Quad Cortexと組む最小構成ボード
先日、ヨーロッパツアーから本格的に使用しているQuad Cortex(以下、QC)のボードをポストしました。
画像で伝わらないところもあり、また情報収集に苦労したところもあるので「何を考えてどう組んだか」まとめておきます。誰かの何かの参考になれば。
【部材一覧】
何使ったかさえ分かればいい人向けに。
【部材解説】
■ ボード
TEMPLE AUDIO の TEMPLE BOARD SOLO 18を使用。
見た目の割に類似製品の中でも軽く、拡張性が高いです。サイズアップ版のDUO 24で組んでいる例をよく見るけど(上の動画とか)、嵩張りそうだったのでSOLO 18に決定。 その他候補としてWARWICKのTRES3.0と最後まで迷うも、TEMPLE BOARD独自のエフェクター固定方法が興味を引いた。 オプションの電源ケーブル、パネルマウントのMIDIコネクタ、側面コネクタ用ブラケットも併せて入手。
■ 電源ボックス
部品をDIGIKEYで調達し自作。具体的な部材は表中を参照のこと。
前出のTEMPLE AUDIOオプション電源ケーブルは出力の形状がIEC C13の形状なので、何かしら変換が必要に。選択肢は2つあって
IEC C14で受けれるCIOKS DC 7 のような電源を用意する
IEC C14で受け、一般的なコンセントに変換する電源タップを用意する
2. の方針で自作することに。ちなみに電源タップの扱いなので電気工事士の資格とか、そういうのは持ってなくても作ってOKです。こだわりポイントとしてパワーアンプ用のコンセント(青枠)だけプラグ方向の都合で90度回転させたレイアウト。こんな珍妙なもの市販品じゃ確実に存在しないけど、自作なので自由にやる。
■ パッチケーブル
長さジャストで作りたい/配線を引き回したいこともあり自作。
プラグ:HKM L111
ボード上部にほぼスペースがないので、この面に配置する部品はとにかく低背(飛び出しが小さい)であることが必須。不慣れなソルダレスは避けつつ最小クラスのプラグを探してこちらに決定。構造がシンプルゆえ頑丈そうで、しかも割安。
ケーブル:MOGAMI 2314
プラグが直径3mm~4mmのケーブルにのみ対応となかなかの厳格仕様。使えるケーブルは自ずと限られていて、迷わず好きなMOGAMIから。
■ MIDIケーブル
Free The Tone CM-3510 + REAN NYS322Gの組み合わせで結線。
Free The ToneのMIDIケーブルをカットして使用。反対側は予備としてキープしていたREANのMIDIプラグをはんだ付け。配線をわざわざ一度カットするのは長さ調整のほか、後述するグロメットを用いた配線のため。
■ XLRプラグ
ここがまだ決まっておらず。当初あるメーカーの低背プラグ(画像)を買ったものの思いのほか飛び出してしまい、結局使っていない状態。妥協してもいいのだけど、ここまで拘ってきたのに今更手を抜くのも…ということで鋭意探索中。
ちなみに背低XLRで調べていたらこんなものを見つけました。
https://www.hibino-intersound.co.jp/dpa_microphones/2666.html
マイク向けケーブル。ほぼツラツラ。。。
これの電線を切って使おうと思ったのですが、1本¥15,000の部品単品売りなし。先端についている部品のためだけにこれを2本買うのも流石にナンセンスなのでやめました。
■ QC用電源ケーブル/ACアダプタ
一部自作しました。純正ACアダプタでも特に不満はないのですが、それを予備にして組み込み用に別途調達しようという考え。
Quad Cortexは電源に12V3A(36W)を要求するのですが、USBの急速充電規格USB PBがこれを満たしているので転用できます。ただ一口にUSB PDといっても出力電圧が数パターンあり、「ケーブル」と「ACアダプタ」両方とも対応するものを用意することが必須。ケーブル側の種類(対応電圧)をACアダプタ側で認識して、必要な電流電圧をコンセントから取り出す仕組みらしい。
給電ケーブル : 自作
オヤイデ電気から部材を一式調達して自作。
