東京都自転車活用推進計画(素案)への意見

3月5日までの募集に合わせて作成・提出した、東京都自転車推進計画(素案)への意見です。募集要項に則り、次のリンク先のページにある素案(PDF)の各項目に対してコメントする形式になっています。

p.1

その一方、都内の全ての交通事故に占める自転車関連事故の割合は3割を超え、全国平均の約2割と比べて高い状況となっている

全交通事故中の自転車関連事故の割合の比較には、自転車利用度に関する記述を併記すべきです。

変更例:「その一方、都内では自転車の利用度の高さもあり、全ての交通事故に占める自転車関連事故の割合は3割を超え、全国平均の約2割と比べて高い状況となっている」。

こうしなければ、自転車利用度が低いために自転車事故の割合が低くなっている場合と、自転車の利用が盛んで、かつ安全である場合の区別がつきません。この区別がつかない比較では、計画の方向性を検討する材料になりません。

p.1

全ての交通事故に占める自転車関連事故の割合は3割を超え […] となっている。今後ますます自転車利用者が増加していく中で、より安全で快適な自転車環境の創出が求められている

この自転車関連事故の記述には、相手当事者の割合を書き加えるべきです(p.32の「東京都内の自転車関連事故の発生状況」と対応させる)。

変更例:「全ての交通事故に占める自転車関連事故の割合は3割を超え […] となっている。その相手は約75%が自動車であり、今後ますます自転車利用者が増加していく中で、より安全で快適な自転車環境の創出が求められている」。

こうしなければ、都内での自転車利用における脅威が何であり、「より安全で快適な自転車利用環境の創出」のために何が必要であるかが明確になりません。

p.2

自転車は生活に密着した交通手段であるだけでなく、環境にやさしく、健康増進に役立ち、公共交通の補完的な利用も期待される

「自転車活用推進法」の基本理念(p.1で記述されています)にある「自動車への依存の程度を低減すること」を、本計画の基本理念にも明記すべきです。

変更例:「自転車は生活に密着した交通手段であるだけでなく、環境にやさしく、健康増進に役立ち、公共交通の補完や自動車依存の低減も期待される」。

交通事故、地球温暖化、大気汚染、生活習慣病、スプロール化・・・数々の問題の原因となっている自動車になるべく依存しないようにすることは、いまや世界的なテーマです。先進諸国の都市における自転車政策の多くは、自動車問題を背景に、モビリティーシフトの取り組みの一環として進められています。東京の自転車政策もまた、自動車依存の低減という姿勢を冒頭から明確に示す必要があるのではないでしょうか(p.11の「目指すべき将来像」と呼応させる)。

p.2

自転車を交通体系の中で重要な役割を果たす交通手段の一つとし、自転車を安全・安心して利用でき、誰もが気軽に楽しめる環境づくりを進めていく

「安全・安心して」という言い回しは読みにくいので変えた方がよいと思います。「誰もが」も手前に移してはいかがでしょうか。

変更例:「自転車を交通体系の中で重要な役割を果たす交通手段の一つとし、誰もが自転車を安全に・安心して利用でき、気軽に楽しめる環境づくりを進めていく」。

自転車をどう位置づけるかが明確で素晴らしいと感じました。

p.2

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けて自転車活用を推進するとともに、本計画と関連を有する各種計画との整合を図るため、長期的な展望を踏まえつつ、計画期間は2020年度までとする

都の自転車活用計画はオリンピック・パラリンピックを契機としつつ、あくまで独立したものとして記述されるべきです。

変更例:「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に合わせて自転車活用を推進するとともに、本計画と関連を有する各種計画との整合を図るため、長期的な展望を踏まえつつ、計画期間は2020年度までとする」。

p.21

(5)東京都内の道路幅員の状況

この見出しは本文の前半しか代表できていませんので、改めるべきです。

変更例:「まちづくりと連携した総合的な取組の状況」。

p.21

東京都内の道路は、幅員5.5m未満の道路が約6割となっており、狭小道路が多い。

狭小道路の割合だけでなく、そうした道路における自動車の抜け道利用や速度超過などの統計データを合わせて記載すべきです。

生活道路や細街路が安心・安全な空間であることは、歩行者にとっても自転車利用者にとっても重要です。また、幹線道路に自転車道が殆ど整備されていない東京において、狭小道路の静穏化は自転車利用の安全性を早期に向上させるための大切な一手です。このため、ここには自動車の抜け道利用や速度超過などの統計データを明記することが不可欠だと考えられます。

p.26

図3-21 東日本大震災後に利用機会が増えた交通手段(関東、関西、宮城、広島)

