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穴子とワインと食べ損ねたパフェ


これは、美味しいもの好きの今野くるみが、Pちゃんと東京穴場グルメツアーを行った記録。


初めて会うその子はSNSで知り合い、何度か喋ったことのある繋がりだった。彼女は仕事終わりの待ち合わせにもかかわらず、きちんと身なりを整えた姿で現れた。とても愛嬌のあるかわいい人だった。
今回はその子の住む東京で、完全に彼女にアテンドしてもらう形で美味しいお店を一緒に何軒か巡った。彼女はとてもグルメで、色んな美味しいものを知っている人。しかも、味の想像ができる「普通の美味しい」ではなく「こうきたか!」と思える珍しい味を提供してくれる店をたくさん知っているようだった。その他にも、私にはない思考や言葉の表現をする人だったので、彼女の目線の先にとても興味を持った。その子に「会ってみない?」と打診したところ快く承諾してくれたため、今回は彼女のオススメのお店についていく形で会うこととなった。彼女のことはここではPちゃんと呼ぶことにする。


未知なる美味
「穴子料理と地酒 浅草 川井」

東京に行くと大体いつもひとりなのでフレンチを選択する。しかし、Pちゃんと「美味しいもの検討会議」をした際、彼女の提案にあった「穴子の刺身」に心を奪われた。どうしても食べてみたい。私にしては珍しく魚料理の店を1軒目に選択させてもらった。

当日、「穴子料理と地酒 浅草 川井」で待ち合わせ。初めて会うPちゃんと挨拶を交わし、彼女を目の前に少々緊張しながらメニューを見た。穴子料理専門なので、蒸し・焼き・湯引き・・・などなど、様々なメニューがずらり。ここは穴子以外の季節のメニューも美味しいらしい。どれも気になるものばかりで悩む。でもここはPちゃんの即決力の高さに助けられた。
「気になったの、とりあえず全部行っちゃう?」
あぁ、すごい。自分だったら全部いけない。でも今回は彼女の言うことに全部のかっる気持ちで来ている。全部行くことにした。結果、これがもう感動の嵐!!写真とともに感想を書いていこうと思う。


・お通し

やった〜!にぎりだぁ〜!

もう冴えてる。Pちゃんは仕事帰り、きっと空腹だったろう。そこに1貫の握りと和物。とりあえずお腹を満たすのにちょうどいい。お店の人、こちらのニーズをわかってらっしゃる。ハマチの握りは身が肉厚。のっけからすごく、すごく美味い…


・刺身

う、美しい・・・!!まるで人魚の尾ひれのよう。箸をつけるのを躊躇してしまう盛り付け。 この美しさを崩していいのだろうか。。。つべこべ言ってる暇はない。お醤油をちょんとつけて一口。初めての食感に驚いた。身はしっかりと引き締まり、筋繊維の部分はコリコリとした歯応え。ひと噛みごとに穴子ならではの食感が口の中で繰り広げられ「これが穴子なんだね?!!」と大感動!私の瞳はキラキラしていた思う。


・ツブ貝のポテサラ
ツブ貝!…実は正直そこまで免疫がない。でもここはなんでも美味しいお店。注文してみることにした。食材との出会い方は非常に重要だ。そのファーストコンタクトが美味しい状態のものであれば、それ以降も好きでい続ける確率は高く、逆に美味しく調理されていないものであった場合は、残念ながら嫌いというカテゴリに分類されかねない。さぁツブ貝はどうか。無論、美味!!お見事!!このポテサラは温かい状態で提供され、つぶ貝も柔らかくじゃがいもの素朴な甘さとマッチしている。3皿目にしてもうパーフェクト。どうしよう、感動に心がついていけるかしら。


・イチジクの田楽

うおぉ!なんだこれは!

