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プレーヤーの『リアクション』を生成するルール集【ライトなカードゲーム編】

前書き

 普段と違い、ゲームのメカニクス(≒大枠)の話ではなく”細かい実装”部分の話。

 大枠のメカニクスは作るゲームの上限や方向性を決めるので重要です。メカニクス設計の失敗をその後の細かな実装で直そうとすると無駄にルールが多くなったり、作れるデータ(≒TCGで言うカード等)に不要な制約ができたりしてしまいます。
 しかし、一方で細かい実装部分こそが最終的な室や印象を決めるものだと思っています。

 短時間で終わる軽いゲームの場合、『このゲームはどうやって人の心を動かすのか?』を意識して作っていきたい。
 作っていきたいんですが、テストプレイ時はつい頭でっかちになり「カードごとの強さのバランス≒公平性」の話をしてしまいそうになる。(意識して踏みとどまっているけど。)
 自戒も込めて、自分が良いと思っている「考えどころ」ではなく「リアクション」を生むためのルールとそれが良いと思う理由について書いていきます。

 周りのサークルでゴーアウト系の作品が増えているので、今回は「毎ターンカードを出すだけ」のライトなカードゲームに限定していきます

 運に関連する心の動かし方はこちらで書いています。

UNO

流石に説明いらんよね。

「Unoって言ってない!」

 このルール、考えたやつは悪魔ではなかろうか。
 これを言われた人間は100%の確率で手札が1枚。そんな状態で言わなきゃいけない台詞を忘れたんだから、「次、あがれるかなぁ」って期待していたに違いない。まぁ、リアクション出るよね。

  更に言うなら次のターン、「UNO言ってたら上がってたって~!」という2回目のリアクションも狙える。 強い。

 複数枚出しが可能なルールと相性が悪い点が唯一使いづらい点。

『ドロー4』

 理性的なゲームの考え方で言えば完全にバランスブレーカー(色が合うカード出すゲームで常に出せる上に最高攻撃力)。
 それ故にUNOを参考にした同人ゲームだと調整されて抜けている事が多い。テストプレイで指摘されるよりも前に作者が駄目な事だと感じて、抜いたり弱体化しているのをよく見る

 ”最大の攻撃=リアクションが出る流れ”をどんな時でも発生させるという意味ではこのカードはこれでいいんだなと思う。正直、例えばドロー2のように単色にしたところで(バランスはとれるかもしれないが)面白くなるかと言えばそうではないと思う。

  あとやられた側がやり返す可能性がある(4枚もひくからまたドロー2くらいは手に入れる)のも結構好き。

Neu(ノイ)

  neu(ノイ)は数字カードを出して足し算をしていくゲーム。101を越えたら(つまり、102以上になったら)負けとなる敗者を決める。考えどころではなくみんなでワイワイリアクションしながら楽しむタイプの軽いゲーム。

「101」

 このゲーム最大の悪意の1つが特殊カード「=101」。101を足すのではなくカウントを101にするカードである。
 まじでひどい。カード構成の多くを占める数字カード(≒その数字を足す)が出せない状態になる。

 このカードの芸術点の高いところは”急襲を促す攻撃的なカード”であると同時に”防御カード”でもあるところ。「1枚引いて1枚捨てる」というゲームの進行はテンポが良く、誰でもわかる事が利点である。反面、「使えない」あるいは「使いたくない」カードが終盤に向けて蓄積されてしまう。
 「攻撃嫌いの平和主義者」の手札に限って攻撃カードが溜まるという状況が回避できるのは非常に良い。

カードの構成比率

 Neuをプレイした事が無い人が上記の「101」のカードを知ったら「それすぐ終わっちゃわない?」と感じると思う。
 結論からいうとそれは違う。101の状態でも出せる以下のようなカードがあるため結構続く。
 ・「101」
 ・マイナスの数のカード
 ・数字をそのままで他人の番にするカード
   ショット(選んだプレーヤーのターンに)
   パス(次のプレーヤーへ)
   リバース(前のプレーヤーへ)
   ダブル(次のプレーヤーへ。次のプレーヤーは2枚出すかパスを出す事)

 ネプリーグの『ファイブボンバー」(あるいは膨らんでいく風船を渡しながら行うゲーム)を頭の中に思い浮かべてほしい。これらは”爆発しそう”って思っている状況こそが最もリアクションが出て、盛り上がる時間である。ゲームやTV番組を作る側の人間としてはこの時間を(わざとらしくない範囲内で)長くしたい。

