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『アルケミスト』


『アルケミスト』という本はご存知ですか?

ブラジル人作家パウロ・コエーリョによる大ベストセラー本なので、読んだことある方も多いと思います。

『アルケミスト〜夢を旅した少年〜』は、どこにでもいるふつうの少年サンチャゴが、夢で天使に教えられた
「ピラミッドの下に宝物があるよ」
という言葉を信じて、宝物を探しにスペインからエジプトのピラミッドまでを旅する物語です。

この宝探しの物語は大ベストセラーで、世界中の人々のこころを鷲掴みにしています。

時代はかなり昔。
サンチャゴ少年は、羊飼いで、凡庸なふつうの人。

お金持ちではないし、生まれ持った特別な力もない。

他の人と同じように暮らし、同じような事を思い、そして人生の冒険をしてみたかった。

親が決めたレールに乗るのではなく、自分の行きたい道を行こうとする少年だった。

そんな彼が、天使が出てくる同じ夢を2回目にみたときに、その言葉に従って旅に出てみる事を決心する。
「ピラミッドの下に 宝物がある」

しかし旅に出ると言っても、自分には近くに恋い焦がれる少女がいるし旅に出るお金もない、そもそもエジプトがどこにあってどのくらい離れているのかも知らない。

旅に出る理由としては、天使が言った言葉だけ。しかも同じ夢を二回見たとはいえ、たかが夢の中で……。

自分の仕事の要である羊を売れば旅費は手に入るだろう、でも、そんなあやふやな妄想とも言えるものに、自分の命でもある大切な羊を売るなんて

……馬鹿げている。


宝物がある保証なんてゼロ、
名前だけ知っているエジプトにたどり着けるかもわからない、
ただの羊飼いの少年は、それでも、偶然出会った自らを王という不思議な男メルキゼデグの言葉に背中を押され、自分の夢に賭けてみることにした。


「誰でも若い時は自分の運命を知っているものだ。しかし時がたつうちに、不思議な力が、自分の運命を実現することは不可能だと、彼らに思い込ませ始めるのだ」

「結局、人は自分の運命より、他人が羊飼いやパン屋をどう思うかという方が、もっと大切になってしまうのだ」

「人は、自分の夢に見ている事をいつでも実行できる事に、あの男は気がついていないのだよ」

「おまえが誰であろうと、何をしていようと、おまえが何かを本当にやりたいと思う時は、その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ」

「おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ」

旅に出る 夢を追いかける と決心して行動してから起こる数々の災難・または災難に思われた幸運や、少年の人生にとってかけがえのない大切な事を教えてくれる人々との出会い。

保証のない、暗闇に包まれた自分の夢に一歩踏み出すと、凡庸だった羊飼いの世界は様変わりし、出来事や出会いを通して明らかに自分の内部が成長してゆく。

…というストーリーになっています。

アルケミストとは「錬金術士」を意味しますが、錬金術士が金属を黄金にかえてしまうのは、もはや金に意義があるのではなく。
物質を物理上あり得ない他の物質に変えてしまうほどの人間、そしてその奥にある知られざる神の力。その可能性。本当の人間とはどんな力を秘めているのか、どんな力をその人生で発露できるのか。


物語の冒頭と終盤では、同じ場所に少年が立っているにもかかわらずまったくの別人、全く別の人生になっています。

この物語では、あくまで「ふつうの少年」が主人公であり、最終的には神を思わせるほどの力を発現しますが、それは生まれ持った特別な力がなくても、他の人とは違うドラマチックな人生を歩んでいなくても、誰もがもつ可能性そのものが主人公にされていると思うのです。

わたしがあなたが、主人公。


パウロ・コエーリョのこの本が歴史に残るほどの偉業を得られたのも、読んだ人の国籍にかかわらず、宗教にかかわらず、神を信じているかいないかにかかわらず、とてもポジティブな勇気を得られるから…
人生の応援バイブルのように感じるから、な気がします。

この物語は構成されて組み立てられたもの、物語。(著者パウロ・コエーリョの人生で実際に起こった?ことだとは思います)

でも、本当に起こり得る物語で。
誰がサンチャゴ少年の人生を送っていたとしてもおかしくはない。特別に選ばれた人じゃなくても、普通の人が夢に足を一歩踏み入れることによって、進む勇気のある人だけが行ける道がある。世間の評価や他人の目を気にせず、友人や家族の「そんなの夢は夢だよ」という失笑やアドバイスはさらっとスルーして、そこでストップしてしまわずに自分の信念を信じ貫いて、夢という暗闇の中に飛び込む・・・


「おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ」


そういう世界がある。

やってみるとわかる。やってみないと永遠にわからない。スピリチュアルな不思議な話ではなく現実として、さまざまな現象があらわれてくる。新しい友達として、本として、生まれ変わったかのような以前とは違う自分として。夢に向かっての旅こそが人生なんだ。それこそが人生の目的。

旅にでなくとも普通の生活の中で。不思議な修行を積まなくても日々の中で。

なにより普通なひとがもつ可能性は天井知らずにとてつもなく、ひとりひとりがそのような存在。奇抜なことはしなくてよい、ただ夢を追いかけることによって。やりたいことをただ追求することによって。



〜エジプトを目指す砂漠で,少年の心が語ったこと

「私たち人の心は,こうした宝物については,滅多に語りません。人はもはや,宝物を探しに行きたがらないからです。私たちは子供たちにだけ,その宝物のことを話します。そのあと私たちは,人生をそれ自身の方向へ,それ自身への宿命へと,すすんでゆかせます。

しかし不幸なことに,ごくわずかの人しか,彼らのために用意された道−彼らの運命と幸せへの道をすすもうとはしません。ほとんどの人は,世界を恐ろしい場所だと思っています。そしてそう思うことにより,世界は本当に恐ろしい場所に変わってしまうのです。ですから,私たち人の心は,ますます小声で囁くようになります。私たちは決して沈黙することはありませんが,私たちの言葉が聞こえないように望みはじめるのです。」

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