよりは具体的なものが据えられるべきだと認識しています。抽象度の高いミッションとより具体的なビジョンがセットになることで、目指すべき姿がよりハッキリと理解しやすくなります。

例えば私の前職のウィルグループのミッションは「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」であり、ビジョンは「「働く」「遊ぶ」「学ぶ」「暮らす」の事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になる」と定められています。目指すべき姿がイメージしやすいですね。ウィルグループは採用力において他社競合を圧倒している会社ですが、その採用力を形づくっている要素のひとつにミッション・ビジョン・バリューがあるんじゃないかと考えています。社長メッセージも最高なのでぜひ読んでいただきたいです。

当社においては2021年2月ごろ、自社のミッションを「日本人アーティストがグローバルで活躍できる環境を創出する」、ビジョンを「Spotify月間リスナー100万人を超えるアーティストを100組輩出する」と決めました。ですが、イマイチだなと思ってその後すぐに変えました。「日本人アーティストがグローバルで活躍できる環境」って、別に当社ががんばらなくても数年ほどで勝手に整備されていくんじゃないか。当社がわざわざミッションとして掲げるべきものではないんじゃないか? と考えました。実際、2023年11月時点で振り返ると、グローバルで活躍できそうな日本人アーティストはXGをはじめ既ににたくさん出てきています。
そもそもなぜ日本人アーティストがグローバルで活躍できる環境を創出したいと思ったかと言うと、それがアーティストの自己実現につながると思っていたからです。その根っこの部分をミッションに据えたほうが良いと考え、「常に変革することでアーティストの自己実現に貢献すると共に、全社員の物心両面の幸福を追求する」と定めました。「アーティストの自己実現に貢献する」。これが当社のコアです。突き詰めると、私たちはアーティストの自己実現に貢献するために存在します。裏を返すと、アーティストの自己実現に貢献しなさそうなことはやらない会社であるということです。自分たちが何を目指しているのか分からなくなったとき、ここに立ち返ります。

なお、私が私自身のあり方を規定する戒めのようなものとして「全社員の物心両面の幸福を追求する」という文言をミッションに入れています。この文言は京セラの稲森さんの考え方に共感し、拝借したものです。
「アーティストの自己実現には貢献できています。でも、メンバーはいつも疲弊していて、社内の雰囲気は最悪です。毎月離職者が出ます」みたいな状況は私が望むものではありません。ウチに入るなら、ウチを通じて物心両面においても報われてほしいと思っています。

ビジョンに関しては、自分たちの持つ強みをもとに目指すべきポジションを明文化することを意識して「アドテクノロジーと音楽愛を武器に顧客の期待に応え続け、音楽マーケティング領域のリーディングカンパニーとなる」と定めました。

バリューは行動指針

バリューは会社が大事にしている価値観を明文化したものであると定義されていますが、当社においては行動指針として機能しやすいよう、具体性を意識して定めています。以下の6つです。

1. 顧客からの信用が利益の源泉。短期の売上より長期に渡る信用。
2. 経済性以上に、社会的に正しいか正しくないかを重視して物事を判断する。
3. 生産性の追求は正義。ハードワークよりも高い生産性。
4. 検証したい仮説は失敗しても良いから検証してみよう。挑戦を奨励。
5. 顧客の要望がアーティストにとってベストではないと感じたら、臆せず提案しよう。
6. 「Web広告出稿代行屋」になるな。「Web広告をマスターした音楽マーケター」になれ。

短期の売上より長期の信用。経済性以上に社会的な正しさ。このような「AよりもBを大切にします」といった文言を入れることで、メンバーが普段仕事に従事するなかで判断基準にしやすいようにしています。

当社は多様性を大事にしている会社であり、実際に多様なメンバーが働いています。音楽の現場寄りのバックグラウンドを持つメンバー(舞台監督、マネージャーなど)がいると同時に、IT寄りのバックグラウンドを持つメンバー(運用型広告経験者など)もいます。就業形態も正社員/業務委託者が入り混じっていて、働き方も異なります。それに伴って衝突も生まれます。
多様性を大事にするというのは口で言うのは簡単ですが、実際に会社のカルチャーとして内包するのは簡単なことではありません。多様さが認められると同時に、ある特定の規範意識や価値観は共有できている集団が多様性を強みにできると考えています。多様なバックグラウンドを持った各個人が共通の「あるべき姿」を想起できるような行動指針として、バリューを定めています。

▼Gerbera Music Agency ミッション・ビジョン・バリュー・ストーリー


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