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春、野良犬と喧嘩

私の日課、それは昼下がりのこの時間に、
公園の周りをランニングをする事。
春の晴れた空の下、心地よい暖かさ。

春になると、いつものランニングコースは、
パステルカラーに包まれる。
春風に吹かれた花びらが、汗で濡れた顔に乗る。
だが、不快ではない。とても幸せを感じる。

ああ、今日もいい日になるぞ。

と、そんなことを考えてそうな平和ぼけ
ランニングマンが走っているこの公園で、
俺は今日、野良犬と縄張り争いをしていた。

この犬は、首輪こそ巻いてはいるが間違いなく野良だ。
目つきがそう言ってる。
それに近くに飼い主らしき人もいない。

お互いに一歩も引かない状況。
公園中に俺と犬の、互いを威嚇し合う声が響き合う。

争いのきっかけは、犬のマーキングした桜の木の幹の、
上から俺が立ちマーキングした事で、
気に入らなかったのか、犬から突っかかって来た。

そもそもこの野良犬は俺がこの公園を通ると日常的に吠えてくる。
俺の社会的地位が自分より下であると思っているんだろう。
格下が縄張りを通るのが許せないんだろう。

畜生が舐めるな。人間を。俺を。
お前の曾曾曾祖父犬だかが徳川綱吉に良くしてもらったのか知らねえがもう違う。それを今日分からせる。

俺と犬の熾烈な争いが、今、始まる!

「コラ!タロウ!」
と遠くから若い女性が走って来た。
「また逃げて!ダメでしょ!タロウ!!」
若い女性は犬を叱ってる。

犬はしょんぼりしていた。
タロウは凄い怒られてた。
俺の名前も太郎だ。

俺と同じ名前の犬が逃げた事を怒られている。
逃げてるのは俺も同じだ。社会から。

「お怪我ないですか?」
と聞いてくる女性

とんでもないです。大丈夫です。
とだけ伝え僕は公園を後にした。

去る時になんとなく後ろを振り返ると、
女性がタロウのおしっこを水で流しながらタロウに話しかけていた。
何を言ってるのかは聞き取れない。

太郎のもありますとは言えない。言わなくていい。
犬のおまわりさんを呼ばれてしまう。

あいつ飼い犬かよ。

それであの目つきとは。

やつも俺も変わらないと言う事。
俺も実家暮らしだし。

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