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【拡大再生産研究⑦】運でカジュアルに【クアックサルバー】

いつもの


 自分の作りたい拡大再生産のコンセプトを言語化するためにプレイ済みのゲームから毎回1つ取り上げて整理していきます。
 (ゲームの紹介が目的ではないためルールの紹介は省いていきます。)

前回はこちら。

はじめに

 デッキ構築(やその亜種としてのバッグビルド)に「バーストしない範囲で運試し(あるいはそのリスク管理)ができる要素」を追加したものはいくつかある。今回取り上げるクアックサルバー以外にも「Spirits of The Forest」、「Mystic Vale」等数も十分多い。

 このようなゲームを作るメリットとその際の注意点についてみていきます。

ポイント1 運を追加した事による影響

 まず、単純に良い部分として以下の記事でも書いたような運による一喜一憂や実力差の払拭があげられる。

運を入れる事の悪影響(他のゲームの事例)

 ただ、拡大再生産に何も考えず運を追加した場合、あまりにも大きな問題を引き起こす事が予測できる。
 下記記事でも書いた通り、拡大再生産のプレイ体験は良い方に転べば、自己成長の物語であるが悪い方に転べば格差に落胆する物語である。

 特に序盤数ターンの影響は本当に大きい。運の要素を追加する前のドミニオンですら1,2ターン目に購入したカードが1回目のシャッフルで2枚とも底に沈んだときは正直かなりきつい印象がある。

 純粋なプレスユアラックのゲームでも序盤の得点差はプレイ体験に大きくかかわる。あまりギャンブルをしない堅実なプレーヤーであっても大きな得点差ができてしまったら部の悪い賭けをするより他にない。

 この2つ拡大再生産(を含むデッキビルドやバッグビルド)と運試しは合わせてしまって問題ないのだろうか?
 (悪い例は挙げにくいのでサービス終了しているゲームの説明をします。)2013年からサービスを開始したPirates of Liberta(雑に言えばドミニオン+インカの黄金)の初期環境では序盤の賭けにの成否が埋まらない差になってしまう展開は多くあった。その後、バランス調整はされたがそれでも根本的にはこの問題が残ってしまっていたように感じる。

 同人レベルまで範囲を広げればこの「カジュアルにしようとして入れた運要素」が悪さをしているゲームはいくつも思い当たる。(勝つために)やりたくもない非堅実な賭けをするという楽しくない状況を生んでいるゲーム あるいはそれをなんとか報われるものにしようとして終盤に理不尽なまでの一発逆転が起こり、「今までのはなんやったんや…」となるゲーム達である。

クアックサルバーの場合

 その点、クアックサルバー(やSpirits Of TheForest)の場合、権利を2つに分けている。バーストしなければその両方が手に入り、バーストしてしまった場合は片方のみが手に入るというものだ。
 クアックサルバーの場合は2つの権利は 単純に得点とデッキ強化のコストと非常に分かりやすい。「序盤は点数じゃなくてデッキ強化が重要」という事だけ最低限わかっていれば大きな問題は起こらないだろう。

 クアックサルバーはこれによって良くも悪くも、
 ・序盤はバーストは恐れずにデッキを強化していく。
 ・終盤は育てたデッキが自分に応えてくれるか?の運試し。
 (強くできているとかなり有利だが、駄目なときは駄目)

 というプレイ感となっている。

ポイント2 ドローや+アクションが無い

 ドミニオン(特に2人戦)やその亜種はデッキ構築を進める上でのわかりやすい核として「ドローと+アクションが揃うと強い」という方針がある.
 クアックサルバーではルール上それが無くここまで普遍的な方針となるものが無い。ドミニオン2人戦やslayTheSpire系のデジタルゲームにおいてかなり強い方針である「引ききりデッキを作る」が基本的に存在しない。

 結果として、強いと信じた1種類のチット(さまざまな特殊効果がある)に偏った購入をする方が強い。組み合わせを考える楽しさという点においては控えめと言える。

 この点は拡張にて、複数種類のチットを引くことができた場合のボーナス、ゲーム中1回だけ使える能力(使わなかった場合は1点)などが追加される事でどう組み合わせるか考える楽しさを追加しているように思う。

ポイント3 同時処理

 「経験者が高速で回している状態は初心者にとってかなり怖く、近寄りがたい」という理由でドミニオンに触れてこなかった方も何人か見ているのでカジュアル層をターゲットにするなら、全員同時の方が良いと感じる。
  それぞれが別々の店舗で行うことに関しては、厳密に言えば「相手を見てからの方が有利」は多少存在するものの、最終ラウンド以外は特に問題とは感じなかった。インタラクションの薄さが少なくともこの点においては良い方向に機能している

それ以外の気になる点

×ネズミ(弱者救済)

 雑に言えば、1位との点数差に応じて、ハンデがもらえる仕組み。(計算式を使わず得点トラックの間にネズミが何匹いるか で数えられるようになっている)

 これが個人的にあまり綺麗ではないと感じる。購入の方はいいが、得点の方は「得点差に応じて得点をあげます」と言っているに等しいので。更に言えば、拡張無しの状態で言えば、少々点差を埋めたところで逆転にまでは寄与していないと感じる(それがバッグビルドの実力差なら得点を少々あげても差は埋まらない)

 「拡張ではネズミの値を参照するチットが増えた事」、大量にチットを出せた時にかなり多くの点数を稼げるようになった事などで十分に追いつく事がある。
 ただこの状態だとコアゲーマーには何の問題もないが、カジュアルというにはルールが多いと思う。

イベントカード

 ターンの最初にイベントが起こる。ただあまりプレイする上で各ラウンドを違う体験にしているとは思えない。弱者救済をやるならここでやればよかったのでは?(理不尽を感じるなら少し事前に見せるなどして)と感じてしまう。

まとめ

 拡大再生戦において序盤についた差は大きい。それにバースト系の「負けていると勝負をしないといけない」というプレーヤーの動きが合わさると悲惨な事になりうる。
 そうならないように
  ・バーストしても拡大だけは最低限行えるようにする
  ・弱者救済ルールを導入する
 を基本ルール(ランダムサプライ等ではない常に存在する要素)として組み込むことが重要

今後の課題(考えたい事)

<拡大再生産 お題16>


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