輪廻の呪縛
爽やかな朝、一日が始まり通学路に咲くアサガオ。登校する学童らは大切な友人と笑いあいながら雑談を交わす。
…そこに私はおりません。
穏やかなる午後、帰宅時間が恋しい会社員。仲間との軽い冗談まじりの会話に花が咲く。
…そこに私はおりません。
憩いの夜。家族や恋人たちが、しとやかな雰囲気を大切にする夕餉。
…そこに私はおりません。
では、お前はどこにいるのだ。
…はい、私はここにおります。
私の住処は土の中。雑木林に忘れられた寂れし墓所。割れた墓石の下では蛆に啄まれ骨となっております。
日々に追われながら無為に過ごした人生を懺悔し…誰ともつかぬ風の音に体をカタカタ震わせて…いつ終わるとも知れぬ、勝者の高笑いと敗者の泣き声に耳を傾けながら。
現世に縁のあった人々から忘れられた頃、彼は生まれた日に帰って、赤子の自分を見つめた。一刹那、魂は虚のようなまなこに吸い込まれて消えた。