片側がTYPE-C USB PBプラグ、他方がφ2.1mmプラグになっていて、それぞれはんだ付けして完了。USB PDプラグは電圧に応じて複数種類あるので注意して”12V”を選ぶこと。オヤイデ電気のHPがかなり親切で助かりました。
https://oyaideshop.blogspot.com/2023/07/diyusb-pd.html
ACアダプタ:CIO NovaPort SOLO 45W
要求条件として12V出力対応、出力36W以上、100-240V対応(海外で使える)。上記の条件で相当絞られて、その中から一番小サイズであったことが決め手。USB PDでも12V対応していないACアダプタが結構あります。
■ パワーアンプ用電源ケーブル
Amazonにて部材調達して自作。
パワーアンプも電源ボックスから給電したいので、ケーブルを真下に流してボードの長穴に落とす必要あり。デフォルトで反対側が電線切りっぱなし、何も付いていないのでコンセントプラグも併せて入手。ここの結線はネジ締めだけ。
■ スピーカーケーブル
ORANGE CA041 + NEUTRIK NP2RX-BAGで作成。
スピーカーケーブルはどうしてもある程度太さが必要なもの(細過ぎると燃える)なのでケーブル/プラグ共に一般的なものを使っていて、パワーアンプの電源と同じ長穴を通してボード裏へ。ORANGEのスピーカーケーブルは単純に今まで使っていたからで、改めて長めのを買って切って使用。余った分はボード~キャビネット間用に別途作り替えて使用中。
■ 側面I/Oコネクタ類
Neutrik D-style タイプに準拠しているコネクタを、TEMPLE BOARDオプションのブラケットで各面3個まで取り付け可能。I/O類をまとめています。自分は基本ステージ上手にいるのでボード向かって右手にインプット、左手にアウトプット類をまとめるレイアウト。
フォン フィードスルーコネクタ:ノーブランド品
ギターINとパワーアンプOUTに使用していて、両側にシールドが刺せる形状。何気にロックが付いてます。こういう部品があることは知っていたけどいざ探すとなかなか見つからなくて。最終的に怖いな怖いな(cv : 稲川淳二)と思いつつもAliExpressで入手。いまのところ特に恐怖体験なし。お分かりいただけない。
USB3.0コネクタ:ノーブランド品
たまたま秋葉原で見つけて使い道も考えず購入。完全一期一会系で800円切るのは安過ぎた。フットスイッチがUSB接続なので入力用として使用中。
MIDIコネクタ:TEMPLE AUDIO DESIGN MIDI 5Pin DIN
USBケーブルは性質上5m以上になると誤動作を起こす可能性が高いです。そのためボード~フットスイッチ間の距離が遠くなる場合はボードの裏配線を1か所差し替えて、このMIDI端子からMIDIケーブルでフットスイッチの近くまで引き回し、予備のMIDI Expanderに刺す想定。
XLRコネクタ:NEUTRIK NA3MDF
ラインアウト予定地。現状のリニア中央新幹線並に無用の長物です。
■ グロメット
Amazonでノーブランド品を購入。正直レイアウトはギチギチなので、ケーブルをどこにどう通すかは少し考えました。折角ケーブルが細く、TEMPLE BOARDにはこれを通せるサイズのパンチ穴が無数にあるので最終的にグロメット(ゴム部品)を使って通すことに。
金属板の穴に電線通しただけだと負荷がかかって断線のリスクあり。なのでここは抜からない方がいいところです。QC電源にイン/アウト、MIDIに至るまで通せるケーブルはすべて直下の穴に通したので見た目はかなりスッキリ。
ちなみにケーブル両端のプラグを取り付ける前に線を通しておかないと後々通せなくなるので、事前にレイアウトは練っておく必要があります。
■ アクリルカバー
アクリルオンラインにてオーダー注文。
画面むき出しはどこか落ち着かず、国内ではアクリルオンラインでカバーを作っている例が多かったので制作。ただ一点、画面保護側をテープで固定しパカパカ蓋にしている方が多いのですが、それがどうも好きになれなくて。情報収集をしていく中でマグネット着脱と思われるカバーを作っている海外有志を発見。
