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東京サルベージ【第32回◾️懺悔】

シスター。
本日は懺悔にやってきました。
ええ。

彼女がダンスの名手だということは知っていましたし、私の「推し」である宝塚月組元トップスター霧矢大夢さま、歌って踊って芝居もできての三拍子そろった霧矢大夢さまの三代前にあたる方ですから、もちろんお名前も存じておりました。でも、あれですよね。引退後は舞台やドラマよりはバラエティ番組で名を馳せられていますし、在団中の「代表」であられた「ばあや」との間柄に関する浮世離れしたご発言にめまいを覚えていたのも事実です。

はい、「ばあや」こと私設ファンクラブの代表さんに料理・洗濯はおろか、電車の切符の購入やら、公共料金の支払いから身の回りのいっさいをやってもらっていたというあの有名な逸話です。もちろん、TVのダンスの企画などでは宝塚で培われた技量をいかんなく発揮されていて、すごいなとは思っていたのですが、どちらかといえば、いいえはっきりってイロモノだと思っておりました。

現役時代のお姿も「北斗の拳」に南斗聖拳の使い手としてでてきそうな不思議な髪型と、カラー映画になったばかりのハリウッド映画にでてくるおじさんスターのようなダダ洩れしてくるような色気を醸し出しており、何だか「上級者向け」という感じで、私のようなビギナーには縁遠いヒトという印象でございました。今でも、彼女のような髪型、海苔がひっついたようなリーゼント、あえて小顔に見えないようなフォルムのジェンヌさんはみたことありません。

それがどうでしょう。
何気なく宝塚スカイステージで録画したディナーショーを拝見し、私はたちどころに彼女のとりこになってしまいました。
正直、なんで録画したのかもよく覚えてない感じで、きっと相方の映美くらら目当てだったんじゃないかと思います。だとしても、録画した俺グッジョブ、と拳を小さく握ってしまいました。
年輪を重ねてトップスターになった熟成した余裕、色気、抜き加減、ダンスのシルエット、軽妙な客席いじりとファンサービス、肩肘の張らないユーモア。そして、唯一無二の存在感・・・。すっかり「りかさん」に目を奪われてしまいました。

「りかさん」、それが彼女の愛称です。
ソファに寝っ転って、12円に値上がりしたうまい棒を頬張りながら見るなんてどうかしてました。ちゃんと襟のあるシャツを着て正座をして観るべきだと、開始5分で早々と反省したのです。彼女が「Magnificent Sanctuary Band」のカバーを歌いだしたときから、ああこの録画データは保存版になるだろうと確信いたしました。

それにしても、当時の「りかさん」。現在の自分からみれば圧倒的に年下のはずなのに、なんだこの風格。なんなんだ?このオーラ。眼を疑うばかりです。
私がつらいとき、哀しいときに心のよりどころにする「まさお」こと龍真咲(月組元トップスター)の奔放なトークの原型があなたであることがよくわかりました。きっと下級生のころあなたの背中を、一挙手一投足を食い入るように見つめてきたのでしょう。私が下級生でもそうだと思います。

はい。そのトップスターの名前、紫吹淳さんって言います。
まさか私が紫吹淳に堕ちるなんて、自分が信じられません。
今日も気づくと、「りかさん」が出演しているディナーショーを観てしまっている自分がいるのです。

でも、あの厳しい宝塚音楽学校で過ごされた方ですし、聡明な方でしょうから、ばあやとの逸話も、浮世離れしたご発言の数々も、きっとメディア向けにデフォルメされてらっしゃるんじゃないかと思っています。
だってシスター、走っている阪急電車に挨拶する宝塚音楽学校OGなのに、切符を買ったことないって信じられます??

取材、執筆のためにつかわせていただきます。