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心臓の手術~祈る日々

(入院中の娘、生後1か月ごろの思い出)

もういよいよこのまま延命して穏やかに2か月ほど最後の時間をすごすか、
リスクは高いが心臓の弁形成の手術をするかの選択をすることになった。
わたしはやるしかないという意見で、とにかく娘に意識をあわせると
Yesしかない、やるしかないという答えだったからなんだけど、 
旦那さんはあまりに先生からあれこれ絶望的で
八方ふさがりなことを聞かされるので最後まで悩んでいた。

今まで腹をくくりすぎて、その場に対応するのが精いっぱいで、泣いている
余裕もなかったのだけど、ふとした拍子に、母の前ではじめて泣けた。
母も泣いた。一緒にいっぱい泣いた。
母は、泣いてくれてありがとう、嬉しい、
ずっと泣きたかったけど泣けなかったんだよねというようなことを
言ってくれたと思う。

生まれる前から、先天性の心臓疾患だとわかってから、
もうしっかりしないとと
ギアが入ったままだったんだけど、ようやく一度ゆるんだかな。

わたしは、今、自分がやることは、旦那さんをはじめ
みんなをひっぱっていくことしかないってはっきりしていて。

というかそれしかできなくて。
7月23日は、娘が生まれて1ヵ月の12分の1バースデー。記念に
なるものを、と、画用紙に水彩絵の具で大きくハートを描いて、娘の顔を描いて。
旦那さんはハッピーバースデーの文字を切ってくれた。
これで、一緒に写真を撮ることにした。見守るしかできない
何もできないので、とにかく娘に何かできるのが、協力して何かできるのがうれしかった。


そして、娘が元気になったらこんなことしたい、あんなことしたい、
一緒にお散歩いきたい、3人で川の字になって眠りたい、みんなで星をみたい、って、
旦那さんと思い浮かぶ限り紙に書いた。
書くことは連れて行ってくれる、と信じて。いいイメージをもって、と人から言われたりもしたのだけれど、そんなときにふわふわ浮いたような言葉は、へぇ、ぐらいにしか
感じられなかったけど、最後の最後はこれしかできないのだよね。


わたしも旦那さんも、母も妹も、近くの神社にお祈りにいったり、
子供の守り神の三宅八幡に行ってみたり、ひたすら
信じて祈るように日々をすごした。
そうしないとやってられなかった。生きた心地がしなかった。

===

一回目の心臓の弁形成手術の前日、今まで
ほとんど目をあけることのなかった娘が、
はじめてぱっちり、開けてこちらをじーっと見てくれた。

なんて可愛い!

本当にかわいい!!

黒目が大きくて本当にかわいい!!!

すごく励みになって、何度も何度もそのお目めを
開けている写真を見返した。

何度も何度も。

手術の前夜は満月。個人的なことだし、重いことだし、どうしようかなぁと
思っていたんだけど、FBに、「命がつながれますように」と書いた。
娘が病気であることは、産まれる前からみんなに言っていた。
たぶん、この子は病気というこの体験がやりたくて、そうした方が喜ぶと思ったからだ。
気にかけてくれていた友達に、とにかくたくさん連絡して、明日
手術だからって伝えた。
祈るねと言ってくれる言葉、知り合いに声をかけてヒーリングするよ、とか、
とにかく本当にびっくりするぐらいたくさんの人が
無事成功しますように、お祈りしていますと気持ちを寄せてくれた。

====

7月21日、手術のはじまったのは夕方5時か6時だったと思う。
2時ごろからの予定だったのが遅れて、わたしたちは娘の隣に
ずっと付き添って待ちくたびれていた。

緊張と不安と、もうこれで最後かもしれないときに
一体何を声をかければいいかなって考えたのを覚えてる。
泣きそうになりながら和音を手術室に見送ったあと、神経を
使いすぎたのか(笑)おなかが痛くなった。

妹も、病院までかけつけてくれて、一緒に晩御飯を食べた。
彼女の顔をみるとすごくほっとして、今までのことをだぁ~っと喋った。
わたしたちは病院内の待機室へ移動して、うとうとしたり、喋ったり、
お守りを握って祈ったり。妹が持ってきてくれた藤城清二さんの画集で、
木の根っこに赤ちゃんのような小人が夕日をバックに飛んでいる絵を
何度も何度も眺めていた。

そろそろ終了予定時刻0時だ。長引いている。大丈夫かなぁ。何かあったのか。
そわそわしながら、結局呼ばれたのは1時半ごろ。
深夜の病院の廊下をひたひた急いで面会にいく。
無事おわりました、弁の逆流もくいとめることができた、と執刀医が説明してくれた。

とにかく力が抜けるまもなく娘の顔を見に行く。
腫れた顔、でも、本当に頑張った顔、なでてあげてくださいと言われて、
おそるおそるなでる。旦那さんは泣いていた。集中治療室には、携わってくれた
先生やスタッフ20名くらいがずらりと待っていてくださって頭を下げてくださり、
こんな真夜中まで、もうなんだか、とにかくただただ感謝しかなかった。

とにかく感謝しかなかった。

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