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【言霊ピンポン】第8週

No.49:sideH 「諸君、焚き火の時間だ」(村上春樹『海辺のカフカ』)

これは、この小説の登場人物、星野青年の台詞。彼は物語上のトリックスターと言っていいと思う。彼は物語上で役割を終える時、このセリフを吐く。そう、狂言回し役は、多くの場合、物語の「後始末」の役割を果たす。それがきっと、場をかきまわした者の宿命なのだろう。

No.50:sideM 「まだ終わっていない物語を人生と呼んでいるだけなのだ」(森見登美彦『熱帯』)

読むほどに物語の迷宮の中をさまようことになるこの小説。 とある登場人物はこうも言う。「物語ることによって自らを救え」三度の飯より本が好きな人、時を忘れて物語に耽溺したい人は必読の一冊。眠れぬ熱帯夜にぜひ。

No.51:sideH「スポンテイニアス」

自然に湧き上がる、知らないうちに生じる……という意味のこの言葉。『村上春樹、河合隼雄に会いに行く』という対談本の中で、村上氏はこう(要約)言っている。~スポンテイニアスに小説を生み出すことが、自分を癒す~つまり、最初に物語の構成を固めてしまう書き方では、自己治癒は起きない。湧き上がるものを、次から次へと捉えていく、そんな瞬発力のある書き方でしか、自分を癒せない……と村上春樹は言う。小説、かくあるべし。

No.52:sideM 「こもる」

我が家の食いしん坊猫は、ごくたまに変なものを食べて具合が悪くなるとひたすらベッドの下に籠る。そして自分で自分を治してしまう。人も猫も、時に他者の目を気にせず引籠もることは心身ともに必要だと思う。

No.53:sideH「延命十句観音経」

比叡山で行われる『千日回峰行』。この修行の中で最も過酷と言われるのが『堂入り』。お堂にこもり、9日間、飲まず、食べず、眠らずにお経を唱える。この堂入りの最中に行者が倒れると、耳元で囁かれるのがこの延命十句観音経だとか。このお経で意識が戻るとの噂は本当だろうか?お経といっても、祈りに近いものから、こんな力を秘めたものまであるとは、なかなか奥深い。

No.54:sideM 「幾千の童話の業の深い輩と僕らは似ている」(岡村靖幸『祈りの季節』)

この曲の歌詞はとにかくキラーワード満載なんだけど(子沢山の家族とか高齢化社会とか戦後の頃とか、そんなんJ-POPに使う?って言葉ばっか)改めて見直すとこのフレーズも素晴らしいなと。岡村靖幸という人のセンスと語彙力、計り知れなさすぎる…。

 


取材、執筆のためにつかわせていただきます。