関東のみ、あるいは東京のみのデータを記載することが望ましいと思います。

変化が少ないと思われる関西や広島は除外するべきではないでしょうか。

p.31

自転車関連事故が全事故に占める割合は、2017年で33%であり、全国平均の19%と比べて高い傾向にある

全交通事故中の自転車関連事故の割合の比較には、自転車利用度に関する記述を併記すべきです(p.1と同様)。

変更例:「自転車利用の盛んな東京では、自転車関連事故が全事故に占める割合が2017年で33%と、全国平均の19%に比べて高い傾向にある」。

こうしなければ、自転車利用度が低いために自転車事故の割合が低くなっている場合と、自転車の利用が盛んで、かつ安全である場合の区別がつきません。この区別がつかない比較では、計画の方向性を検討する材料になりません。

p.31

〈課題〉
・ルール・マナーの周知・啓発等による自転車事故の減少

自転車側のルール遵守状況ばかりが都内の自転車事故の多さの原因であると決めつけるような課題設定は誤りであり、安全な通行環境整備と自動車ドライバーへのルール周知・啓発を含むものに改める必要があります。

変更例:「安全な自転車通行環境の整備および自転車利用者・自動車ドライバーを対象としたルールの周知・啓発等による自転車事故の減少」。

前述のように、自転車利用度を考慮しない自転車事故の割合の比較から課題を設定することは誤りです。p.34の図3-32が示すように、2017年の都内の自転車事故は自転車側の「違反なし」率が54.2%です。このことからも、自転車側のルール遵守だけを事故の原因であるかのように扱う課題設定が誤りであることは明らかです。また、「マナー」という法律との関係の曖昧な語の使用は廃すべきです(以下同様)。

p.32

自転車関連事故の相手当事者は対乗用車が最も多く、次いで対貨物車となっており、自動車との事故の割合が高い。
自転車関連事故の減少に向けたドライバーへの注意喚起やルールの周知

相手側当事者の殆どが自動車であるという事実を明示し、それに対応した課題を設定している重要な箇所だと思います。

当たり前のことのようですが、こうしたデータを示している自転車政策関係の行政文書はまだまだ少ないように感じます。

p.32

自転車乗用中の死亡事故の損傷部位では頭部が約8割を占めており

自転車乗車中の頭部損傷事故におけるヘルメット着用の有無を付記し、歩行中の死亡事故の主要損傷部位も参考として示すべきです。

一般的な自転車用ヘルメットは転倒を想定した器具であり、対自動車事故における効果は限定的です。また、歩行中の死亡事故76件中45件(約59%)も主要損傷部位は頭部です(2017年警視庁統計)。人命を守るためには弱者に対策を転嫁するのではなく自動車の脅威を取り除く必要がある、という統計上の事実を明らかに示すべきです。

p.33

年齢層別の人口千人当たりの自転車事故発生件数は、「高校生以上~19 歳」の層に多く

年齢層別の自転車関連事故の割合の比較には、自転車利用度に関する記述を併記すべきです(地域別の比較と同様)。

変更例:「年齢層別の人口千人当たりの自転車事故発生件数は、通学などでの自転車利用の多い「高校生以上~19 歳」の層に多く」。

こうしなければ、自転車利用度が低い世代であるがゆえに自転車事故が少なくなっている場合と、自転車の利用が盛んな世代で、かつその利用が安全である場合の区別がつきません。この区別がつかない比較では、計画の方向性を検討する材料になりません。

p.34

〈課題〉
・自転車の交通ルール遵守に向け、年齢に応じた安全教育の実施
・未成年の自転車事故防止に向け、学校教育における自転車の交通ルール・マナーの周知

ルール遵守状況のみが若年層に事故が多い理由であると決めつけるような課題設定は誤りであり、安全な通行環境整備を含むものに改める必要があります。

変更例:
・安全な自転車通行環境の整備
・通学路の安全確保の徹底
・自転車の交通ルール遵守に向け、年齢に応じた安全教育の実施
・未成年の自転車事故防止に向け、学校教育における自転車の交通ルールの周知

