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漫画万歳!(26) ~魔法使いの娘~

マザーブレイン社の月報に投稿した記事を紹介していきます。2019年4月からスタートしたシリーズを多少の修正を加えて掲載します。取り上げているのは原則として完結した漫画です。気ままな個人的な感想ですので、ご意見は大歓迎ですが、あまり真剣なご批判は、泣きたくなるのでご容赦願います。

MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT
(2021年5月号)

「魔法使い」というものには、なんとなく憧れてしまいますね。いろんな物語がありますが、多くは、美男美女やキュートでちょっとドジな女の子とか、そんなイメージでしょうか。今回紹介する「魔法使いの娘」の魔法使いは、そういうイメージではなく、物語としてもいわゆるすてきな夢の話ではなく、どちらかというと人間の重たい部分が描かれた現代のお話です。

「魔法使いの娘」は、那州雪絵(なすゆきえ)による「オカルトコメディ漫画」(そんな分野があるんですね)、2002年~2009年まで「月刊ウィングス」連載、全8巻。続編として「魔法使いの娘二非ズ」が2010年から2017年まで連載し全7巻で完結しています。

ここで登場する魔法使いは、そう呼ぶしかない桁外れの霊能力を持つ陰陽師・鈴の木無山(すずのきむざん)のことで、この物語の主人公はその娘(養女)の鈴の木初音(はつね)です。16歳の女子高生時代から物語がスタートします。国家レベルの呪術まで任されるほどの人物でありながら、一般常識や生活能力が皆無の無山の世話に忙しい初音。才能を見込まれて後を継ぐよう勧められますが、断固拒否しながら高校卒業後も家事手伝いをして無山の世話を続けます。いい年した娘が就職もせず家事手伝いというのもちょっと不思議な設定なのですが、それにも意味がありました。やがてなぜ養女になったのか、育ての母は? 実の両親は? さまざまな事件に巻き込まれながら、無山との関係も変わっていきます。そのため続編は「娘二非ズ」となって、無山とは別に不本意ながらも陰陽師となって活躍します。

多くは一話完結で、初音をメインとした話ばかりではなく、陰陽師らしい不思議な事件がメインのものもあり、読み物としてとても面白い仕上がりになっています。名作ホラーミステリー漫画「百鬼夜行抄」にも通じる不思議世界。特に続編の方がそうしたエピソードが多く、ホラー、オカルト好きにはたまりません。そこにコメディ要素も加わっていますので、これはかなり楽しめると思います。おうち時間がいっぱいあるなら、ぜひ手にとってみてください。

このコラムは、原則として完結した漫画について書いています。今市子作「百鬼夜行抄」は、作者が元気な限り延々と続いていく気がするので、紹介するチャンスがなさそうですが、自分が今どこに生きているのかとふわっとするような面白さがあります。その手の話が好きな方は手にとってみてください。


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