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窓際のおっさん28 会社で横行する「匹夫の勇」(後編)結局は部下を貶めるだけの武勇 匹夫の勇になる訳

 前回は匹夫の勇の意味と、おっさんが経験したブラックな職場における、個人の武勇ばかりの評価、すなわち作業精度と作業速度が早いだけの個人を評価する匹夫の勇を紹介してきた。今回はその続きと、現代風の武力(権力や年数)によって部下を恐れさせる匹夫の勇、そしてなぜ匹夫の勇に陥るかを述べたい。

<匹夫の勇を尊ぶと、職場がブラックになる 続き>

別の例を挙げる。商社や保険会社の営業を考えていただきたい。
平の営業社員が、頑張って月10件の契約やってるんだ、主任級のおまえは20件が当然だ、などと出世した途端に言われたらどう思うか?

主任級であれば、新人の平の営業を教育し、助けつつ件数は同じぐらいなんとかこなしてくれと言われるならまだ話は分かる。

なのに、主任は平の倍の成果を出せという、計算も役割分担の考えもない、頭の悪い方針を採用する職場は令和になってもまだまだ存在する。

 異様な残業削減を部下に迫り、サービス残業を放置する「匹夫の勇」。
 それに合わせてサービス残業を許容して、個人のマンパワーだけで仕事を仕上げる「匹夫の勇」。
 役割分担や現実的な数値を出さず、化け物じみた処理件数だけをただ競い合うこともまた「匹夫の勇」。
 どれもブラック企業の特徴ではないか。

<叱責が効くと思っている匹夫の勇、結局は部下を貶めているだけ>

 また、処理ミスや処理能力の不足に対して、あくまで「個人への叱責」で済ませる上役がなんと多いことか。

 怒って能力が上がるなら苦労はない。

 もし非現実的にも、極端に能力の高い人が欲しいなら、そういう人を探して引っ張ってくる努力をしたらいい(いないし、いても来ないか、すぐ辞めるけど)。

 良いことも意味も全くないのに、ただ怒るだけのバカばかりである。この国は本当に昭和からなにも変わっていないように思う。

<無駄仕事で部下をしごこうとする>

 折角出世したのに、職位の威厳を笠に着て、いつまで経っても小さな事務処理の些細なミスの指摘や、どうでもいい書類の完成度の向上ばかりにご執心な上役ばかりだ。
 
 どうでもいい事務処理は廃止してもいい。都合により廃止できないなら、最低限の基準を示して下に判断ごと任せてしまえばいい。

 ところが部下を威圧するために、やれコンプラだのリスクだのと煽ってはその都度事務処理を増やし、ギリギリのリソースで捌く計画を部下に強要する。

 そんな仕事ぶりに自分で酔って「自分は良く部下を用いて会社には意見提案もし活躍した」と、言っている。

 だが実態としては迷惑な介入と部下の粗さがしを繰り返し、姑息にも部下を叱責・批判することで成果を誇ろうとしているに過ぎない。

 武力を持って部下を委縮させるだけの、正しく匹夫の勇である。

 もっと逆に、無駄を省く提案を組織や上に投げたり、部下の粗探しではなく仕事を認めて任せるなど、本当の勇気をもって仕事をしてもらいたいものである。

<なぜ匹夫の勇に陥るのか>


匹夫の勇の上司がこうした判断になる理由を考察したいと思う。

① 厳しくすることが正しいと考えている。
 古い時代、上司は部下をきつく叱責したり追い詰めたりし、部下はそれを乗り越えて成長できた。。。と勘違いしている人が多い。実際、今も昔も、怒っても委縮するか遺恨が残るのが普通の人間である。
 確かに昔は怒られても残業代は青天井であったし、飲み会は全部上司のおごりで、楽しい店にも連れてってくれて成り立っていた時代でもあった。それでチャラにできたこともあったかもしれない(本当はビジネスだけなんだけどね)。
 だが今はそんな話はまず無い。残業代は出ず、呑みは良くてワリカンでクソみたいな武勇伝を一方的に聞かされるだけ。そんな脆い裏打ちしかないのにやり方を変えられず、厳しくすりゃいいと思っている愚かな上司が未だに多い。

② 視野の狭さ

 「とにかく目の前の仕事をこなせ」等と決まり文句を言うような上司はいないだろうか。そうするしかない場合も時にはあるが、右肩上がりの時代、そういわれ続けて、仕事をこなしてウン十年という人は、茹でガエルになっている。
 言われたことを言われたとおりに処理することに慣れきってしまうと、ややもすると、処理方法を工夫することはズルをすることだと思う人になる。
 また、この仕事は必要が無いのでやめましょうなどと言うと、今までの自分が否定されたと思って、必死で拒絶し、腹を立てるようにもなる。

③ 工夫が練れない
 視野の狭さにも直結してくるが、創意工夫や新技術の導入への勇気がない。目立つことをすれば叩かれがちなこの国の風土もあるが、それ以上に、昔からやってきた仕事を捨ててはいけないという先入観や、新しいことをやってトラブルが発生するリスクにばかり怯えて、仕事や人生を工夫することをためらっている人が多いのではないだろうか。

④ それでも高い評価だけは受けたい
 そして、婦人の仁と同じ結論だが、①〜③であっても、人には功を誇り、自分の重要度をアピールしたいという気持ちはある。しかし処理方法の工夫も、業務のオミットもできないとなると、残っている手段は仕事の精度と速度を競う一点になってくる。
 
また、上の立場に立てばその価値観を部下に押し付けて、精度と速度を上げることばかりに躍起になる。
 
効率よくしろ、処理能力を上げろ、残業を減らせとイライラし、実態が伴わなければ武力(権力や年数)で脅して、評価を下げたりサービス残業の強要をして功を誇る。そうした匹夫の勇になっていくのではないだろうか。 



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