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初恋、キラキラ


初恋は幼稚園の年長の頃だった。


家の事情で引っ越し、年長からは別の幼稚園に転入した。

暗黒だった年中の頃とは打って変わって、
転入した幼稚園はとてもいい場所で、まるで楽園のようだった。


先生は思いやりがあり優しい人ばかりで、担任の先生は天使みたいだった。
園の子も優しくて性格のいい子が多かった。
幼稚園の雰囲気も良く、子供たちの自由を尊重しているようなところだった。
自然にも囲まれていて、すべてにおいて恵まれてるような環境で……


キリスト教系の幼稚園だったけど
まるで神様がお守りしてくれてるように感じた。

いつも神様がそばにいてくれてるような…
そんな場所だった。


教会も好きだったけど、イエス様やマリア様のステンドグラスのある場所が大好きだった。
そこはいつもキラキラと輝いていて、差し込む陽の光があたったステンドグラスが綺麗だった。


そして、私はこの幼稚園で、初めて恋をした。


同じ組の男の子だった。

その子はとても優しくて……
本当に優しくて、心の綺麗な子だった。

その頃の私は、純粋に、心の目で人を見て、そして好きになっていた。


具体的に何があったかとか、好きになった時のこととかは覚えてないけど
私はその子に、今までないトキメキや感情を感じ、その子といると、とても楽しくて幸せな気持ちになった。


一つだけよく覚えているエピソードは、キリスト誕生の降誕劇をやった時のことだ。


私は、ベツレヘムの星の役をやった。

そして、好きだった男の子は、星に導かれた3人の博士のうちの一人だった。

嬉しかった。


劇の練習の最初の頃は、いろんな役も経験できたけど
ちゃんとした役が決まってから、練習から本番までの間、本当に楽しかった。


私はキラキラと星になって
頭に星を付けて博士たちを導いた。

そんな劇の思い出と一緒に、初恋の記憶はキラキラと輝いている。
ベツレヘムの星のように……


この幼稚園で過ごした時間は、神様からのプレゼントだったのだろうか。

そう思えるくらい、この頃は幸せだった。

そして時は過ぎ、幼稚園は卒園することとなったが
その男の子も入る小学校が一緒だった。

同じ組の子で同じ小学校に入る子って少なくて、たぶん私を含めて4人くらいだったと思うけど
だから、その子も同じ小学校って聞いてすごく嬉しかったことを覚えている。



小学校は別々のクラスになった。

小学1年生の頃、私は少しだけスイミングスクールに通った。
すると、そこにその男の子もいたんだけど
そしたら、その子の方から「覚えてる?」って声をかけてくれた。

それがとても嬉しかった。

「うん」って答えたと思うけど、久しぶりに話して、恥ずかしがり屋な私はあんまり話すことができなくて…

そして私は水泳初心者クラスで、その子はもっと泳げるクラスだったので、結局あまり関わることができなかった。

あまり泳げなかったからスイミングスクールに通った私は、ある程度泳げるようになってから辞めたと思う。

その男の子とは、その後、小学校で同じクラスになることはなく、自然と疎遠になってしまった。


小学校2年生頃までは好きだったと思うけど、その子と関わることもなくなり、私は他の子を好きになってしまった。

恋心は自然と消えていった。

それでも何だか気になったりとかはあって、気にしていたのかな?と思うけど。


そしてその男の子は中学校は私立へ行き、それから会うことはなくなった。



中学生の頃、

担任ではないけど親しみやすい男の先生が、クラスメイトの誰かと世間話をしている時にこう言った。

「お前らがしている恋は本当の恋じゃない。
本当の恋は大人になってからじゃないとわからない。」

と。


私はそれを聞いて、口には何も出さなかったが、心の中では猛反発した。

そんなことはない ── と。


今もそう思う。

…きっとその先生はそうだったのだろうけど。

私は、割と人を好きになりやすいのか、初恋以降、恋心を抱くことは幾度かあった。


ただ残念なことに、だんだんと、心の目だけで相手を見るだけではなくなり
表面的な情報……
たとえば、見た目だとか、スポーツしてる姿がかっこいいとか、表面的な性格が明るくて楽しいとか
そういう中身だけではない部分の情報で人を見るようになってしまった。

小学校高学年頃には表面的な情報を見ることが多くなってしまった。

小さな頃の方が、もっともっと純粋な気持ちで人を好きになっていた。


初恋の男の子のことは、幼稚園の頃は表面的な部分とか、そんなことはよくわからなかったけど

その子は目立つタイプではなく、性格はおとなしめな方で、私から見ると朗らかなイメージで、特にかっこいいというわけではなくて、スポーツができる方でもなく、でも勉強はできる子みたいだった。
決してモテるタイプではなかった。

でも、私はそんな表面的な情報はどうでもよくて
ただ、とっても優しい心を持った純粋なその子のことが好きだった。
心の目で見たその子の中身は本当に素敵で、私には特別に格好良く見えた。

今思い出しても、初恋のそれは確かに「本当の恋」だったし、

あれほど表面的な何かに囚われることがなく、純粋に人を好きになったその恋は

私の人生の中でも、純粋な純粋な「本物の恋」だったといえる。


ずっと、あの頃の気持ちで生きられたらどんなにか良かっただろう。


ただ、純粋すぎても生きにくいし、きっとそのままじゃ生きられないけど。

世の中の綺麗なものも汚いものも見て、酸っぱいも苦いも辛いも甘いも経験し
そして世の中を生きやすく生きていくためには、ある意味純粋でない方が良いかもしれないと思う。


でも、心の真の部分は純粋でいられたらと…
その気持ちを大切に生きられたら…と思う。


そんな純粋な気持ちは忘れてるわけじゃなくて、内側にはちゃんとあって…

クリーニングという心や記憶を掃除して、綺麗にすることによって
インナーチャイルドはその純粋さを思い出させてくれる。



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