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【必要な仕事】

先月の始めのこと。
ある老人保健施設老健から入居の問い合わせがあった。外傷性くも膜下出血で入院手術後、左半身の麻痺のリハビリ目的で老健に入所された70代の男性の受け入れの相談だった。

とても意欲的にリハビリをされるその男性は老健に入所してからも毎日懸命にリハビリに取り組み、みるみる回復されていったそうだ。そして入院中に受けたもともとの要介護度は要介護3だったのが更新後は要支援になる可能性が高いということだった。


要介護度とはその方がどの程度介護を必要とするかを表す指標で、要支援1から始まり要支援2そして要介護1~要介護5までの段階があり、その段階が上がれば受けられる介護サービスの枠が広がる。
一般的に要支援の方は老健の入所を継続することが難しく、要支援の判定を受けた時点もしくは要支援になると予想された時に退所を検討することが多い。

今回もそのケースで要支援になることが予想されているため、次の入居先としてうちに相談があった。
話を伺うと状態はある程度回復していたが、その方の左半身にはまだ麻痺が残っていた。その方もそれは分かっていて老健を退所してもリハビリがしたいと望んでおられるようだった。

うちの入居施設では専門のリハビリを行ってはいなかったが、デイサービスやデイケアなどを利用することで歩行訓練などのリハビリを受けることができた。
うちのデイサービスにも作業療法士や柔道整復師といったリハビリ専門のスタッフがいるため、その方にあった個別のリハビリ計画を実施することが可能だった。

仮に要支援2だとしたら毎日の利用はできないが週2回ほどデイサービスを利用することが出来る。
週2回はデイサービス、週2回ほど家族と外出をして、あとは施設で過ごす、そんな生活をご本人は思い描いており、入居する方向で準備を進めていました。


しかし、要介護度は僕らが想定しているよりも低い『要支援1』の判定だった。


介護度が低いのはそれだけ自立度が高いということで本来は喜ばしいことだが、ただ利用できる支援サービスは限定される。
要支援2では利用できたデイサービスも要支援1では利用することが難しい。
※厳密に言うと一部利用できたりするが、かなり限定的な利用になる

ご本人は専門的なリハビリを希望されていた。だけどご本人だけで満足いくリハビリはできないし、うちの入居施設ではそういうったリハビリを行っていなかった。
入居を白紙に戻すか検討していた時、担当のケアマネージャーさんが訪問看護によるリハビリを行ってはどうか?と提案してくれた。

訪問看護の事業所には看護師さんだけではなく、理学療法士さんや作業療法士さんといったリハビリの専門職も在籍していることもあり、専門的なリハビリを行うことが可能だった。

今回も訪問看護に依頼をして週2回ほど理学療法士さんに訪問してもらい、下肢運動などを行うことになった。

3月1日に無事入居されたその入居者は、意欲的にリハビリを行っており今も元気に暮らしている。


さて、4月1日から介護報酬が改定される。
訪問看護事業所では以下のような報酬改定が行われる。

理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の訪問の場合

訪問看護事業所における前年4月から当該年の3月までの期間の理学療法士等による訪問回数が看護職員による訪問回数を超えている場合は、当該年度の理学療法士等の訪問看護費から8単位を減算する

簡単に言うと、看護師の訪問回数よりもリハビリ専門職の訪問回数が多かったら基本報酬を減算しろということだ。
うちの会社には訪問看護の事業所がないためこの条件が厳しのかどうかの判断はできない。もしかしたらほとんどの訪問看護の事業所が当てはまらないのかもしれない。

ただ、この改定を目にした訪問看護の事業所で働くリハビリ専門職の方々は決して気分の良いものではなかったと思う。中には自分たちの仕事の意義や意味について悩まれている方もいたかもしれない。

今回の改定は訪問看護だけではなく訪問介護の基本報酬も下がった。
うちの会社には訪問介護の事業所があり、所属しているスタッフたちはやっぱり嘆いていた。
「必要な仕事じゃないのかな」と言ってるスタッフもいた。


介護報酬は国が定めている。どのように決めているかは詳しくは分からないけど、いろんな視点や様々な有識者の意見を聞いて何度も何度も検討を重ねて決定していることだろう。さらに限られた財源の中でやりくりしないといけない。全てのサービスが満足いく報酬を与えることは難しいことは理解できる。

だから今回の改定内容に関して文句を言うつもりはない。
ただ、今回の改定で自分たちが行っている仕事に対して悩んだり必要性を疑問に思った方がいるとしたら僕は声を大にして言いたい。


あなたたちがいてくれて本当に助かっています!いつもありがとうございます!

と。


今回うちに入居された方は訪問看護の事業所がリハビリに来てくれなかったらおそらくうちに入居はされなかった。
今は週2回のリハビリだけではなく、その際に出された宿題を毎日楽しそうにこなしている。心なしか入居時よりも歩行が安定しているように思える。先日も「左手でトイレットペーパーが使えた!」と喜んでいた。

当たり前だけど、僕が代わりにリハビリの仕事をすることはできない。
もちろんリハビリだけではなくヘルパーの仕事だってできないし、介護に関わる仕事だけではなく世の中にある多くの仕事を僕はできない。
でもその逆もある。僕の仕事が出来ない人もたくさんいると思う。

だから、どんな仕事だって必要なんだと思う。
あなたの仕事で笑顔になっている人はたくさんいる!そしてあなたが仕事をしてくれているから僕も自分の仕事に集中できているのは間違いない。


本当にいつもありがとう。
これからも頑張っていきましょう。


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