たまたま手元に磁石(厚み2mm, 直径5mm)があったので、参考にしつつ元データを変更/追加設計、取り付けられるよう蓋を制作。本体側の取り付けは幅2mmの両面テープで、磁石は瞬間接着剤を爪楊枝で点塗り。
ちなみにアクリルオンライン、一度制作したデータを基にほかの人が注文できる素晴らしいシステムがあるのでデータを置いておきます。ありがとう先駆者。
液晶フタ https://acrylic-online.com/drawDetail/?zid=87f6c3dc-ffdf-11ee-8d21-fa163e5e97f9
上段カバー https://acrylic-online.com/drawDetail/?zid=7bad9f9b-ffdf-11ee-8d21-fa163e5e97f9
下段カバー https://acrylic-online.com/drawDetail/?zid=6eba0a8a-ffdf-11ee-8d21-fa163e5e97f9
【取付機器】
■ Neural DSP Quad Cortex
発売当初は些か他人事でしたが、その後のアップデートで相当使い勝手が良くなったので購入。このサイズでキャプチャ機能まで積んでいるのは驚きで、Wi-Fi接続してクラウドにバックアップしたり、逆にデータを引っ張ってこれるのはめちゃ未来感じました。音はかなりワイドレンジな印象もEQで難なく調整可能。今後のアップデートも楽しみ。
■ SEYMOUR DUNCAN POWERSTAGE170
SBTWはイヤーモニター使ってないので中音が必要。小型かつ十分な音量が得られるパワーアンプとして、かれこれ5年以上使ってます。音量足りなかったことがない。アンプシミュレータとの組み合わせだと個人的にベストで、国内だとシリーズのPOWERSTAGE 200が買えます。音は多分一緒だと思う。
■ KEITH MCMILLEN MIDI Expander
併用しているフットスイッチSoftstep2を使うために裏面に入れています。
役割は以下の2つ。
USB端子で受けた信号をMIDI端子に変換する
Softstep2に電力供給する
Softstep2は入出力がUSB端子しかないぶっ飛んだフットスイッチなので、これがどうしても必要に。なんでそんな面倒なもの使うのかというと
ポケットに入るぐらい薄い
すべてのスイッチが圧力センサー、個別にEXPペダルとして設定できる
1ボタン押しで複数メッセージを同時送信できる
LEDの点灯条件/点灯、点滅パターンまで決められる
セットリストとしてボタンレイアウトをページ化できる etc…
その他にも有り余るメリットがあるので使っています。
ちなみに好き過ぎて予備含め3枚所有。
あとQCをステージ前方に置くと踏まれてしまうかもなので…強度が高いフットスイッチなら前に置いておいてもいいかなと。ホントの最悪ケースとしてフットスイッチが壊れてもQC本体を踏めば良い、というのも冗長性あって◎
これまでMIDI Expander周りのケーブルが散らかってて嫌だったんですよ。今回裏配線で纏めたので、ボード側面からUSBケーブル1本出せばいいだけに。これは凄く楽になりました。
【製作のモチベーション】
そもそもなぜQuad Cortexをベースに諸々考え始めたかというと、海外ツアー時の飛行機運搬に対応するため。飛行機に荷物載せるには厳格な重量/サイズ制限があるので、ラック機器だとどうしても割を食います。他方で音質/エフェクト面で妥協はしたくないし、うまく両立できないだろうか?がスタート地点。今後はXLRのコネクタをさっさと決めて、もう少し裏配線を丁寧に引き回す予定。
とはいえ、何も飛行機使うようなツアーの為だけに焦点を当てたつもりはなくて。結果として場所を問わず「音良く」「軽く」「操作性よく」「トラブルなく」「転換スピード早く」…理想的な状態に辿り着けた。
次に鳴らすのは5/9(木)のワンマンライブ(チケットフリー)
ぜひその耳で音を確かめに来てください!
【予約が必要です!】https://t.livepocket.jp/e/sbtwfree
最後まで読んでいただきありがとうございます!
筆者情報 : Kosuke
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