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パーフェクトデイズを観て「君たちはどう生きるか」

始まり
 正月、テレビでは地震と飛行機事故、ネットは性被害の話題。
「現実逃避するかぁ」映画館で映画を観たくなった。
ということで観に行く。
「行こう、行こう」

パーフェクトデイズ
 役所広司さん、この方のおっさんの演技が大好きだった。
予告を観るとおっさん役で主演だったので、観に行くことにした。
さらにトイレとは言え有名建築の作品群にも興味があった。
私は情報システム関係の仕事で、幾人か建築家と付き合いもあった。
その方々の設計したトイレがあるのも魅力だ。

「さて何処の映画館へ行くかねぇ」
「近所がいいなぁ、それもローカルな街がいい」
吉祥寺で上映していたので、散歩がてら妻と行くことにした。
50才以上の夫婦割を利用できるお得感もある。

役所広司のおっさん
 役所さんのおっさん(60才以上のおっさん)は味がある。一番いい。
おっさんの演技で個人的に好きだったのが、「キツツキと雨」(2011年)
小栗旬と共演している。小栗旬の演技もいい。凄くいい映画だと思ったが、それほど話題にならずに消えた。
役所さんの演じる田舎の木こりのおっさん、最高だった。

 最近ではペンションメッツァ 1話目。草むらから突然でてくる役所広司、いい感じだ。
このシリーズ、私は長野の原町など八ヶ岳が見える場所が好きだ。
今はキャンプだけだけど、このペンションなら泊まってみたい。

ようやくパーフェクトデイズ
 11時20分から上映なので、散歩途中にあるトーホーベーカリーでパンを並んで買った。思ったより混んでいる。
時間が迫り、観てから食べることにした。

 館内は土曜日だけど空いていた。評判がいいとはいえ、やっぱゴジラとは違う。
映画は27才の娘が昨年観て良かったと言っていた。そんな程度でほとんど事前情報なしで観る。

ルーチンワークは私も同じ
 映画は始まりから30分以上、平山のルーチンワークを綺麗な映像と音楽で淡々と流していく。
トイレ掃除と言っても、有名建築の掃除って感じだったので、不潔さや不気味さはない。本当に綺麗に感じる。

 ルーチンワークは60才を越えた男にとって心地いい。
基本的におっさんはルーチンワークが好きだ。私も今ではルーチンワークで生活している。
妻には毎日同じ場所へ散歩、練習、同じ様な食事の繰り返しで飽きないかと言われている。
また平山みたいに、木の苗は拾わないが、自然のモノを拾う。部屋にあるサボテンと多肉植物に水もあげている。

幸運のアイテム
多肉植物と化石など

音楽
 音楽も自分が10代の頃に初めて聴いた曲が多かった。
私は黒人ブルースが好きなので、まずこれだ。
The Dock of the Bay Otis Redding 
流れ流れ、波止場で孤独に佇む男の歌。独りぼっち。時間を無駄にすごすしかない。

唯一1970年代の日本語の曲
青い魚 金延幸子
 はっぴいえんど時代の細野晴臣がプロデュースしている。
当時のはっぴいえんどの音だ。12月の雨を彷彿させる。
金延 幸子さんは男と駆け落ちしてアメリカへ消えた。今は日本にも来ているようだ。

次は本だ
 パーフェクトデイズを観ていると、本、音楽、建築と幾つかインスパイアされた。いい映画は表面の面白さだけでなく、色々と新しい発見が出来る。内容が豊穣で深い。
読書好きだがジャンルが違う、全部読んだことがない。

 映画で読まれていた古本
11の物語 パトリシア・ハイスミス(著者), 小倉多加志(訳者)
ハヤカワ・ミステリ文庫
   ブックオフで入荷待ち
木、 幸田文(著者) 新潮文庫    ブックオフで入荷待ち
まだ手元にない。

最後は建築
 掃除していた建築家のアート作品といえるトイレ
「THE TOKYO TOILET」 渋谷の公共トイレプロジェクトの作品群だ。

 過去に仕事を一緒にしたことがある小林純子さん ゴンドラ  
まちあかりのトイレ《笹塚緑道公衆トイレ》
この方は昔からトイレ建築に特化した建築家、一緒にベルリン、ロンドンへ行った時も、
「すみません、男性トイレの中写真を撮ってきてください」と何度も頼まれた。しかし、男子トイレで写真を撮る。これは公共トイレだと危険なんだよね。「お前、何やってんだ!」となる。世界はマッチョが多い。

 今度は世界の安藤忠雄さん 安藤忠雄建築 一応仕事しました。もう忘れていると思う。海外も一緒に行きました。
あまやどり 《神宮通公園トイレ》
80才越えて、癌も蹴散らして仕事している。現在個人宅の建築がアメリカのセレブに大人気だ。

 隈研吾 森のコミチ 《鍋島松濤公園トイレ》
仕事の機会はなかったが、山登りの好きな私、京王線高尾山の駅に馴染みがある。

結構凄い建築家が連ねている、時間があるので後日全部まわるか。

物語をどう感じたか
 最後は物語について、毎日掃除の仕事をルーチンワークしている平山のおっさん。でも不思議に幸せそうだ。
「何故だろう?」
それは役所さんの演じる平山のおっさんに知性と教養、人並みの人生があったからだ。最初からこんな生活をしていることはない。
幸せはその人の知性と教養、人生次第だと感じた。

 これが、本も読まない、音楽も聴かない、木々にも興味ない。芸術、花鳥風月にも興味ない、やることは休日のゲームかパチンコだけのおっさんだったらどうだろう?
幸せそうであっても、私は共感も感動もしない。時間を食いつぶしているだけだ。

 映画の後、天気もよく暖かい井の頭公園のベンチで、トーホーベーカリーで買ったパンを妻と食べる。遅い昼食だ。
持参したコーヒーも美味い。
妻と映画の話やもう成人している子供達の話をする。

 映画を観ても生活は変わらない。変わるのは見える世界。人は思ったより世界を見ていない。そのことに久しぶりに気づいた。
子供も家族も自分で持ってから初めてその存在に気づく。
老人も自分が歳取ってから初めてその存在に気づく。
トイレ掃除する人達も影と同じだ。そこを利用する人達にとって存在していない。

 独身時代、公園で遊ぶ子連れの家族、散歩する老人などほとんど見えなかった。でも今はよく見える。
その親子の心の動きも手に取るようにわかる。
これが幸せだろう。おそらくだけど。

ジブリ美術館

 帰宅の散歩途中ジブリ美術館の脇を通る。なんとロボットが吠えていた。
「了解です」
ジブリの宮崎駿さん、宮﨑駿と名前が変わった。名前を変えることは意味があるに決まっている。翌週、「君たちはどう生きるか」
相当な周回遅れで観ることにした。


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