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毎日、8キロの道のりを自転車で30分かけて学校へ通っている。
朝8時、開店前のスーパーや飲食店が並ぶ国道4号は車が行き交う。パンを運ぶトラックが忙しない。朝から頑張っている人たちを見て、僕もスイッチを入れる。

帰りは道を変えて、川沿いの住宅街を進む。
緑も多く、水も綺麗なのでなかなか気持ちが良いものだ。時折、川沿いの階段を下って遊んでいる子供を見る。木の棒で水をかき混ぜて遊んでいる。苔を剥いで遊んでいる。川に浮かぶ草(川菜草と呼ぶらしい)をとって遊んでいる。
落ちる子供もいる。浅いのですぐ起き上がれる。それを見て僕はクスッと笑ってしまう。家に帰って怒られるんだろうな。
僕は友人と取っ組み合いの喧嘩をして、血だらけで帰り両親にあきれ怒られた日々を思い出す。肉つきが悪いので精神力だけで戦っていた。

「おかえりなさい」
また近所のおばさんが声をかけてくる。
どう返せばいいんだ?僕はあなたの家の子ではない。「ただいま」と返すのはなんか違う気がする。いや、それでもいいんだろうけど。
「こんにちはーー!」
手を広げる。誰かさんみたくやってみたがウケが悪かった。おっと手放し運転になってしまった。派出所のおまわりから白い目で見られる。彼には何度かイヤホン使用中の自転車運転でレッドカードをもらっている。

水辺に広がる住宅街は情趣がある。
この街で育てられた僕がこの街を出る日も近い。でもこの街を愛する気持ちは変わらない。


*このコラムはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

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