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お花屋さんでの展示会

私は子供の頃からお花にまったく興味がありませんでした。私の母は花を買ったり家に飾ったりする事が一切なくて、母に言わせれば ”枯れてなくなるもの” にお金を使う意味がわから無いし、家でお茶を飲めば同じなのだから一杯数百円も払う意味が無いという考えです。それはどケチとかではなく、文化大革命という混乱の時代の中国に生きた人だからです。

あの当時中国では、地主は突然財産を没収され知識人は反逆の可能性があると殺されてました。母の実家も例外ではなくリアルな経験者だったため、とてもシビアで現実的です。息子(私) の将来を考えて、中国から日本に移り住んで教育してくれましたが、最初はとても狭いアパートで親子三人贅沢せず暮らしていました。だから私もその感覚が染み付いています。

ですが ”美” に敏感な妻と出会ってからというもの、お花を贈る機会が増え、さらに興味を持って花を生ける池坊のお稽古も受けていた時期がありました。その中で、やればやるほどに何故か心の奥はまだしっくりこない部分がありました。だって、美しい花をより美しく生かすために、命ある花をハサミでチョキチョキし、ワイヤーを茎に刺し、テープでぐるぐる・・・・そこに見える美を評価することにどうしても違和感が。。。


そんな理系の私なのですが、この秋、天然石とジュエリーの個展をお花屋さんで開くことになったので、もう一度お花について観察し考えてみました。

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歴史を振り返ると、8000年前のメソポタミアから花を贈ることが始まったと言われていますが、今日は実に色々なシチュエーションで身の回りにお花が登場しています。例えば誕生日、出産祝い、還暦、そして病気になってもお花、お墓までお花を。
私たちの一生の中でいろんな意味を持った花たちが登場します。こんなに「応用力」をもっているにはものは他にあるのでしょうか。

ところで、皆さんはお花の色で1番多いのはなんだと思いますか?
お花屋さんの店員に聞くと、白色など色が薄いお花が多く赤系が少ないと。中でもバラだけは改良されていろんな赤色が存在します。
一方で、台湾の植物を研究している大学教授が書いている記事を読むと、実は自然界では赤、紫、黄色系統が一番多いだそうです。
自然と人間が作り出す花ビジネスのギャップはさておき、赤、紫、黄色系が多いのは、生存するための差別化として鮮やか色でハチや蝶をより惹きつけることが出来るからです。


そう考えると数えきれない種類の植物の中で生き残るために、長い年月をかけて常に戦っているんですよね。子孫の残すために競争力を備えるのはどの動物も必須ですが、花の可憐な美しさの背後には生存の力が隠れています。

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因みに中華圏では赤は常に「めでたい、喜ばしい」という意味を持っています。中国の結婚式はあらゆるところが真っ赤になります。
閉鎖的な昔の中国では、もし新婦さんが結婚式で純白のドレスを着たいと両親に言うものならば、とんでもないことでした。
ヨーロッパも以前はそうだったと聞きましたが、葬式に使う白と黒を結婚式に使うのってもう・・・・親、親戚からぶん殴られることです。
そんな勢いの70年代80年代です。

幸い今はもう多くの人が白いドレスを身にまとい、テーブルにも白い花を飾ることがあります。でも車はまだ赤色のお花でデコレーションします。
世界中どこでも同じだと思いますが、その土地の文化・風習に合う花が改良され使われますね。タイにいた時はホテルで働いていたのでその時もお花をよく使いました。

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もともと大自然の中の一部分である花は子孫を残すために鮮やかな色や良い香りで虫を引き寄せますが、その魅力に虫だけじゃなく人間もつられちゃうんですから、やっぱりすごい生命力なんでしょうか。

さきほど自然界では赤系統の花が多いと言いましたが、競争力に関連していうと、実は赤い花よりも白い花がより進化していることが多いそうです。
約400種類ある白い花には、他の色の花に比べてより強い匂いを発する種類が多いのです。なぜなら、鮮やかな赤や、目立つ黄色に劣る白い花は日中では勝てっこないので、戦場を太陽がいない時間帯に移したのです。実に賢いですよね。

例えば、夜来香やバニラのように、しっかり匂いを身にまとうことで差別化しています。日本ではよく飲まれているジャスミンティーの花も白です。
ハクモクレンは日の出と共に花が咲き、咲き切った時にもう繁殖行為が終わり香りを出さなくなる。その理由でバンコクの道端でよく売られているハクモクレンは蕾の状態で切り取られ、束にして売られています。

そうやってたどると「花の記憶」って面白いですよね。咲くのは一瞬だけど遺伝子は何千年モノ。だた、お花として咲いた時の命は一瞬で、短ければ数日で枯れてしまします。


特に朝顔は朝に花を咲き、昼にはもう閉じて枯れてしまいます。悲しいことに次の日に見る朝顔はもう別の花です。
でもいつも妻が言っています。短いからこそ、その一瞬を咲き誇っているから生命力に溢れて美しいんだと。なるほど。


一方で私たちが日々接している天然石は何千年何億年もかけて形成されて成長します。こんなに両極端に存在する二つのものが一緒に合わさった時、何を感じるのだろう?正直わかりません(笑)

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分かりませんが、きっとそこには言葉ではうまく表現できない美が存在するはずです。展示会の当日、お花屋さんに並べられた石を見た時に感じる「美」はどんなものか、想像しただけでもワクワクします。
時間と共に窓から差し込む光も変化して花と石とお店の雰囲気がどう変わるのか、何時間も植物の前に立ったことがないので、いろんな変化がとても楽しみです。


いろいろ長く書きましたが、とにかく
展示会にお越しいただく皆さんにはぜひ五感を使って、花と石から生まれる「なにか」を感じて、楽しんで頂けたら嬉しいです。


私自身も本当に今回の個展を楽しみにしています。体調をしっかり管理して展示会に臨みたいと思いますw 
皆さんも風邪ひかないように、万全な状態で遊びに来てくださいね。


【イベント情報】
第20回ミネラルフェスin横浜ワールドポーターズ 2020/9/25-27
秋の特別個展 MOEMISUGIMURA×SELSHA  2020/10/8-11


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