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【高専OBOG Career Talk】美大に行きます! ~ 工学を背負って芸術の道へ

高専のOBOGがどんな道のりでそのキャリアに進んだのかを、一問一答や対談形式のインタビューで探っていく【高専OBOG Career Talk】。
第三回は、趣味に没頭して気づいたら沼津高専を飛び出して美大に編入していたというNさんに、高専が持つ懐の広さ、美大に入って気づいた工学と芸術の意外な接点をお聞きしました。

今回のインタビュイー:Nさん
沼津高専OB(2022年度本科卒)

沼津高専にて制御系を専攻。高専祭などで趣味のCG作品を公開するなど工学以外にも造詣が深く、高専卒業後はさらなる学びを求めて武蔵野美術大学に編入。
現在は映像系の学科に所属し、自身のスキルの土台をアカデミックレベルにアップデート中。

ーーよろしくお願いします、今回お相手させていただく高専Sparkleざきと申します。この度は貴重なお時間ありがとうございます。

よろしくお願いします。でも先輩からそんな下から挨拶されるとこっちが緊張しますよ(笑)。

ーーいえいえ(笑)。本インタビューでは「高専をきっちり卒業してから美大に編入」という、分野転向の中でも珍しい進路を選んだNさんに、その選択肢に惹かれた理由やそこに至るまでの過程をお訊きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

あらためて、本日はよろしくお願いします。

”高専は寛容な学校だと思う”

入学のきっかけと高専時代

ーー高専入るきっかけは覚えてますか?

元々中学生の頃からプログラミングスクールに通っていて、ソフトウェアをやりたいな〜とぼんやり思っていたんです。ちょうど当時、父の友人が高専の教員をされていて、そこから高専という学校を知りましたね。
高専のキャンパスツアーにも連れて行っていただいて、本当に感謝しています。その帰りの食事で「器用そうな指してるね」と言われたのはなぜか印象に残ってますね。思い返せばクリエイターに進めと言われてるような感覚です(笑)。

ーー入ってからは順風満帆でしたか?

お恥ずかしながら、勉学に真面目な学生だったとは言い難く(笑)。1年生の頃から趣味に全力を出してましたね。一度熱が入ると没頭する性格だったので、勉学や部活のエネルギーはほとんど創作活動に使っていたと思います。
あとは結構な頻度でゲームセンターに通っていたのを覚えてます。

ーーNさんというと3DCGのイメージがいまだに強いです。その頃から創作活動はやられていたということですか?

そうですね。それこそ1年生の頃から映像作品の制作はやってました。ちょこちょこアプリ作ったこともありますね。
高専祭スタッフではもちろん制作のムービー班*で、そこで各部署のトップたちを紹介する動画を毎年作っているので携わらせてもらいましたね。

*沼津高専における学園祭関連部署の1つ。本祭に流す動画制作などが主な仕事。

インターン=外の世界を知れる場所

ーー各種インターンに行かれてますよね。

割と積極的に参加した方だったとは思います。学校からのインターン募集から選ぶというよりも、Twitterなどで募集を見かけて、という感じで。結構好き勝手に行ってました。
高専内では同級生の友人が極端に少なかったので、勉強会やインターンなどで人脈を築こうとしてましたね。

ーー具体的な行き先はどのようなところでしたか?

3年生の時に某有名インターネットメディアのインターンに行かせていただきました。これはTwitterで見かけてそのまま応募しました。当時うちのクラスでは、3年生でもインターンに行けば単位が貰えるみたいなことが話題になっていて、せっかくなら行っとくか、みたいなテンションだったと思います。
4年生になるとプログラミングスクールの運営会社にインターンとして参加しましたね。ここでもきっちり単位は確保しました(笑)。

ーー当時の4年生だった自分は3年生でインターンに行くという発想がなかったのですが、すごいバイタリティですね。

確かに最初のハードルは高く見える”かも”しれないですね。高専にわざわざ「インターン募集してます!」と連絡してくる企業は、地元企業以外ほとんどないと思います。なので、ぱっと見高専生を募集していないように見える企業でも、応募すると案外通ったりしかるべき選考を受ければ参加したりすることはできると思いますね。

ーー確かに。結局は受入先の選考基準を超えられれば良いのですから、最初から諦める必要はないですね。

インターンは、当時学内の友人が少ない自分にとって外の世界を知れる場所という認識で、本当にさまざまな刺激をもらったなあと。
どこから情報を取ってこようと自由です。学びの場としても学校の外の世界を知るとしても非常に有意義だと思います。自分自身の興味によって飛び出してもらえれば

したいことを受け入れてくれる学校

ーー学内だけでなく、学外でも活躍されていたようで尊敬します。外の世界を見てきて、高専の特異性は何だと思いますか?

