漕ぎ出せ!

パートナーとの新しい生活が始まった。

彼女との付き合いは長いけど、大学生の4年間、卒業してからの約2年は遠距離恋愛だった。

そんな彼女と満を持して一緒に暮らすことになった。結婚したのはちょうど一年前、彼女の地方配属が決まった時だ。「女性を大事にしている会社だから、結婚してたらワンチャンすぐ戻れる」という彼女の提案に「じゃケッコンすっか!」と答えた。

こんなに悟空のプロポーズがぴったりな状況あるんだなと思った。(ケッコンすっか!はまだしも"じゃあ"の部分が結構邪魔をしてくる)

とはいえ、2、3年はかかるだろうなと思っていたけど、まじでチャンスを掴んで1年と半年くらいで戻ってきたので、女性を大事にしている会社なんだと思う。

異動が決まってから時間がない中での部屋探し・引越し作業は死ぬほど大変だった。

事故物件のお札の数くらい手すりがついているバリアフリー化された部屋とか、法律の目を掻い潜ろうと怪しいことをする片棒を担がされそうになる部屋などに当たってしまい部屋探しは難航したがなんとか素敵な拠点を見つけることができたと思う。

問題ばかりの部屋探しだったけど、彼女とは揉めることもなくて、「おい、あの手すりだらけの部屋ダサすぎんだろ」「それ、舐めんな」などとふざけ合い、逆に結束したりした。

引越し作業もまた大変。彼女は仮の住まい(のつもり)だったので荷物が少なかったんだけど、学生時代から住む僕の下宿には埃と思い出とガラクタが詰まっておりこちらも難航した。

正月休みを全て返上して荷造りしたり、粗大ごみや廃品回収を手配したり、先の予定を決めることや事務的な手続きのことを考えると涙が出てしまう体質な僕は彼女に励まされながらなんとかあの家を離れることができた。

あまりの埃とゴミの多さに、彼女は僕と付き合ってから初めてのドン引きをした。否、ゴン引きをしていた。(東京五輪のスケボーの時のゴン攻め未だに面白いのに誰も覚えていないのはなんで?)

1階だからゴキブリは出まくるし、ゴキブリの子を殺してもらうために召喚した小さな蜘蛛たちの巣だらけで、僕のムダ毛も散乱していて、ほんとに心から埃まみれだったけど大好きな部屋だった。

新しい家は、とにかく日当たりが良くて内見に訪れた時から昼寝がしたくてたまらない部屋だった。

家具や家電を揃えてどんどん住み良くなっていく。今日は彼女がたまたま見つけた丸い藻にぶっ刺さったボケという木の苗木を家に迎え入れた。セット売りされていた可愛らしい器を僕が落として割ってしまったけど、彼女はしょうがないよ!と笑う。

変わりにイケアの小さいお茶碗を献上したら、サイズがビッタビタで喜んでくれていた。(東京五輪のスケボーの時のビッタビタまだ面白いのに〜略)

寒いし苦しい世の中だけど、今僕は強く漕ぎ出そうとしている。

今年は横断の年になる。外国の詩人のポエムが書いてあるおみくじにもあった通り、僕はもっと幅広くなっていく。新しく美しい拠点を維持しながら社会を渡り歩けるような大人になるべくまた変わっていく。

でも、今となりでギリギリ歯ぎしりしている彼女の1番の味方でいることだけは、ずっと変わらないと思った。

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