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待ち時間じゃなくて聞く時間

運転している時に対向車がうちのデイサービスの送迎車だったので思いっきり手を振ったら全然別のデイサービスの車だったので瞬時に車内でダイナミックに運動するヤツに切り替えて事なきを得ました。#めちゃくちゃ訝しげな顔をしていた

こんにちは、コッシーです。


さて、先日ある入居者の病院受診に同行しました。

入居者はTさんという90代男性の方で、今年の9月頃にご夫婦で入居されました。とっても仲の良いご夫婦で「家内には僕がいないとダメだから」とTさんは言われますが、娘さん曰く「実は父の方が母にベッタリなんです。母がいないと寂しいんだと思います(笑)」っていうことらしいので、相思相愛(やや旦那さんが強め)のとても素敵な夫婦なんだと思います。


先日、そんなTさんを病院にお連れしました。予約の時間は11時半でしたがその前に採血があったので11時頃に病院に行きました。Tさんが受診したのは市内でも大きいと言われる総合病院でその日もかなり多くの患者さんがいました。

採血室にもたくさんの患者さんが待っていましたが、特に待たされることもなくスムーズに採血してもらえました。

「今日は結構早く帰れるかもしれませんね。お昼ご飯に間に合っちゃうかもしれませんね(笑)」

なんて軽口を叩くほど余裕があったのはこの時だけでした。本当の地獄はこれから始まるのでした。


採血が終わり「第5診察室の前でお待ちください」と言われ番号札をもらいました。診察室の前に行くとここでもたくさんの患者さんが待っていました。

「お手洗いに行きたい」とTさんが言われました。時計を見ると11時半より少し前でしたので、「もうすぐ診察かもしれませんので早めに戻ってきてくださいね」と伝えました。

Tさんがトイレに行っている間に、待合室に設置されている診察中の患者さんの番号が表示される電光掲示板を確認しました。当然ながら僕らの番号はまだ表示されておらず、順番待ちが3番目くらいまで表示されていましたがそこにも僕らの番号はありませんでした。

病院受診というのは時間通り診てもらえないのが当たり前ですから、少し待つことを覚悟したその時でした。電光掲示板の下の方に表示されている言葉を発見しました。

【第5診察室 120分待ち】

最初は言葉の意味がよく分かりませんでした。120分つまり2時間です。某夢の国のアトラクションかと思うくらいの待ち時間です。

驚いた僕は電光掲示板を2度見3度見しましたが、表示されている時間が短縮されることはなく【第5診察室 120分待ち】という文字は威風堂々と鎮座していました。

それでもにわかには信じがたく、もしかしたら予約していない人達の待ち時間が120分なのか…いやでもそれなら受付時に言えば良いか…と真実が分からずヤキモキしているところにTさんがトイレから戻ってきました。

「Tさん、もしかしたらかなり待ち時間があるかもしれません。看護師さんに確認してみますね。」

そうTさんに伝えて近くにいた看護師さんに確認すると、どうやらある患者さんで緊急事態があったとのことで、診察時間がかなりズレ込んでいるみたいでした。つまり待ち時間は120分で間違いありませんでした。

受診日を変更することも出来ましたが、「せっかく来たんだから」とTさんは待つことを選択されました。入居者が「待つ」と言うからには僕に選択肢はありません。Tさんと一緒に待合のソファに腰かけて診察を待つことになりました。


自分1人で2時間を待つのであれば、スマホを触ったりしてる間に時が経ちますが、Tさんが隣で待っているのでさすがにスマホをポチポチするわけにはいかず鬼の形相でただただジッと待っていました。#口は真一文字

そんな僕を不憫に思ったのかTさんが「忙しいのに悪かったねぇ」と優しく声をかけてくれました。#入居者に気を使わせるなよ#普通はお前が話しかけるんだぞ

そう言えばTさんが入居されてまだ日も浅く、Tさんの事をあまり深く知りません。いい機会だと思いいろいろな話を聞かせてもらいました。


Tさんが生まれて間もなく父親はお亡くなりなられたとのことで、母親が駄菓子屋を経営して女手一つで大学まで出してくれたそうです。奥さんは良い家柄の娘さんだったとのことで、奥さんの両親から結婚は大反対されたとのことでした。

しかし何度断られても諦めず頭を下げ続けようやく結婚を認めてもらえたと目尻を下げてお話されていました。とても夫婦仲が良い理由の一端を知る事ができたように思えます。

他にも次女さんを頑張って留学させた話や長女さんの旦那さんが東大出身という話など本当にいろいろな話を聞かせてくれました。

90年の人生です。たった2時間で語り尽くせるはずがなく、気付いたら時計は予約時間の120分後の13時半を過ぎようとしていました。


「Tさん、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。そろそろ診察時間になりますので続きはまたの機会に聞かせてください」

残念でしたがTさんにはお話を中断して診察の順番が来るのを待ってもらいました。

電光掲示板に表示されている番号を確認しました。僕らの番号はまだ表示されていませんでした。また少しおしたのかなと思ったその時でした。電光掲示板の下の方に表示されていた【第5診察室 120分待ち】という文字が【第5診察室 180分待ち】に切り替わりました。

某夢の国に人気アトラクションも顔負けの3時間コースでした。Tさんのお話が再開され、より深くTさんの人となりを知る事が出来たのでした。


病院同行の待ち時間というのは入居者とゆっくりじっくりお話が出来るとても良い機会ですが、さすがに180分ともなるとそこらの長編映画よりも長くなるわけで、1回の上映時間はせめて2時間以内にして欲しいなと切に願った1日でした。


現場からは以上です。それではまた。

コッシー

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