前述のように、世代ごとの自転車利用度を考慮しない自転車事故件数の比較から課題を設定することは誤りです。また、図3-32が示すように、2017年の都内の自転車事故は自転車側の「違反なし」率が54.2%です。このことからも、自転車側のルール遵守だけを事故の原因であるかのように扱う課題設定が誤りであることは明らかです。通学などで自転車をよく使う世代を事故から守るためにも、通行環境の整備、特に通学路の安全確保が重要です。

p.34

交通違反の防止を図るため、自転車利用者に対するルール遵守の広報、街頭指導、取締り強化

ルール遵守の目的は違反防止ではなく事故防止とするべきであり、広報・指導・取り締まりの対象は自動車ドライバーを含む必要があります。

変更例:「交通事故の防止を図るため、自動車ドライバー・自転車利用者に対するルール遵守の広報、街頭指導、取締りを強化」。

前述のように、2017年の都内の自転車事故は自転車側の「違反なし」率が54.2%です。自転車側のルール遵守だけを事故の原因であるかのように扱う課題設定が誤りであることは明らかで、(相手方の約75%を占める)自動車ドライバーに対する「広報、街頭指導、取締り」を課題に含むことは不可欠です。可能であれば自転車関連事故における自動車ドライバーの違反の内容を合わせて記載して欲しいところです。

p.37

「東京都自転車走行空間整備推進計画」等に基づき、歩行者、自転車、自動車がともに安全で安心して通行できる道路空間を実現するため、交通管理者と連携して、自転車レーンや広い歩道を活用した自転車歩行者道など、地域の道路事情に応じた整備手法により、整備を進める

整備手法に「自転車道」を明記する必要があります。

変更例:「「東京都自転車走行空間整備推進計画」等に基づき、歩行者、自転車利用者、自動車利用者がともに安全に安心して通行できる道路空間を実現するため、交通管理者と連携して、自転車道や自転車レーン、広い歩道を活用した自転車歩行者道など、地域の道路事情に応じた整備手法により、整備を進める」。

オランダやデンマークの都市はもちろん、後発のロンドンやニューヨークと比較しても、東京は自転車道の整備で大きく遅れています。幹線道路には自転車道が必要です。自転車利用が盛んで(p.13)「自転車利用に関して、東京都に期待する取組としては、自転車が走りやすい道路をつくることが最も多い」と分かっている(p.14)にもかかわらず、都はこれに応えることができていないのです。

p.37

「自転車道」の代表写真には、島型バス停の写っているものを使うべきです。

亀戸の京葉道路や三鷹市かえで通りの自転車道で採用されている設計で、バスと自転車利用者との軋轢を低減する効果があります。最近の海外事例としてはロンドンの自転車道での採用も広く知られています。

「自転車レーン」は区部ではなく郊外に適したものであり、代表写真もそうした地域のものを使うべきです。

代表写真として使用されている都道431号線の自転車通行帯は、この道路が違法駐車取り締まりの重点区域に指定されているにもかかわらず路駐車による機能不全が常態化しており、利用率も低いです(狭い歩道での歩行者と自転車の輻輳が解消できていない)。路上駐車需要の高いエリアでは、視覚分離だけの車道上自転車空間が機能しないことは自明です(これは世界中で既に分かっていることです)。この整備形態は路外駐車場が十分にある郊外にマッチしたものであり、代表写真も都道247号線などが適切と考えられます。

「車道混在」形態は生活道路に適したものであり、代表写真もそうした道路のものを使うべきです。

車道混在形態は、オランダやデンマークといった自転車先進国の基準では自転車と自動車の混在が十分に安全といえる静穏な道路において許容されるもので、幹線道路に用いるべきものではありません。ピクトグラムによる車道混在時の目安表示は、生活道路に採用されるべきです。代表写真もそうした道路のものであるべきです。

p.39

自転車の通行位置及び進行方向を示すピクトグラム等は、東京都内においては自転車ナビマーク及び自転車ナビラインを用いる

自転車マークと矢羽根には、最低幅0.75mの国土交通省・警察庁ガイドライン仕様を採用すべきです。また、車道への単体施工は生活道路のような危険性の低い道路にのみ行い、施工位置も道交法と整合したものにすべきです。

