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【週刊プラグインレビュー】NEOLD / U2A

今月はNEOLDから発売されたコンプレッサーU2Aをレビューしていきます。

簡単なウォークスルーはこちらを。

サウンドデモはこちらをご覧ください。

見た目と名前から察していただける通り、Teletronix LA-2A系のコンプレッサーになります。
LA-2A系のコンプレッサーは大手プラグインメーカーは一通り発売していて、今では各DAWにも標準で搭載されるほど巷に溢れかえっています。

 なにがなんやら・・・

そんな中発売されたLA-2A系のプラグイン。
他社に比べて特色なければレビューしなくてもいいかーと思っていたのですが、使ってみるとなかなか面白い機能がたくさん詰まっていて、既存のLA-2Aと異なり使い所が豊富だなと感じたので、レビューしていこうと思います。


NEOLD

さぁ、そもそもこのプラグインのメーカーであるNEOLDはどんな会社なのか見ていきましょう。

ドイツに本拠地を置くNEOLDは、ヴィンテージオーディオ機器や真空管回路の知識に長けたロジャーと、最初期のオーディオインターフェイスの販売に関わり、elysiaを設立・運営してきたドミニクと、BrainworxやPlugin Allianceのプラグインのコーディングに携わり、Fuse Audio Labsを設立したライムンドという業界ベテランによって構成されています。
ちなみにNEOLDはNEW+OLDの造語です。

希少な機材・部品をもとにDAW時代にフォーカスしたプラグインを作成するのを得意とし、ビンテージトポロジーの情熱に基づき、クラシックなアナログ機器に新たな命を吹き込むことも好んでいます。

その辺りの思想は彼らがこれまでにリリースしたプラグイン群からも感じることができます。

1930年代の真空管サチュレーターから着想されたBIG AL

1950年代のTelefunken V76 / U73から着想されたV76U73

NEOLDの凄いのが、これらのプラグインを作成するにあたって、専用の実機を作り上げているところ。
過去の名機の解析だけでなく、それを踏まえて現代に解釈をアップデートした実機を実際にハードウェアとして作り上げ、それを忠実にデジタルモデリングするという形でプラグインを作っています。すごい・・・。

余談ですが、彼らの機器キャリブレーションに関するブログもかなり面白いので、是非一読を。


Teletronix LA-2A

プラグインの詳細に入る前にもう一つ。
今回のプラグインの元ネタになっているTeletronix LA-2Aに関して少しさらっていきましょう。

LA-2Aは1962年にジム・ローレンスによって開発されたレベリング・アンプリファーです。
当時はラジオの放送レベルを自動で一定に保つために開発されたので、レベリング・アンプリファーと呼ばれていました。
LA-2Aはジムが海軍で学んだ軍用光学センサーの知識をオーディオ信号に対して転用したものであり、LA-1 / LA-2 を経て、LA-2にリミッター切り替えを搭載することで現在の形となります。

この辺りの詳細を知りたい方はこちらを。

光学式(Opto)コンプレッサーとは

LA-2Aで採用されているT4セルを始めとして、光学式のアッテネーターを搭載したコンプレッサーを光学式コンプレッサー、Optoコンプレッサーなどと呼びます。

入力される信号の量によって明るさを変えるエレクトロルミネセントパネルを、明るさによって抵抗値の変わる硫化カドミウム製の光抵抗と組み合わせてアッテネーションを実現しているわけですが、ハイパーざっくりいうと、音を光に変換してその明るさからコンプレッションの具合を決めていくコンプです。で、まぁその仕様上の特性やらなんやかんやあって「アタックが遅めでリリースが二段階のコンプ」となっています笑

この光学式のコンプレッションこそLA-2Aのキャラクターそのものであり、長年愛されるサウンドの肝となっています。

より詳しく知りたい方はこちらを。

今回取り上げるU2AはLA-2Aに加えてリリースタイムのコントロールも可能になっていますが、基本的に10msecほどの遅いアタック、入力ソースの大小によって変化するリリースタイムという光学式コンプの基本は継承されています。


構成

さて長くなりましたがU2Aの基本構成を見ていきましょう。

U2AはLA-2Aに真空管サチュレーターを搭載した2 in 1のようなプラグインになっています。LA-2A部分にも機器の経年劣化をシミュレートするノブや、サイドチェインフィルターなどを搭載することで、従来のLA-2A系プラグインではなしえなかったサウンドを作り出します。

Gain
ピークリダクション処理によるレベル低下を補うためのメイクアップゲインです。実機と異なり、U2Aでは0~40dBの範囲でクリーンなゲインを提供するリニアアンプであり、真空管アンプから得られる美しいオーディオ的効果は[Drive]という別のコントロールに割り当てられています。
歪みを切り分けることによってどのようなレベルや信号にであっても適切な真空管歪みを付加することができます。

Meter
VUメーターは、入力レベル、ゲインリダクション、出力レベルのいずれかをdBで表示します。筐体底部の黒いネジでモードを変更することができます。基準点は0VU=-14dBFSです。

Peak
ピークリダクションの強さをコントロールするノブです。スレッショルドを設定することで、望ましいコンプレッションの量をコントロールすることができます。

※Peakコントロールが反時計回りに完全にセットされている場合、U2Aのチューブサチュレーションステージをスタンドアローンモジュールとして使用することができ、基本的にコンプレッションは全く行われません。


Recovery
T4Bオプトセルの特別なプログラム依存のリリースフェーズは、この壮大なコンプレッサー設計の真の魔法が起こる場所です。
リリースタイムは素晴らしく音楽的な挙動を示し、初期は速く、リカバリーフェーズの終わりに向かって遅くなります。また、ゲインリダクションフェーズが一定時間継続すると、追加のメモリーエフェクトがリリースを促します。
これは多くの信号に対して素晴らしい効果を発揮しますが、その反面、うまく適合しない場合に適応する可能性がないのが難点です。

そこで、ELパネルの慣性力をコントロールすることで、独自のリリース・プロセスを実現する[Recovery]ノブが活躍します。時計回りに回すと、より長いプログレッションが得られます。

Aging
T4B回路内のエレクトロルミネッセンスパネルやフォトセル、さらに電子部品は、エージング効果によって個々のデバイスの圧縮特性が大きく変化します。
[Aging]ノブは、この現象を利用して、ELパネルやT4Bセル内のLDR部品の物理的な材料状態をコントロールできるようにしたものです。
基本的には、新品のオプトセルを搭載した純正品から、数十年経過した超高齢機までブレンドすることができます。この複雑で非線形な動作修正は、主にスレッショルド、レシオ、ニーパラメーターに影響します。


R37
[R37]トリマーは、サイドチェイン回路内のエンファシスフィルターのレスポンスをコントロールするものです。
反時計回りに回すと、サイドチェイン信号の低域が減衰し、高域成分に対するコンプレッサーの感度が高くなります。オリジナルと同様に、Flatは時計回りに回しきった状態です。

Limit / Compress
コンプレッサーの特性をシフトするスイッチです。
Compressのポジションはより緩やかなカーブを描き、Limitはより高いレシオとハードニーでピークリダクションが強くなります。

Drive
12AX7真空管アンプステージの内部で発生するサチュレーションを設定するコントロールです。レベルコントロールされているので、音量の増減なくTHDだけを増加させることが可能です。

Mix
ドライ信号とウェット信号をブレンドすることで、パラレルコンプレッションを実現します。

Power
電源スイッチやランプをクリックすると、プラグイン全体を作動させたり、バイパスさせたりすることができます。


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