これも悩んだがいってみることにした。未知すぎる。Pちゃんも初めてのようだ。そもそも私はイチジクをそこまで好んで食べるタイプの人間ではない。お皿が運ばれ、そのイチジクの姿につい見入ってしまった。

す、すごい本当に田楽だ。くたんとなったイチジク、スプーンですくってお召し上がりくださいとのこと。ドキドキ。ゆっくりと口に運ぶ。未知なるお味こんにちは〜・・・んんっ?!・・・な、なんだこれは。どこかで会ったことのある味だ。美味しい、すごく美味しい。でも誰だっけ、わからない。すごい見たことある顔なんだけど。脳内の記憶のデータベースにアクセスするも、うまく情報が取り出せない。どこにファイリングしましたっけ、この味覚。「美味しい〜」と「う〜ん」の言葉が脳内で入り混じる中、Pちゃんが私に一言。
「なんか胡麻?入ってる、かな?」
「!!!!!!」
私は目を見開いた。そうだ!それだ!!これはいつぞや食べた、黒胡麻団子の味!!!!!に、似てる!!!!感動の再会。味噌の焦げ目も香ばしく味噌とイチジクの見事なマッチング。これは季節限定のメニュー。また、秋に食べにこなければ・・・あぁ大変だ


・湯引き

ここでも店主の粋なはからい。何切れか盛られる中、手前二切れはミディアムレアの状態。にくい、にくすぎる。梅肉と山葵のソースをつけてくれた。ミディアムレアは本当に面白い。何段階にも食感が変わる。甘噛みの状態でほわっときたかと思えば、中心部分はまるで穴子の筋力を感じるムキムキした食感!笑 美味しい!面白い!完全に火が通った方もプリッとしてて美味しい。お塩をつけて食べてもグッドだった。


・炙り

至福の一皿…

この皿も趣向を凝らしていた。山葵とタレがかかってあるものと、たらこが乗ってあるもの・・・・!!「たらこ!?」となったが、まぁまぁここは落ち着いて。初めに言っておくが感動の嵐だ。だめだ、やっぱり落ち着けない。山葵とタレの味付け、うまい。間違いない。問題はたらこだ。こ、これはどんなパフォーマンスを繰り広げてくれるんだ・・・。口の中に運ぶ。
「はぅわ・・・・!!!!!!」
た、た、大変だ。口の中ではらはらと、、、はらはらと解けてゆく・・・・穴子の身のほぐれ具合とたらこも小粒のものを使用しており、解け具合が一緒。もう口に入れた瞬間からマリアージュ。たらこもちょうど良い塩梅。穴子とたらこ、互いの良さを引き立たせ合っており感無量。天才すぎる。拍手喝采だ。


・握り

もう、言うことなしの旨さ

もうお酒も飲んで落ち着いて、二軒目行きますかと思っていた頃、「最後に握りを召し上がっていただきたいとのことなのですが」とおかみさん。店主からの言伝を預かってきてくれたようだ。Pちゃんと目を合わせ「ぜひ!」と即答。運ばれた握り、随分大きい。Pちゃんが一口で頬張る。よし、私も一口で行こうじゃないか。口に入れたその瞬間!!ほわわわぁぁぁ〜〜〜〜〜・・・・ 口いっぱいに柔らかく優しく穴子が満ちていく。あぁなんて幸せなんだ・・・ これが本物の穴子の握りなんだ・・・

今までお寿司でしか接点のなかった穴子。こんなにも調理の仕方次第で幾重にも楽しめるものだったとは・・・本当に素晴らしい店だった。しかもお値段もかなり良心的。二人でお酒を二杯ずつくらい飲んで、料理も合わせて1万円いかないくらい。お会計、何か抜けてたんじゃないかと再度計算してみたが、合ってる・・・ゴクリ…  来訪確定の店だった。既に繋がりのある友人たちには「絶対お勧め!!」と言いふらしている。次行くのが楽しみ過ぎる。というかもう明日にでも新幹線に乗って行きたい。

いい具合にお腹が満たされて幸せでホコホコした私とPちゃんは、意気揚々と次なる目的地へと向かった。



寄り道

ワインバーへの移動途中、雷門をスタスタと横切る際Pちゃんがクルッと振り向き私に言った。
「くるみちゃん、浅草寺でおみくじ引く〜? 凶が出るって有名だよ〜!」
そんなに明るく言われたらやりたくなる。凶を出してやろうじゃないか。素敵にライトアップされた道を歩く。いかにも観光地って感じだ。
おみくじを引いたPちゃんは大吉を引いた様子。
「私、今年どのお寺行っても大吉だったの!」キラキラの笑顔にハートを刺されそうになりながら、さて、私はどうか。なかなか出てこない。しばらくジャラジャラと振ってやっと出てきた棒の数字を頼りに、おみくじの紙が入った引き出しを開けた。私、おめでとう、凶だ。

