トラマドールはコデインより死亡リスクが高い
今日はm3の「海外ジャーナル」の記事の紹介です。痛み止めで使用されるトラマドール(商品名トラマール、またトラムセットに含まれている成分)による有害事象を調べたところ、古典的な弱オピオイドのコデインよりも死亡率が高く、これまで少ないとされていた依存や便秘などの副作用も変わりがなかった、という内容でした。JAMA. 2021 Oct 19;326(15):1504-1515.
トラムセットは整形外科などで広く使用されていますので、自分自身や家族が使用している、という人も多いのではないでしょうか。
今日の記事は、2~3分で読めます。
コデインとは
コデインはモルヒネの前駆物質で、体内で約10%がモルヒネになります。市販の風邪薬にも、咳止めとして使用されていることがありますが、痛みにも効く濃度では麻薬指定となります。
昔はがんの痛みに対してアスピリンやロキソニンが効果がない時、モルヒネなどのオピオイドを使用する前に「第2段階の痛み止め」としてコデインが使われていたことがありました。コデイン120mgがモルヒネ20mg同じくらいの強さで、これくらいの量で除痛出来ない時にモルヒネに変更する、という使い方でした。
ただ、先程もお話したように医療麻薬に指定されていることに加え、モルヒネとほぼ同じくらいの副作用があります。どうせ麻薬指定の薬を使うなら少量のオキシコンチンが良いかな…ということが多く、私は咳止め以外の目的では殆ど使用経験がありません。
トラマドールとは
トラマドールはコデインの誘導体ですが、最大の利点は医療用麻薬の性質を持ちながら法律上は麻薬扱いではないので、取り扱いが楽ということです。また、セロトニン、ノルアドレナリンの取り込みを阻害することから単独で※鎮痛補助薬としての効果も期待されます。
【※】鎮痛補助薬とは、神経が障害された痛みなど、モルヒネなどのオピオイドが効きにくい痛みに対して併用される痛み止めのことです。
麻薬指定ではなく、「慢性疼痛」で保険適応もあるため非常に使い勝手が良く、身体のあちこちが痛い、という人は大勢いるためにかなりたくさん使用されるようになりました。
今回の論文は…
今回ご紹介する論文はスペイン・カタルーニャ州の18歳以上の外来患者36万8960例(平均53.1歳、女性57.3%)に対して行われた、かなり大規模なコホート研究です。
結果、全死因死亡(ハザード比2.31、95%CI 2.08-2.56)、心血管事象(同1.15、1.05-1.27)、骨折(同1.50、1.37-1.65)のリスクが有意に高く、転倒、せん妄、便秘、オピオイド乱用・依存、睡眠障害のリスクについては、両群に有意差は認められなかったとのこと。
つまり、医療用麻薬の扱いではなく、「何となく」安全だと思っていたトラマドール(トラムセットなど)のほうがコデインより副作用が多く、使用している患者さんの死亡率が高かった、ということです。
私の考察
痛み治療の現場はバファリン、ロキソニンなどの痛み止めよりはトラムセットの方がマシ、と考えられています。これは間違いではないと思いますが、トラマドールもオピオイドとに準じた副作用があるという認識は必要だと思います。
コデインよりも患者さんの死亡が多い原因については分かりませんが、心血管疾患の副作用も多いあたりセロトニン、ノルアドレナリンの取り込み作用などと関係があるのかもしれません。
まとめ
痛み止めとしてよく使われているトラマドールですが、麻薬に匹敵する副作用があるようだ、という論文が報告されていたので紹介させて頂きました。
痛みは本当につらい症状ですので、患者さんに希望されればつい何かを処方しなければ…と思ってしまいますが、痛みをしっかり評価し、少なくとも使用して効果がはっきりしない痛のであれば漫然と使うことは止めたほうが良いと言えるでしょう。
最後までお読み頂き、有難うございました。
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