 Neuも同じである。101付近の合計数でゲームが進行した方が良い。おそらくこのゲームの作者はセーフカード率(上記の合計が101付近でも出せるカードの率)を設定し、その中でも展開が多様になるように個々のカードを実装したのだと思う。

 ・マイナスのカードを上家が出したおかげで出せないと思っていたカードが出せるようになった
 ・吸収しようと101のカードを出したらリバースが飛んできて自分がやられた
 ・「マイナスのカードあるから次は大丈夫」⇒ダブル飛んできてやられた

 ①ゲームに必要なカードの役割をリストアップ⇒②役割毎の比率に合わせて具体的なカードを採用するという流れは重要だ。TCGのデッキを作るときに全体の構成を考えずに強そうなカードを採用して強いデッキができるだろうか?当然できない。ライトなゲームの構成においてもこれと同じである

 もっと言うと急に101付近に近づくように「101」のカードや大きい数字(+50)が実装されているのも偉い。

 同人でいくつかNeuのフォロワーをみたが、流されるままに「カードごとの強さを均一に」と考えて作っていると感じる。
 そのためか、①淡々と数字が上限まで増加し、②上限ぎりぎりで大して踏みとどまらず、③毎回同じような展開、ラウンド数で終わる。
 5分かからず終わる短いゲームなら何度もやれば公平さは保たれる。もっと派手に、リアクション生成装置と割り切ったNeuフォロワーを期待したい。

The Game

 1~100までのカードを場に出していく協力ゲーム。場には4つカードを出せる列があって2列は原則として昇順、2列は降順にしか出せない。仲間に手札の具体的な数字を伝えられない縛りルールの上で、「ここは出さないで欲しい」等の会話のみで全てのカードを出す事を目指す。

  UNOやNeuと比べるとちゃんと考えないとクリアできないゲーム。

ちょうど10戻る数字は出せる

 原則、昇順や降順にしか出せないといったが、1点例外がある。それが「ちょうど10戻るカードのみ出すことができる」というルールだ。

 協力ゲームにおいて味方から「ありがとう」と言われる機会を作るルールは作る側からすると非常に頼もしい。協力ゲームやチーム戦は(初心者が混ざった状態で)ガチにプレイすると時に「お前のせいで負けた」という感情を生み出しかねないものだから。

 その中でもこのルールはゲームスキルが必要ない点でいい。「運がいい事」と「それをちゃんと仲間に伝える事」だけで初心者でも「ありがとう」と言われる機会を得る事ができる。(仲間の手札とのとの兼ね合いでそのチャンスを手放すのが正解の事もあるけどね)

トラブルの作り方

 TheGameは「制限されたコミュニケーションの中で自分の持つ情報や意図を伝達する事」を核とする協力ゲームだ。このようなゲームではどうしても誰かがトラブルメーカーになる事になる。

 TheGameもトラブルメーカー=「数字を大幅に飛ばしてしまう人」は発生する。ここも他のゲームに比べるとスキルよりは運で決まる。どうやったって駄目な時は駄目。

 ただその上で「ちゃんと自分がまずい状態に陥っているか」が伝えられるかがゲームクリアと失敗を分けるようになっている。上級者には解決方法まで提案するというハードルを用意しつつ、初心者にはとりあえず「やばい」ってアラートだけは絶対に出すという低いハードルを課している

アラートの例
数字は言えないので例えばこんな感じ

「この列に出したい。そこ以外は数字がかなり飛んでしまう」
「次、どうしてもこの列をたくさん飛ばしてしまう。間に入りそうな数持ってたら全部出して」

 あとそもそも4列も数字を昇順と降順で出しているのだから一個くらいは「もう数字がほとんど残っていないゾーン」ができる。数字をたくさん飛ばしてしまうと思って、恐る恐る相談したら(もう存在しないため)誰も持っていなくて全然大丈夫だったという事も起こる

まとめ

 他にもありますが一旦この辺りで。
 悪意を感じるような危機的な状態に陥らせるルールから「ありがとう」と言ってもらえるルールまで、色々調べて真似していきたいと思っています。

 良いリアクションを生み出すルールやカードを知っているという方はコメント等いただけると嬉しいです

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