ワインバーは「Libre.(リブレ)」というお店へ。自然派ワインを中心とした品揃えで、好みのテイストを伝えると店主がオススメのものを選んで提供してくれる。(右のラベルが可愛くてほっこり)



食べ損ねたパフェと
日本に2台しかないソフトクリームマシン

2日目は日本橋にある「teal(ティール)」 というお店を目指した。支度にやや時間がかかってしまった私は、Pちゃんに少し遅れることを連絡し、現地に向かった。電車を降りると今度はPちゃんから連絡が入った。
「くるみちゃん、ごめん、、定休日っぽい・・・!」
まさかの連絡に思わず笑った。どうやら彼女が行っていた時期から定休日が変わったようだった。とりあえず現地に到着。素敵な外装に暗い店内。でも照明が灯ってなくともわかる素敵な内装だった。ここではシーズンで提供している栗とチョコレートのパフェを食べる予定だった。「3,000円のパフェを食べるんだ!」と田舎者の私は意気込んでいたので少々残念。でも休みなもんは仕方ない。

よし、じゃぁどこ行こう。時計は11時。ふたりとも朝食をとっていなかったので、お昼にすることにした。Pちゃんが以前から気になっていたフレンチのお店「らみらむ」へ試しに行ってみることになった。Pちゃんはすぐさま検索から問い合わせまでしてくれたので、とてもありがたかった。

蔵前の駅を降り、素敵なお店がポツポツとある中を少し歩いて行くと、ソフトクリームの看板と赤い外壁が目印のらみらむに到着。店内は7人がけのカウンターのみ。シェフおひとりで切り盛りしてらっしゃるそう。コース料理の中で特に印象に残ったお皿をいくつか紹介したいと思う。

この時のコース内容はこんな感じ。「らみらむ」のフォントがかわいい。


・バター

「バター?」と思われたと思うが、らみらむのバターはまるでバターケーキのよう!パンにたっぷりつけて食べると、少しの塩味とふんわり甘い風味。バターらしさもちゃんとあり、なんだか最初から夢見ごこち。薔薇の形になってるのも愛らしい。


・フォアグラの一皿

まるでお菓子の包紙のような袋に入った姿で登場。手に取るとひんやり冷たい。中を開けると、カダイフと思われる生地に包まれフィナンシェのように形成されたものが出てきた。一口いただくと、サクサクの食感の中からトロッとしたフォアグラが!う〜〜〜んまいっ♡ ゆっくり味わいつつも、あっという間に最後の一口をパクっ。


・本当に緑のサラダ

面白い名前だ。どんなサラダなんだろう。目の前に置かれ私もPちゃんも同じように言った「本当に緑だ・・・笑」

ルッコラ、セルフィーユ、ディルなど真緑の香草をたっぷりと使用し、オリーブオイルとチーズなどの調味がされており、よく混ぜていただく。ナッツのような香ばしさも感じた。というかこんなにたくさんの野菜、フレンチのコースにしては嬉しいボリューム感だ。栄養もちゃんと取れた気持ちになれるし。もりもりわしわし食べた。この緑の詰め合わせ、ご近所で買えたらいいのになぁ〜


・ブーダンノワールのフィロ包み

この日、紙に記載されていたムール貝のオーブン焼きはおやすみ。そのかわりの一品がこれ。なんだろう、さっぱりわからない。わからないまま、シェフにまずは一口どうぞと言われるがままパクリ。なんだこれ!!なんだかわからないけどとっても美味!!
「これね、豚の血を固めたものなんです。美味しいでしょ」
「え〜〜〜〜!!!✨✨」
仰天!!こんなに美味しいだなんて!中には豚の血と豚脂肪のかたまり、玉ねぎとが練りこまれており、例えるのが難しい美味しさ。付け合わせのマーマレードとの相性もバツグン!つけて食べると、私の頭に浮かぶのは、青空の下、風が吹く草原の中を気持ちよさそうに歩いている豚ちゃん。。。。あぁ、、美味しい。。


