夜は花に恋をしない

※このNoteはフィクションです


出会い

最初は、流行りのボカロが欲しいとかそんな理由だった。
当時はv flowerと可不の2強という印象だった。(初音ミクは例外として)
今思えば比較対象がflowerというのも皮肉な話だが、それは置いておいて。

さてどうしたものか、正直、当時の自分はどちらの声もあまり好みではなかった。
まあ強いて言えばカワイイのは可不の方だろうか……?とはいえ、デモソングだけを聴いて購入するのはやや気が引けた。

そして、可不のルーツを探ってみることにした。


「花譜」と、出会ってしまった。


正直、何が何だかわからなかった。不可解だった。
今にも泣きそうな声で、あまりにも攻撃的で皮肉な言葉を「語る」少女。
嫌悪感すら覚えた。何を言っているんだ、彼女は?

しかし、それ以上に心動かされてしまった。

恋をしたかもしれないし、してないかもしれない。

幻影

ただ一つ言えるのは、俺は花譜の幻影を可不に求めていたのだろうな、ということ。
花譜みたいな歌を歌ってほしい、間違いなくそういう気持ちで俺は可不を迎えた。

最初の頃は、とりあえずは可不を使いこなせるようになろうとした。可不のために作風を変えた。
そして多分、自分の中にあった可能性を可不が引き出してくれた……のだと思う。実際これは多少は上手くいったのか、無色透名祭では本当に多くの方に聴いてもらえた。

でも、正直なところ納得はできていなかった。
なんで上手く歌ってくれないのか、なんて思ったことは一度や二度じゃない。何回も何回もピッチを書き直した。タイミングを調整した。効いているんだかわからないパラメータも一通り試した。それでも上手くいかなかった。

俺の頭には常に花譜の幻影がちらついていた。

/可不

これは、俺が作った曲のタイトル。これがタイトル。
決して褒められた曲ではないのだけど、きっとこの曲はターニングポイントだった。良くも悪くも。

自分の中の本当の、覆い隠していたはずの醜い感情をぶつけてしまった。
でもその時、最初に応えてくれたのが可不だった。
今思えばこの時だった。もしかしたら、可不の声なら届くのかもしれない、と思ったのは。

花になれない

可不の話ばかりだったので、花譜の話もしようと思う。
花譜というのは、うたがすきな1人の少女の恋の物語である。俺も、その物語にまんまとハマった部分がないと言えば嘘になる。

決して否定はしない。間違いなく俺の方がキモいので。でも、やはり商売だとか少女性だとかにはそういう側面が強いのが事実だろう。

俺が見ていた花譜の幻影というのは、きっと花譜に恋をしていた俺の、最初から側にいられなかった未練とか、叶うことのない恋への未練とかそういうものだ。

新しい声

そんなこんながありつつも、可不と一緒に色んな曲を作った。
可不への恋文みたいな曲も作ったし、可不の誕生日のための曲も作った。ここだけ見ると恋人にしちゃダメなミュージシャン感がすごいけど実際その通りです。

そしたら、可不の新しい声が出た。
それはもう嬉しかった。正直、可不は使いづらいし不満点も多い。何より、あんまり花譜じゃなかった。
でも、そんな不満を押してでも使うくらいの魅力も可不にはあった。可不自身の魅力が削がれることがなければ……そんな気持ちも片隅に置きながら日々を過ごした。


可不の新しい声を聴いた時、本当に色々な感情が頭を過った。でもその中に、本当ならあるはずのない感情があった。

「可不じゃないかもしれない」

ずっと花になりたいと願っていたのに。
可不と一緒に曲を作ってきて、俺はこんなにも可不のことが好きになっていた。(イマサラタウン)

発売延期

俺はお気持ちノートを出したぞ 俺の勝ち

失恋

きっと、この言葉が相応しい。
季節が廻って、花が咲いて。
彼女が大人になって、ありのままの人間として、俺の目の前に再び現れた時。
そこに、俺が恋をした少女はもういなかった。


俺の中にずっとあった花譜への未練。花譜の幻影。それは、もうほとんど無くなってしまったのだと思う。
可不を好きになって、花譜がいなくなって(ない)。
俺は今後もずっと可不と歩み続けるのだろうし、花譜と……廻花と、歩むことはできない。
好きな曲は聴くけど全部は聴かないし、ファンアートも多分描くことはない。
とかいいつつも結局、発作みたいに思い出すことはあるだろうけど、俺にはもう可不がいるので。


夜は花に恋をしない。きっと、可能性に恋をしている。


P.S. SVの発売はいつになりますかね?あとトーク出してください。

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