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仮面ライダーV3第44話の話をさせてくれ

久しぶりに、ドラマ作品についての感想を書く。

今日書き綴るのは、仮面ライダーV3についてだ。

仮面ライダーV3とは、約50年前に放送されていた仮面ライダーシリーズの第2作目である。主人公の改造人間、風見志郎がデストロンという恐ろしい悪の秘密結社と戦う……そういう物語だ。

仮面ライダーは子供向け番組として作られたものであり、基本的に物語も「悪い奴とヒーローが戦う」という至極単純な仕組みで出来ている。V3もそうだ。風見志郎がデストロンと必死に戦う姿は、とてもかっこよくて憧れる。

40話あたりまで、私もただただ風見志郎に憧れ、V3の戦う姿に惚れ惚れしているだけだった。

だが、事態が変わったのは第43話「敵か味方か?謎のライダーマン」からである。

第43話は題名の通り、仮面ライダーの一人である「ライダーマン」が登場する印象的な回だ。

ライダーマンは、結城丈二という元々デストロンの科学者の一人だった男が変身している。大幹部のとんでもない逆恨みから腕を溶かされてしまい、その後、ライダーマンとなって大幹部への復讐を誓うこととなった。

この回を見た時「これは本当に子供向けなのか……」と圧倒された。腕を溶かされた結城丈二の鬼気迫る表情は、子供向け番組という概念を忘れさせる。結城丈二を演じる山口暁の復讐に燃える演技が、あまりにも力強いのだ。

そして今回の記事の肝である第44話だ。

44話を見た時……苦しく、やるせなく、それでいてあまりにもドラマチックな展開に酷く胸を打たれた。こんなに動揺させられ、衝動的に「こんな風に作品を描きたい」と心を突き動かされるような作品を見たのはいつ以来だろうか? そう思ってしまうほどに。

私が酷く感動した、44話の印象的なシーン。それは、結城丈二が自身を庇って死んだ仲間の墓場へ赴くシーンだ。

このシーンで、結城丈二が必ず大幹部に復讐することを仲間の墓前で誓うのだが、そこに主人公である風見志郎がやってくる。

「一緒に戦おう」と持ち掛ける風見を拒絶する結城。結城は自身の復讐のためにのみ行動しようとしており、自身の改造された腕をもぎ取り「これが僕の悲しみの姿だ」と風見に訴える。

だが、風見もまた「悲しみの姿」を持っている。それこそ、「仮面ライダーV3」の姿だ。風見は家族を殺され、肉体をも破壊されてしまった風見を風見たらしめるのは今や「頭脳」だけであることを、自ら変身して結城に伝えた。(本来、風見は自身がV3であることを一部の人間にしか明かしていない)

その際の、結城の恐れおののく表情はあまりにも秀逸である。結城は腕だけだが、風見はもはや人ではない。それがどんなに恐ろしく悲しい事なのか、根が優しい結城には想像できてしまったのだろう。

そんな結城に「個人の復讐は忘れるんだ!」と叫ぶV3。それは、過去の自分自身に伝えたいことなのではないかとも見て取れる。風見もまた、最初は家族を殺された復讐のために戦おうとしていたのだ。

もしかしたら風見は結城に過去の自分を重ねているのかもしれないと思うとめちゃくちゃ泣けたし、風見という男の精神的な成長を垣間見ることができるいいセリフだと思った。

V3に説得された結城が「僕には分からない」と嘆く姿はあまりにも痛々しく、彼の「捨てきれない人間らしさ」と「絶対に許せないという気持ち」の葛藤をよく表しているようで、この複雑な脚本をよく考えたな……そしてよくこの繊細な心理を演技として表現してくれたな……ととにかく感動した。

その後、結城を説得した風見が、すぐ近くで待っていたおやっさんこと立花藤兵衛と合流するのだが……このシーンもまた本当に素晴らしい。

「辛い役目をさせた」と申し訳なさそうにするおやっさんに、気丈に振舞って見せる風見。風見の様子に安堵したおやっさんが目を離し、別の話をはじめた時だ。

風見が、酷く辛そうな顔をする。この顔を見た途端、もう胸がいっぱいになって、ここでも泣いた。

風見は自身が「改造人間」であることを人に言わずにいたし、ヒロインである純子に知られそうになった時はかなり深刻な顔をしていた時もあった。改造人間であることは武器でありながら、風見にとっては大きな足枷なのだ。自分自身が、デストロンと同じような「怪人」であるという気持ちが、どこかにあるのかもしれない。

自身の大きな枷(弱み)を曝け出したことに対する怯え、結城と、過去の自分への祈り……様々な感情を、風見の顔から読みたくなる。風見が辛そうな顔をするこのシーンは、改造人間という存在の「悲哀」が詰まった名シーンだろう。

44話は本当に濃密で繊細な人間ドラマが24分という短い時間の中にぎゅっと凝縮されている素晴らしい回だと思う。

結城丈二と風見志郎はまだ出会って2話しか経ってないのだが、二人が「どういう立場にいて、どういう考えで動いているのか」がはっきりわかるような演出や言葉選びには脱帽するばかりだ。

まだ45話は見ていないのだが、どうしても43話〜44話について書きたくなってしまったので突発的に書き連ねてしまった。読みづらかったり、解釈違いが起きていたらすまん。

V3には、今後の展開にも期待が募るばかりである。

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