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読了のおっさん8 ベルサイユのばら(池田理代子/マーガレットコミックス)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。
概要的なネタバレは含みます。

ベルサイユのばら
(池田理代子/マーガレットコミックス)
1972年〜1973年 全10巻+エピソード編4巻(11巻〜12巻)

① タイプやテーマなど
 少女漫画、歴史もの、ラブロマンス、軍事、フランス革命、絶対王政、共和制、貴族社会、宮廷、政治思想、男装

② 簡単な内容
 フランス絶対王政時代の末期から、フランス革命までを描いた歴史物語。女でありながら男として育てられた主人公で軍人のオスカル。その主君であるアントワネット王妃。そしてアントワネット妃の愛人となるスウェーデン貴族のフェルゼンらの濃密な恋愛模様が繰り広げられる。

③ 読みどころ
 全編に渡って密度の濃い心情描写が続く。宮廷内の揉め事の一つ「誰が陛下のご寵愛を賜るか」という戦いに始まり、貴族の専横に喘ぎ苦しむ平民、道ならぬ恋、身分を超えた愛、家族を引き裂かれる苦しみ、お家制度、恨み巡って仇は肉親など。。。本編は9巻で終了するが、非常に心情の放出が多く、その量は20巻ぐらいはあるかもしれない。またそのためか、物語の一部ではなく、全編がとても印象に残る。読み終えて思う名作たる所以は、まずこのインパクトではなかろうか。

 歴史ものでもあり、アントワネット輿入れに色めきだつフランス国民、当時問題になった首飾り事件、フランス革命前の三部会の様子などは、言い得て妙だが非常に臨場感がある。誇張脚色の類や一部時代を先取りした設定、主人公を含めて架空の人物が多数登場するといった点はあるものの、全く違和感がなく物語が展開しており、これはすげえ、面白いと独り言が出てしまうような演出ばかりである。
 おっさんは、歴史上悪名高いアントワネットについて、本作内での行動や心情の変化は決して憎めないなとも思えた。そんな正解の無い展開と結論の連続でもあり、かくも人の想いや苦しみが伝わってきて共感もできる。

④  雑多な感想
 おっさんは本作はアニメから入った。OPもEDも絵も濃く「愛が苦しみ〜なら〜」といった歌詞に、祖母が視聴する横で、少年時代はじわじわと拒絶感を覚えて部屋を去ったものだ。だが、流石に色々と経験して良い大人になると、ましておっさんになると、この良さが分かる様になる。つまり大人向けではないだろうか。
 誰かを好きになるということが尊いというのは、大人の誰もが知っていると思うが、本作の登場キャラのその想いの強さたるや一入(ひとしお)である。少女の憧れとか少年の淡い想いなどではなく、言うなれば命懸けのマジ過ぎて、周囲もドン引きレベルである。
 そうした終始熱い展開が、激動の時代のフランスの、様々な場所、様々な身分において繰り広げられる。歴史ものとしても充分楽しめるのだが、かくも人の心の描き方が本作の凄い所だ。

⑤ その他
 本作は描かれて既に半世紀が経っている。その間にも舞台や演劇で何度もリピートされている。感情がすごいのでお芝居には最適であると思う。
 また、2010年台にはコミックスでも新作がリリースされている。絵は随分ときれいになり、表現は穏やかになったものの、やはり熱いストーリーが綴られている。非常に息の長い人気が続いている証拠だろう。
 それにしてもオスカルという女性は、今の女性にとってはどのような印象になるのだろうか。また、本作で描かれたアントワネットは、おっさんでもなんとなく理解ができるキャラクターであったが、同じく今の女性(特に比較的若い世代)はどう見るのだろうか。
 少々話が逸れるが「女性の生涯」というものが、本作の裏に隠れた問いかけやメッセージだった様にも思える。「女として生きる」といった言葉が割りと作中に出てきており、その真意はなんとなく当時としての、あるは作者なりの価値観が反映されている様に思うが、はて現代の女性は生き方をどう捉えてどう表現していたっけ?などと思ってしまった。
 おっさんもやはり女性の内面までは分かりかねる。察したり想像したりしても埒が明かないので、いずれ本作の女性のレビュアーの感想を見てみたい。


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