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謎多きヴァイオリンの話(1)【音学note Op.10】

皆さま明けましておめでとうございます。ライターの青竹です。
お正月は如何お過ごしでしたでしょうか?お正月と言えばおせち料理、おせち料理と言えば高い、高いと言えばヴァイオリン
というわけで年始一発目の記事はヴァイオリン特集です。ツッコミは気にしません、無理矢理突き進みます。猪突猛進(一年遅れ)。

・ヴァイオリンの歴史

ヴァイオリンは擦弦楽器(さつげんがっき)という種類に分類される楽器です。これは弓で弦を擦って音を出す楽器のこと。この擦弦楽器の起源は非常に曖昧で、世界中の色々なところで偶発的に現れたと思われますが、一先ず「弓で弦を擦る」楽器が初めて文献に現れるのは、10世紀アラビアのラバーブという楽器だと言われています。

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(ラバーブ。画像出典:民音音楽博物館HP)

現代のヴァイオリンとは随分違う形ですね。他にも中国の二胡や馬頭琴など、世界のあらゆる所で擦弦楽器は生まれました。

「なるほど、つまりこれがヴァイオリンの先祖か〜」

まあそう思ってしまうのも仕方ないですね。だってそう思わせるように書いてるんですもの。
確かに「撥弦楽器」としては先祖になるのですが、この楽器達が改良に改良を重ねて、苦労の末にヴァイオリンになった!とはちょっと言い切れないのです。ではいつ生まれたか?実はそれもよく分かっていません。ヴァイオリンは1550年頃の絵画に既に完成された形で突如出現したのです。謎ですね...。

記録に残っている最初の製作者は北イタリアに住む二人の男。クレモナという街で活躍したアンドレア・アマティ(1505頃-1580以前)と、サロという街のガスパロ・ディ・ベルトロッティ(1540-1609)。彼らによって、ようやくバイオリンの歴史は史実として動き出したのです。
その後16世紀後半から18世紀にかけて、北イタリアの都市クレモナはヴァイオリン史に欠かせない街となります。この街でヴァイオリン製作を行う一族が幾つも登場し、数多くの名器が作られました。その中でも特に有名だったのが、アマティ一族、グァルネリ一族、そしてストラディバリウス一族。ヴァイオリンを弾いてる方は一度は聞いたことのあるこの名前達。彼ら一族が作った楽器は特に名器として知られていて「」という値段がつく事も珍しくありません。いや、むしろ当たり前の様に億越えしてきます。この時代に作られた楽器が未だに最高峰と言うのは、なんだかロマンがありますね。

はい、お疲れ様でした。これでバイオリンの歴史はおわりです。え、早すぎない?と思われた方々ごめんなさい。でも、これ以降楽器はほぼ形を変えておらず、変化と呼べる物はたった一回だけ、時代に合わせて改良されただけだけなのです。

・時流に乗った楽器の変化

まずはもっと高音域まで弾けるように、指板と言われる部分(弦の下にある黒い板の部分)が本体の中央まで伸びました。そしてもうひとつは(本体の真ん中部分、弦の下に立ててある薄い板)を高くし、同時に指板の位置も高くして、弦の張力が増すようにしました。これによって、より大きく華やかな音が出るようになりました。それに伴って弓の形も少し変化しました。

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(バロックバイオリンとモダンバイオリンの比較図。画像出典:YAMAHA 楽器解体全書)

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(上がバロックボウ、下が現代のモダンボウ。画像出典:名古屋大学古楽器研究会)

どうですか?弓は分かりやすいですが、本体は言われてみれば...って感じでしょうか。

こんな風に最初からほぼ完成された楽器だったヴァイオリン。でもなぜ現代に作られた楽器ではなく、300年や400年も前に作られた楽器が未だに最高峰とされているのです。

・ヴァイオリンの価値を決めるもの

まず大前提として、ヴァイオリンに限らず楽器の値段を決める重要な要素、それは音色です。
どんなにフォルムがカッコよくても音が悪ければ、その楽器は鑑賞用にしかなりません。つまり言ってしまえば、ヴァイオリンの値段を決めるのは「音色」!以上!となるのですが、せっかくなので名器と呼ばれる物がなぜ音色が良いのか、その秘密も探ってみましょう。

まず重要なのは使用されている木材の質です。
ヴァイオリンの表板にはスプルースという木材が使われているのですが、このスプルースの質が楽器の価値に大きく影響します。17世紀には良質なスプルースが数多くあったのですが、現代では非常に貴重になってしまいました。そしてこのスプルースという木材は、切られてから330年がもっとも強度が強くなるとされていて、それも楽器の価値を高める一要素となっています。

次の要素としてはニスが上げられます。
ヴァイオリンの表面には薄くニスが塗られていて、このニスでも音の良し悪しが変化します。ただこれに関しては非常に曖昧で、ストラディバリウス等名器のニスの質自体は現代とあまり変わらないのですが、どうやら塗り方に工夫がある(らしい)という結論になっています。

最後は技術的な質です。
17世紀、ヴァイオリンの需要は非常に高く、沢山売るために製作者は楽器を量産しました。その結果楽器自体のクオリティは下がり、質のあまり良くない物も増えていきます。そんな中ストラディバリウス家等は量より質を重視したヴァイオリンを製作していました。その結果自ずと楽器の価値は上がり、それが現代にまで続いているのです。

・まとめ

如何でしたでしょうか?ヴァイオリンは突如として歴史に現れ、世界へ広まっていきました。
使われている素材が貴重な為、あれだけの値段になってしまうのですね。
第二回ではヴァイオリンニストには欠かせない「」の話、そして「世界一高いヴァイオリン」の話をして行こうかなぁ、なんて思っています。

あ、それともう一つ。記事の題名が【音楽あれこれ】→【音学note】に変わりました!(どっちでも良いよとか言わないで...)。
心機一転、ますます面白い記事を書いて行きたいと思っています。乞うご期待ください。

本年も宜しくお願い致します。


コロンスタジオライティング部
ライター: 青竹(Twitter@BWV_1080)

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