変更例:「自転車の通行位置及び進行方向を示すピクトグラム等は、国土交通省・警察庁ガイドラインに記載の仕様を用いる」

東京都の自転車ナビマーク・ナビラインは幅が狭く、現実において自転車が通行するものと想定される範囲を不合理に矮小化して道路利用者に伝えてしまう恐れがあります。このため、新規施工・摩耗に伴う再施工のいずれにおいても、国土交通省・警察庁ガイドライン仕様のピクトグラムを使うことが妥当ではないでしょうか。

また車道へ単体施工する場合の対象は、前述のように、静穏な生活道路などの危険性の低い路線に限るべきです。特に自転車を除く一方通行道路や片側にのみ路側帯が存在する道路では自転車利用者の右側通行が発生し易いと考えられるため、これらの道路の車道部にピクトグラムを優先的に施工することが望ましいと思います。

p.39

生活道路における歩行者・自転車利用者の交通事故防止のために、道路標識の超高輝度化等の整備等の各種交通事故対策を推進する

交通ルール理解の浸透のためにも、法律上の停止義務と合致しない「自転車とまれ」マークを区市町村と連携して整理していくことを明記すべきです。

法律上の停止義務を自転車利用者に対して明確にするためにあるはずの「自転車とまれ」マークが、義務の無い箇所にも施工されている例が都内には無数にあります。自転車利用者がこれに従って停止した場合に後続の自動車等に追突される恐れがある箇所も存在します(西荻南の神明通り~五日市通りのバス路線など)。

法律による指定の無いマークも、あくまで法律の可視化に寄与するために運用されるべきです。法律と矛盾する形でのこれらのマークの濫用は、人命を危険に曝し、法律上の停止義務の理解を妨げる要因にもなり得ます。自転車関連事故のうち最多の類型である出会い頭事故を防止するためにも、都は区市町村と連携して「自転車とまれ」マークを整理し、必要に応じて注意喚起マークなどに置換していくとの方針を明記すべきではないでしょうか。

p.40

路外駐車場や荷さばき用駐車スペースの確保

路外駐車場や荷さばき用駐車スペースの確保は進めて欲しい取り組みの一つですが、道路と路外を行き来する車の危険性も考慮し、自転車専用通行帯(+緩衝帯)と停車帯を共存させるレイアウト(parking-protected bike lane)も活用すべきです。

詳細は後述します。

p.41

自転車通行の安全性を向上させるため、自転車専用通行帯の設置区間では、自転車を含めた周辺の交通実態等や沿道状況等を踏まえ、停車帯の設置又は駐停車禁止の規制の実施を検討する。

「自転車専用通行帯の設置区間」における「停車帯の設置」が駐停車車両を自転車空間の保護に用いるparking-protected bike lane方式を指すのであれば、ドア開けを想定した余白(緩衝帯)を加えて、これを積極的に採用すべきです。

品川駅近くの都道480号線などで部分的に採用されている、自転車専用通行帯の車道中央側に停車帯を配したレイアウトは、parking-protected bike laneの一種とみなすことができます。駐停車車両を自転車空間の保護に用いるこのレイアウトは、オランダやデンマークの都市では既に当たり前のものになっており、またニューヨーク市が2007年頃から取り入れて事故や歩道通行の低減に大きな成果を挙げてきたものです。

駐停車需要を逆手に取ることで相対的に低いコストで物理的分離の自転車空間を生み出すこの手法は、東京の大通りでも活躍するものと思われます。ドア開け・乗降を想定した余白(緩衝帯)を必ず自転車通行帯と停車帯の間に設け、積極的に採用して頂きたいです。余白を含むレイアウトの参考写真を掲載すると分かり易いのではないでしょうか。

p.41

自転車通行の安全性を向上させるため、自転車専用通行帯の設置区間では、自転車を含めた周辺の交通実態等や沿道状況等を踏まえ、停車帯の設置又は駐停車禁止の規制の実施を検討する。