人材の尖り方だと思います。先輩から後輩、全国の高専生と交流してきましたが、何か一芸に秀でている人が本当に多いしすごい。そういった方々と交流させていただいたのは光栄ですし、自身の経験として貴重なものだと思います。

ーー自分のしたいこと、できることを突き詰めた方々がたくさんいらっしゃいますよね。

高専って、そういった人たちの”やりたい”を受け入れてくれる学校だと思っていて。
誤解を恐れず言うと、大学入試の無いまとまった5年間って非常に余裕があるなと。部活でも勉強でも研究でも趣味でも、やりたいことをやって良い時間がとても長い。
15歳から20歳以上までいろんな尖った人がいる環境で、彼らとの交流で芽生えた「これやりたい!」を受け入れてくれる寛容さが高専にはあると思います。

”好き”が高じて芸術の道へ

進路選択について

ーー進路決定の時期はいつ頃だったのでしょうか?

3年生の半ばまではクリエイティブ系に就職しようと思ってましたね。その後行ったインターン先がターニングポイントで、周りが大学生や院生ばかりで、実質高校3年の自分は礼儀も作業感も分からない。そこからちゃんと学ぼうという方向性へとシフトしました。

ーー就職志望が進学希望へと移ったんですね。きっかけは覚えていますか?

当時、某ゲーム会社の社員さんから自身の作品に対してアドバイスをいただく機会があったのですが、かな〜り手痛く言われまして(笑)。
とにかく自身の技量不足を感じましたね。独学ではなくてきちんと形式的に学ばないと、という感じで、芸術としての正しい知識や見識を深めようと思いました。美大に行こうと決めたのは4年生の秋頃です。

ーーそれで武蔵美を選んだ、というわけですね。

武蔵野美術大学|出典:https://www.musabi.ac.jp/outline/about/

旧帝大や工芸繊維大なども思いつきはしたものの、成績の関係から少し躊躇しました。その点美大だったら自身の制作物で勝負できます。もともと多摩美と武蔵美は両方志望していましたが、津山高専の知り合いが武蔵美に行ったと聞いたので、最終的に5年の8月頃にそちらを選びました。
知っている人が居るというのは、小さいことかもしれませんが個人的には思ったより大きなきっかけになりましたね。

高専卒というバックボーンを持ってること

ーー美大に入ってどのようなことをやられていますか?

映像学科に所属してます。映像系と一言にいっても、手描きのアニメーションから映画や写真、メディアアートなどジャンルはさまざまで、映像を用いて表現をする方法を学ぶ科ですね。その中でも私は主にCGをやってます。

ーー高専との違いや共通点はどのようなところにありますか?

工学との違いとして、物事の解釈の次元から正解が存在しないのでギャップに苦戦する日々です。一方で、ものをつくるという根底は変わらないのかなと。それは確かな芯として持ってます。

ーー正解が存在しない分野だと、自身の人生経験から表現していくイメージがありますね。

その通りです。工学と芸術の両方の分野を知っているからこそ見えるもの・表現できるものがあると思います。課題で与えられたのは同じテーマなのに、みんながみんな全く違うアウトプットが出てくるのは面白いですね。

ーー個人的な興味ですが、この発想は!?となった作品はありましたか?

それはもう毎日関心と尊敬のオンパレードです(笑)。
直近では、諸行無常の「無常」がテーマの作品制作で、60cmくらいの大きな金魚鉢に点滴を垂らす、という作品を作った人がいて。発想の豊さに驚いたのと、その金魚鉢どこで買ってきたんだと(笑)。

現役生に向けて

ーー現役生に向けて、何か伝えたいことを教えてください。

高専の閉鎖的な環境で視野を狭くしてしまうのはとても勿体無いので、イベントなどを通じて年齢や経歴、分野不問で様々な人と交流することでアンテナを広げて欲しいですね。その中で、例え全く違った分野だとしても自分がやりたいことを見つけ、それを追求することが出来ればもっと楽しい生活を送ることができると考えています。
あと、どんなに小さい物であっても絶対に制作物は残しおいた方がいいです。ホームページでも文章でも絵でも音楽でも何かしらの物を作ってる高専生ってそれなりに居ると思うので、とにかくアウトプットして欲しいなと。
自分の作ってきたモノは絶対に裏切らないので。

***

インタビューを終えて

一見すると全く関係のない分野だと思われがちな芸術と工学にも、ものづくりという共通点があるというお話は大変興味深かったです。
高専という枠組みにとらわれずに自分の見つめ直しつつ、工学というバックボーンは嘘をつかないという経験談は、私自身学びの多いインタビューとなりました。

高専生の進路について
ここで注意して欲しいのは、高専生らしい進路が凄くないわけではない、ということです。
自身の進路について、自分自身だけでなく自分を見てくれている周りの方々ともご一緒に見つめ直して欲しいと思っています。

その身一つで地元を飛び出して就職された方や

地元企業に就職されて第一線で活躍される方など、

進路は人の数だけあると思います。

この記事が「〇〇しちゃダメかも」という先入観を壊す一助になれれば幸いです。


高専Sparkleでは今後も、就職、進学のための情報収集や判断の助けになる情報をお届けしていきます。

見かけたら、ぜひ寄っていってくださいね!

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