・梨のコンポートとソフトクリーム

これがもうほんと凄かった。なんと言ってもソフトクリームがピカイチすぎる!!日本に2台しかないというイタリア製のソフトクリームマシン。日本製のマシンは空気の含有量をコントロールできないらしいが、らみらむにあるイタリアからやってきたマシンはその空気の量を調節できるらしい。一口食べると驚きの口溶け!!!一番近いのはムースだろうか、、、いやムースとも違う。軽い口溶けでふわぁ〜っと溶けていく感じが新感覚すぎる。梨のコンポートも美味しい!
実はデザートは3種類の中から選べますとシェフに言われ選択したものだった。「もう一皿いただけませんか・・・」喉まで出かけたが、グッと我慢した。でもきっと、Pちゃんも同じく思っていたと思う。ふたりでコソコソ相談して掛け合ってみればよかった。無念。でも大丈夫。ソフトクリームは逃げない。しかもイタリアにまで行かずとも、ここに来れば食べられる。また来ればいいんだ。



止まらぬ Pちゃん

Pちゃんは止まらない。さっきのコースで結構お腹が膨れた自分。しかし、蔵前にはまだまだ美味しいお店があるのだ。

次に目指したのは「ダンデライオン・チョコレート」。カカオ豆からチョコレートバーになるまで一貫して製造を行う、世界でも数少ないお店のひとつなのだそう。広い店内に入ると工場の一部がスケルトンになっており、その製造過程を少し見ることも出来る。
さぁて、どうしましょう。お腹はいっぱい。だが、Pちゃんは止まらない。
「あ!和栗のモンブランだってー!!食べるー!!」
す、すごい。Pちゃんが言うに甘味であれば結構食べられるそうだ。パフェをハシゴしたり、先日は旅行先でケーキ6つを完食したらしい。その代わりしょっぱいものは限度があるとのこと。「わたしは逆だ…」なんてぼんやり、、、している場合ではない。どうしよう、せっかく甘味好きの彼女に連れられてきたのに、何も食べないなんて勿体ない。
「Pちゃんさ、わたしこれ頼んだら、半分ずつとか食べられたりする…?」
「えぇー!いいのー!?」
Pちゃんはキラキラの笑顔だ。す、すごい。負けそう…(何が)彼女の胃袋を頼るかたちで、小さなブラウニーセットを注文することにした。

私が食べたのは3種類のブラウニーがセットになっている。「BROWNIE BITE FLIGHT(ブラウニーバイトフライト)」。この時はマダガスカル、エクアドル、ベトナムの味を。チョコレートがゴロゴロと入っていて、チョコの塊を食べているような重厚さ。味はそれぞれ個性豊か!この中では一番ダークチョコっぽいマダガスカルが好みだった。


その後は、蔵前の素敵な雑貨店を何軒か連れてってもらい、気づくとあっと言う間に帰りの新幹線の時刻になっていた。Pちゃんは帰宅ラッシュで混雑する人の波をスルスルと抜けていき、新幹線の改札口まで案内してくれ、最後の最後までお見送りしてくれた。なんて優しい子なんだ。ありがたや。



誰かの目線の先について行く

4年ぶりの東京は2泊3日で行ったわけだが、ずっと歩きぱなしでふくらはぎはパンパンを取り越してズタズタ。筋繊維を確実に破壊してしまったようだ(帰宅後まともに歩けなかった)。しかし、それを引き換えにしてもとても濃厚で良い時間を過ごせた。

会ってみたいと思える人に勇気を出して連絡し、その人と時間を過ごす。そうすると自分だけだったら知り得なかった世界が広がる。先日の母との街歩きでも同じように感じたことだが、これはとても楽しい。相手の興味の先を知ることもできるし、何よりその興味に浸っている相手のわくわくした顔や空気感を、その時その場で感じられることが嬉しい。体験を通してより相手のことも理解できるし、そこから生まれた自然な感情を共有できるのは幸せなことだ。
また今回のようにアテンドしてもらうのもいいし、自分の住んでる地へ招いてアテンドするのもよし。お互いが知らない初めてのことを共有するのもとっても楽しい。会ってみたいと思える人と、共に過ごせる機会を今後もいいペースで作っていけたらと思う。


( Pちゃん、ありがとう〜!!)



そして、またもパフェを逃す↓


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