停車であっても自転車で通れなくなってしまうことは同じなので、自転車専用通行帯の設置区間は駐停車禁止とすべきです。

変更例:「自転車通行の安全性を向上させるため、自転車専用通行帯の設置区間では、自転車を含めた周辺の交通実態等や沿道状況等を踏まえ、停車帯の設置又は駐停車禁止の規制を実施する」。

専用通行帯を走る自転車利用者にとって、行く手を塞ぐ車の状態が法律上の「駐車」であるか「停車」であるかは実質的に関係ありません。避けて進もうとした際にドア開けに遭うリスクを考えれば、停車の方が危険な場合もあります。このような理由から、自転車専用通行帯の設置区間は(別個に停車帯が設置されている場合などを除き)駐停車禁止とすべきです。

p.41

自転車の車道通行を妨害する駐車違反に対し、取締りを強化する。また、駐車監視員等が重点的に活動する場所等を定めた「取締り活動ガイドライン」を見直す際には、自転車レーン等の設置路線を重点路線等に指定する。

重点路線でも取り締まりは行き届かず、殆どの路線では駐車しか取り締まれない以上、現実に自転車空間を車が塞がないようにするための方策として(簡易)自転車道の整備を明記すべきです。

「東京都内の違法路上駐車台数の経年変化は少なく」(p.15)、「自転車通行空間に駐車する車両が見られ、通行の支障となっている」(p.16)という実情は、既に重点取り締まり路線に指定されている都道431号線などでも同じです。自転車空間を継続的に路上駐停車から守るには、取り締まりというマンパワーによる対応は現実的ではありません。この問題を真剣に考えるなら、自転車道の必要性を計画に明記しない理由はないはずです(前項の記述に追加できないでしょうか)。

暫定的には駐停車禁止指定と取り締まりで対応しつつ物理的分離を進めていくことが、諸外国の先例からも、最も確実なアプローチであると考えられます。物理的分離の手法には、国内法における自転車道の他に、樹脂ポールによる簡易的な分離(南大沢駅前や日比谷公園脇に前例があります)やプランターによる分離(国立の大学通り)、前出のparking-protected bike laneなどがあります。

p.49

まちづくりに合わせて生活道路における通行区分を明確にするための路側帯のカラー舗装化、自動車通行速度を30km/h 以下に抑制する“ゾーン30”の整備、自転車の停止位置の前出し等、歩行者、自転車、自動車それぞれが安全に通行できる環境を整備する。

ゾーン指定による生活道路の速度規制には事故の際の致死率が跳ね上がる境界の30km/hではなく地域住民がより安心して行き来することのできる20km/hを用い、自動車の抜け道利用を防止する車止めや実際に速度を落とさせる連続ハンプなどを設置する、と記述すべきです。

変更例:「まちづくりに合わせて生活道路における通行区分を明確にするための路側帯のカラー舗装化、自動車通行速度を20km/h 以下に抑制する“ゾーン20”の整備とハンプや狭窄の設置、通過交通の抑制のための車止めの設置や一方通行指定、自転車の停止位置の前出し等、歩行者、自転車、自動車それぞれが安全に通行できる環境を整備する」。

pp.51-53

「健康増進」の項目としては、(1)を「健康づくりの推進」、(2)を自転車通勤等の促進、(3)を「サイクルスポーツ振興の推進」とするのが望ましいと思います。

日常生活に広く運動習慣を取り入れるという項目を第一に、通勤という少し絞られた生活上の運動を第二に、別に時間を作ってのスポーツを第三に、という順番が妥当ではないでしょうか。

p.52

健康づくりポータルサイト「とうきょう健康ステーション」において、生活習慣病の予防や生活習慣の改善を図るために、ウォーキングやサイクリング等の日常生活における習慣的な運動を呼びかける等の広報啓発を実施する。

日常生活における運動の推奨は「ウォーキング」や「サイクリング」といった区切られたアクティビティー以前の「徒歩移動」「自転車移動」のメリットを伝えることを入口とし、ポスターや広報誌も媒体とすべきです。

