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幸田 文さんの「木」を読む

 映画PERFECT DAYS において、採集してきた木々の苗木を育てる主人公の平山。彼が寝る前に読んでいた本の一つが、幸田 文さんの「木」だった。
全く知らない作家さんだけど、その繋がりが気になった。
私の教養の無さは今更しょうがない、早速調べてみる。

寝床で本を読む、意外に贅沢な時間だと思う

 幸田 文(こうだ あや)(1904-1990) 東京生れ。
幸田露伴次女。1928(昭和3)年、清酒問屋に嫁ぐも、十年後に離婚、娘を連れて晩年の父のもとに帰る。露伴の没後、父を追憶する文章を続けて発表、たちまち注目されるところとなり、1954年の『黒い裾』により読売文学賞を受賞。1956年の『流れる』は新潮社文学賞、日本芸術院賞の両賞を得た。他の作品に『闘』(女流文学賞)、『崩れ』『包む』など。

新潮社

 「木」は幸田 文さんが没後に刊行された本だった。益々興味が湧き、没後刊行された本を買ってみた。
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『崩れ』 講談社、1991年刊行 のち講談社文庫 
『木』 新潮社、1992年刊行 のち新潮文庫 改版
『台所のおと』 講談社、1992年刊行 のち講談社文庫 改版
『きもの』 新潮社、1993年刊行 のち新潮文庫 改版
『雀の手帖』 新潮社、1993年刊行 のち新潮文庫 改版

 「木」は映画の影響なのか新刊があった。御茶ノ水の丸善で手に入れた。他はブックオフとなる。

幸田文さんの没後の本

 「木」を読み読み進めると、知識と教養のなさが露呈して、色々と調べることになる。本の中の語句、単語の意味が分からない。本の中で書かれている木々もその姿が思い浮かばない。

 コンプライアンス、パワーハラスメント、サスティナブル、スキーム、こんな言葉は分かるけど、本当に日本の言葉を知らない。
そんなことをしていると読む速度はどんどん遅くなる。こんな薄い本、エッセイ(随筆)だけど、読み終わるのにかなり時間がかってしまった。

 目次からたどって少しその状況を書いてみる。

「藤」の章 この随筆に出てきた語句「植木屋の植溜(うえだめ)
これは地元(三鷹、調布)に多い植木屋さんの畑ではないかと想像はしたが、調べてみた。

「植溜」(うえだめ)は、樹木などの栽培場や緑地のことです。江戸時代には、火災の避難場所としての機能も持っていました。

 江戸時代、火災が多い、だから避難所とした原っぱとも言える。いわゆる空き地。
現在、都市に空き地は置いておけない。だから公園にし避難地としている。江戸時代にこの種の公園の概念はないだろう。それが植溜ではないかと思ったりした。

「ひのき」の章 ここで「アテ」という語句が出てくる。調べてみたが分からなかった。よって文章内で説明されている内容を信じるしかない。

「アテ」は材にならないヒノキを指す。加工で挽いている途中、曲がったり、爆ぜたりするヒノキで、どうにもならない木のことをいう。

 「アテ」はヒノキの育つ環境によってそうなる。外的要因で木がねじれなどの物理的問題を内包する。
だから大木になれば、一見利用出来ると思われるが、加工しようと歯をいれると、内包された圧力が開放され、いきなり裂けたりする。下手すると作業人に危害を及ぼしたりする。そんな「アテ」を職人は「悪」という。

 育つ環境から真っ直ぐなヒノキになれず。自分が悪い訳ではないのに「アテ」となる。そこに救いはないのだろうか、心を揺さぶれる幸田さんの感性。この辺りから私は本にハマっていった。久しぶりに品のいい文章にふれたと感じる。ちなみに私の文章に品はない。

「スギ」の章 ここでの「苗圃(びょうほ)」という語句が出てきた。
これも文脈で想像はできるが調べる。

果樹・林木・造園樹木などの苗木を育成するための圃場。ただし、造園樹木の苗圃には苗木ばかりでなく成木も育成されている 。

これは近所に多い植木屋さんの畑だ。
しかし2022年問題があり、宅地化された畑が沢山あった。しだれ桜とか五葉松、色々な植木を見ることが出来なくなりつつある。

2022年問題
2022年問題(生産緑地問題)とは多くの生産緑地が解除されることで土地の供給量が大幅に増え、地価の下落が懸念されていた問題。 生産緑地は東京だけでも約3,300ヘクタール(東京ドーム700個分以上)ある 

 この章で楓の芽吹きは美しいという記載があった。
これは最近、散歩で私も気づいている事だ。幸田さんと感性が同じだと思えて少し嬉しい。

楓の芽吹き

「花とやなぎ」の章 ここでの「柳絮(りゅうじょ)」これも語句の意味が分からなかった。

白い綿毛のついた柳の種子。また、それが春に飛び漂うこと。季語となっている。

 最近街路樹として柳をほとんど見なくなった。その理由は知らないが、子供の頃は柳はよく見る街路樹だった。

柳絮

 桜の名木(老木)が紹介されていた。山梨県北巨摩郡の「神代桜」
今で言う北杜市
だ。その老木はまだ健在だった。北杜市は毎夏、遊びにいく場所だ。この桜を一度見てみたいと思い初めている。樹齢2000年と言われる。その凄さを感じてみたい。

北杜市の神代桜

私は大木を見るが好きだ。木が語ってくるその歴史を少しでも感じたい。

長野県松原湖の湖畔の大木、樹齢800年という、娘と息子と私

こんな感じで読み進めて、ようやっと読み終えた。
次は「崩れ」を読む予定だ。


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