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レコード棚を順番に聴いていく計画 Vol.88

【過去の投稿です】


[97枚目]●テキサス・イーストサイド・キングス『テキサス・イーストサイド・キングス』<ダイアルトーン/Pヴァイン>(02)

※本文を書くに当たり、小川豊光さんのライナーを大いに参考にしています。

オリジナルのUS盤は、01年発表。購入盤は<Pヴァイン>経由で、ボーナストラックを7曲含んでいる。<ダイアルトーン>は、ミュージシャン兼プロデューサーのエディー・スタウトが、テキサス州オースティンで99年に設立している。エディーはオースティン・ブルース・シーンの顔役的な所もあったようだ。アンソン・ファンダーバーグのバンドのベーシストでもあった。また、<アントンズ>(同じオースティン)や<マラコ>にも関わっているとの事。余談だが<ダイアルトーン>と言えば、これも<Pヴァイン>経由で出た、パスター・ミッティー・コリアのゴスペル・アルバムが思い出される。ゴスペル界に帰依していたのは知っていたが、もう歌声は聴けないのかと思っていた所の、嬉しいリリースだった。

閑話休題。テキサス・イーストサイド・キングスについて。オースティンを拠点とするバンドで、有名なメンバーはいないものの、地元では名が知れており、ツアーで訪れたミュージシャンのバックを務める事も多い実力派集団だ。メンバーをザッと紹介する。ヴォーカルとギターのジョージ・アンダーウッドは、61年のシングルでビルボード・チャート入りしている。ピッグ・ミート・マーカス、フレディ・キング、Z.Z.ヒルなどが、ツアー時には彼にコンタクトを取っていたらしい。トランペットのエフレイム・オウエンズは、72年ダラス生まれ。15年からテデスキ・トラックス・バンドに参加している。ジミー・ヴォーンやシェリル・クロウとも関わりがあるそうだ。クラレンス・ピアースは、全ての曲でギターを担当、ヴォーカルも2曲担当している。43年テキサス州ニュー・ブラウンフェルズ生まれ。12年に亡くなっている。ドナルド・“ダック”・ジェニングスは、トランペットと一部ヴォーカル。ウィリー・サンプソンはドラムで一部ヴォーカル。15歳の頃からブルースをプレイしている。ジェイムズ・カイケンダールは、ベースと一部でヴォーカルを担当。ギターのストラップを2本結び合わせて、膝の位置にベースを構えていたらしい。ジャンプ・ブルースを主に演奏していたとの事だ。以上6名が主力メンバーとしてライナーで紹介されていたが、他に、4曲でギターを弾いているモトヤス・ウツノミヤさんという日本人も参加されている。調べた所、Facebookをやっておられ、依然としてオースティン在住のようである。

①はリッキー・アレンの曲。この曲に限った話では無いが、バンドの一体感は見事だ。ヴォーカルに重厚感はやや足りないが、その分ソリッドな曲には似合っている感じもする。ここではパーカッシヴなピアノも印象的だ。②は少しルーズな曲。リズムの刻みや過不足ないギターなど、ブルース演奏の手本である。③はカントリー調で微笑ましい。④はスロー・ブルース。ギターが聴かせる。リトル・ウィリー・ジョンの⑤は、原曲の切迫感がよく出ている。⑥は乗りの良いシャッフル。乗りを保ちながら、続けて、ファンキーな⑦。ホーン・セクションも良い仕事。マーヴィン・シーズの⑧。オリジナルよりテンポアップして、独特のファンキー感が出ている。ジュニア・パーカーの⑨は、ストレートなブルース。彼ほどのディープさは無いが、演奏の安定感はここでも十分発揮されている。ギターの粘つきやピアノの連打など特に印象深い。⑩もストレートなスローブルース。

ボビー・ブランドの⑪は、ライブ感に溢れる。⑫もスローで攻める。⑬「ジャスト・ア・リトル・ビット」を変形させたような感じ。ボーナストラックの1曲目⑭もスローブルース。⑮でさらにスロー、というかほとんどソウル・バラード。⑯は②と本来同じ曲だが、ジョージ・アンダーウッドが歌詞を忘れてしまったので別の曲扱いになったそうだ。⑰ムーディーなスローのインスト。タイロン・デイヴィスの有名曲⑱は、演奏が彼らにしては爽やかで、モダンな雰囲気を醸している。B.B.キングの⑲はソツの無いブルース。リトル・ウィリー・ジョンの⑳は、ボーナストラックではあるがエンディングにふさわしい。

どちらかと言えば、ボーナストラックよりオリジナルアルバムの13曲の方が、演奏がタイトで、アップ、スロー共に引き込まれる。ブルース好きの方にはオススメの1枚ではあるが、思い切ってボーナス無しの方が良いかも知れない。ただ、手に入りにくいでしょうけど。

① Cut You Loose

③ Fraulein

④ Just Because My Board Is White

⑧ Hoochie Mamma

⑭ Can’t Cut You Loose

⑳ Let Them Talk

♪ オリジナル盤全曲(本盤①~⑬)

♪ 現地でのライブ動画(ウツノミヤさんらしき人も映っています)


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