変更例:「広報誌やポスター、健康づくりポータルサイト「とうきょう健康ステーション」等において、生活習慣病の予防や生活習慣の改善を図るために、徒歩移動や自転車移動等の日常生活における習慣的な運動のメリットを伝え、実践を呼びかける等の広報啓発を実施する。

p.53

自転車通勤等の促進

徒歩や自転車利用といったアクティブな移動手段を取り入れた通勤を推奨する旨の文言を冒頭に置くべきだと思います。

健康面でも環境負荷でも、都市空間の有効利用の観点でも、交通政策において自転車通勤は車通勤より優遇されるべきものです。特に公共交通の過密が問題となっている東京では、徒歩と自転車が最も優遇されてよいのではないでしょうか。都自身にも、職員のための駐輪環境を改善し、通勤手当など制度上のハードルを解消する施策の導入を語って頂きたいです。

p.51

サイクルスポーツ振興の推進

BMXやストリートMTB用のパークの設置、海上公園群を結ぶ周遊ルートの整備など、具体的内容をもっと盛り込むべきです。

スポーツとしての(オンロード)サイクリングは普通、個々の公園内で完結するようなものではありません。湾岸エリアの公園は、それらを結ぶ周遊ルートの整備が行われれば(オンロード)サイクリングに適したものとなります。一方、BMXやストリートMTB用のパークなどであれば、個々の公園内で完結したアクティビティーとして成立します。

p.54

観光振興

順番を改め、(1)を「観光における自転車移動の活用」(特に通行空間整備)、(1)の2を自転車マップの作成、(2)を「スポーツサイクリング向け情報提供」、(3)を自転車競技大会の開催とすべきです。

移動、趣味的スポーツ、競技鑑賞、の順が妥当ではないでしょうか。マップはスポーツではなく観光における自転車移動のためのものが需要に即していると思われます。ただし電子版については自前のアプリは作らず、既に多くのユーザーが利用している民間サービスへのデータ提供に徹するべきです。

p.56

自転車安全利用五則

五則は不正確な記述も含み、また事故統計などをふまえた項目設定になっていないので、改訂が行われない限りはルール周知の主たる題材としては扱わないものとすべきです。

ルール周知において最優先すべきは、件数が最多の出会い頭事故の防止に最も有効であると(自転車側の違反の内訳から)考えられる「安全確認」です。

p.56

リーフレット

都と警視庁のリーフレットは法律上の義務(ルール)と自衛上の推奨事項の混同が目立つので、これを整理すべきです(「マナー」という曖昧な語の使用も廃すべきです)。

p.56

子供の視点から自転車の安全利用を訴えかける

こうした手法は、十分な判断材料(自転車事故の相手の殆どが車、2017年の都内では自転車側無違反が過半数、等)を子供に与えなければ不見識な大人に誘導された腹話術に陥ってしまうため、安易に用いるべきではありません。

p.58

ヘルメット等の安全対策器具の広報啓発

ヘルメットに関しては、義務化したことで自転車利用が減ってしまった海外の前例を念頭に、有用性と限界を正確に説明した上で着用は個々に委ねるのが望ましい取り組みでしょう。

p.60

マナー

交通安全施策において、慣習を意味する「マナー」を「守る」、というフワッとした言葉遣いはやめるべきです。

ルールとマナーが混同された状況では、ルールの妥当性(例: 諸外国と違って自転車の並進禁止がデフォルトとなっていること)の検討も難しくなります。

p.61

スケアード・ストレイト

米国で非行防止のために発案され、今は効果が科学的に否定されているスケアード・ストレイト(「恐怖により更生させられた」の意)の採用はやめ、スタント会社を呼ぶ予算を、スピードハンプ導入など通学路の車の脅威を低減する施策に使うべきです。

p.61

自転車損害賠償保険への加入促進

自治体が自転車を使う住民を保険会社に顧客として斡旋、引き換えに金品を寄付として受け取るという事態が起きています。ごく稀な自転車側=加害者の高額賠償事故における被害者救済のためであれば加入者一人あたりの掛け金は年間数百円程度のはずですが、実際そうしたプランは珍しいです。間違っても安易な義務化などに走ることのないよう、最大限の注意が必要な案件です。

その他(自由意見)

東京の交通環境、そして生活全体がもっと優しく楽しいものになることを願ってやみません。どうぞよろしくお願い致します。

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