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革の開発記録-1

こんにちは!
拵(コシラエ)の作家COMこと小室です。

今の茶芯牛革の在庫がそろそろなくなってしまうこともあり
以前からやりたかったことを追求するために
出店・製作の合間を縫ってオリジナルの革を開発することにしました。

今回はその開発記録をnoteに書き残そうと思います。

革について

まずはじめに自分が使う革についてのお話を少しだけさせてください。
拵では、革の元となる原皮からこだわり、ものつくりをしています。

よく海外の皮革がいいという声もありますが
そもそも生き物からいただいているものですし
私は日本の皮革も好きでそれぞれは一つの特徴だと思っています。

そして食肉の副産物として流通される皮革ですが
どこの地域・国のかわからないものより
自分がわかるものがいいなという思いもあり
拵では原皮も厳選した日本(内地)のものにしています。
※ この辺りはまた書かせてください。

ただ、「日本」といっても範囲が広いので
せっかくなら自分に所縁のある地域の牛を使用させていただき
品種含めて厳選したものを使わせていただいています。

これが厳選した染める前の日本(内地)の革です。
表情も良く、綺麗です!!!

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オリジナル染料について

ものつくりを本格的にやればやるほど
その歴史や背景など、たくさんのことが気になっていきました。

例えば、自分の使わせてもらっている革は
植物タンニンの中でも何の植物を使っているのか。
そして染料は何を原材料に使っているのか。
オイルは何を使っているのか。
などなど...
(もはや病気ですね。笑) #気になる病

そんな中、鉄を用いた伝統的な染色方法(鉄媒染)があることを知り
今回開発することになる「黒鉄染め」に辿り着きました。

歴史を調べてみると古くは刀鍛冶・鎧兜をはじめ、木工など
本当に様々な場面で黒・灰色を表現する為に使用されていた方法でした。

拵のコンセプトである「和」「旅」「侘び寂び」とも非常に相性が良く
更に深いものつくりが出来ると考え、この染色方法を追求することに決めました。

何より、染料から手作りにすることで
この染料の原材料に何を使っているのか
そんなところまで自分で納得したものをだけを使用することができるので
気になる病の自分にはとても相性が良かったです。笑

そしてこの昔ながらの伝統技術でもある鉄媒染にアレンジを加え
オリジナル染料を開発がスタートしました。

実験と検証

まずはじめに染料の濃度・入れる材料を調整・検証すべく
端切れを染めて反応を確かめました。

分量・比率を変えるとどのような色味になるのか。
何をすれば「黒」になるのか。
何回塗れば「黒」になるのか。
革の表情・匂いはどうか。
ちゃんと色止めは出来ているか。
堅牢度や耐久性はちゃんとあるか。
どのように経年変化をしていくのか,..など

端切れを染める段階で、ある程度の方向性・濃度を定め、検証を繰り返しました。

<端切れを用いた検証>
濃度ややり方を塗る部分によって変更し、検証しました。

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このように検証を繰り返し記録を取ることで
いい表情をした「黒」を端切れでは拵えることが出来ました。

材料等は企業秘密とさせていただきますが
この染料作りの検証は科学実験のようで楽しく
正直、テンションが上がりました!!笑

染料作り

先程の端切れで検証した濃度・材料を元に
本格的な染料作りがはじまります。

端切れを染めるだけなら少しの量で良かった染料も
半裁(※)を染めるとなると大量に必要になってきます。
※牛は1頭を半分にした半裁という単位で購入します

途中で足りなくなった!なんてことになったら大事故なので
半裁4枚分(2頭分)を染めることが出来る量の染料を作っていきます。

<製造中の染料>

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※写真ビンはどちらも8Lのものです。

いい感じに仕上がってきましたが
このままだと余計な成分もたくさん入っているので
続いては漉して不純物を取り除いていきます。

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拵_黒鉄染料

本当に綺麗な黒の染料が出来上がりました!!!

あとは「老舗店の秘伝のたれ」のように
継ぎ足してこの染料を育てていきます。

あとがき

すこし話が長くなってしまったので、まずはここまで。
次回は実際にこの染料を使い染めた時のことなどを書き残そうと思います。

長文となってしまいましたが
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

<プロフィール>
COM(小室 祐平)
ものづくりが好きで日本の伝統工芸など
職人をサポートする会社に就職するも
革の歴史・魅力を知り、脱サラをし拵を創業

「和」「旅」「侘び寂び」をテーマに
アンティーク・ヴィンテージ商品のような
長く使うことで味わいが増すような
大量生産・消費社会では体験出来ない作品を製作

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