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フランク・ロイド・ライトー世界を結ぶ建築 @パナソニック汐留美術館

 フランク・ロイド・ライトの建築が好きなので、パナソニック汐留美術館で開催中の「フランク・ロイド・ライトー世界を結ぶ建築」を観に行ってきました(2024年1月22日)。
 珍しく平日休みがあり、それを利用して行ったので、待ち時間はありませんでした。土曜休日だと混雑のため入場待ちがあるようです。

入館の際、パナソニック汐留美術館のWebサイトからホームページ割引引き換え券をスマートフォンで提示すると100円引きになります!

 フランク・ロイド・ライト(1867–1959)は、20世紀を代表するアメリカ人建築家で、アメリカにある8つの建築作品が「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築作品群」として、2019年に世界遺産に登録されています。特に、エドガー・カウフマン邸(落水荘)、ソロモン・G・グッゲンハイム美術館、フレデリック・C・ロビー邸などが広く知られています。ライトの建築は、アメリカを除くと日本に4件しか残されておらず、そのうち3つが文化財に指定され、重要文化財の旧山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)は世界遺産の追加登録候補になっていますが、それ以前より日本のファンが多い建築家です。

 この回顧展は、愛知県の豊田市美術館を皮切りに、現在は東京のパナソニック汐留美術館で1月11日(木)3月から3月10日(日)まで開催され、その後は青森県立美術館に巡回します。

 ライトが設計した帝国ホテル二代目本館100周年を記念していることから、帝国ホテルを基軸にしながら、フランク・ロイド・ライト財団や財団から移されたコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に所蔵されている図面やドローイングを中心に、ライトとその建築に関する最新の研究を踏まえて7章の展示で構成されていました。

ライト建築とデザインの魅力

 ライトは自身が述べているように、”有機的建築”を提唱し、環境や気候に適った人の生活を豊かにする建築を実践していますが、アメリカや日本においてもその気候風土に合わせながら、ライトの特徴である幾何学的なデザインを、建物はもちろん建物に合わせて家具の中にも落とし込み、一体として表現しているところにその独自性と魅力があります。

 建物にあわせてデザインされた椅子はどれも秀逸で、私は帝国ホテルの「孔雀の間」ためにデザインされた、六角形の背もたれを持つピーコックチェアが好きです。さらに、この建物に合わせた家具デザインの考え方は同時期に建てられた自由学園明日館の椅子にも共通しており、特にライトの弟子・遠藤新が明日館のためにデザインした食堂用椅子が好きです。

食堂の椅子(自由学園明日館)

 会場にはライトがデザインしたいくつかの椅子と机が展示されていました。撮影はできなかったものの、帝国ホテルのピーコックチェアの実物を初めて見ることができました!そして遠藤新による明日館食堂用椅子も展示されています。

 展示物については原則写真撮影ができませんでしたが、東京の展覧会では唯一ユーソニアン住宅の原寸モデルの展示は撮影することができ、SNSでのシェアも推奨されていました。

とてもシンプルな椅子なのですが、そこにもライトらしいデザインが表現されていると思いませんか?

感想

 近年、建築家個人に焦点を当てた美術展が増えてきたと思いますが、建築家の作品は基本的に屋外の建築そのものですから、それを一番見たい!というのが本音ですし、美術館での展示は建築作品の模型や写真、図面やドローイングに頼るため、正直やや物足りなく感じてしまうところがあります。
 でも、ライトのドローイングは鑑賞に値するものでしたし、ライトは窓や扉などの建具や椅子や机をデザインしているので、それらを間近で鑑賞することができ、見どころ満載でした。帝国ホテルを基軸としつつといっても、それ以外の展示もボリュームがあるため、帝国ホテルが展示の中心とは言えないくらいでした。
 また、ライトには女性遍歴とそれにまつわるスキャンダルというネガティブな側面があります。近年の美術展では、芸術家に向き合う中でその暗部についても取り扱う展示が増えつつありますが、今回の展示では「SECTION 3 進歩主義教育の環境をつくる」で、不倫関係にあった施主の妻メイマー・ボスウィックを含め、進歩主義教育やフェミニズムに関わる女性活動家やとの関係や影響についてポジティブに焦点を当てた展示があり、新しさを感じました。

 館外展示として、約10分間のライトのインタビュー映像をみることができました。これがすごく良かったです。ライトの肉声を聞くことができたし、ライト自身により建築家としての生い立ちや考え方が端的に語られていて、これから見学される方にはすごくおススメです。

 と、私としては良かったこといっぱいだったのですが…展示物の量が満載なのに対して、展示スペースは少し手狭ではないかと感じるところもあり、そのあたりは評価が分かれるところでしょうか。また、建築の専門的な内容とその時代背景やライトの思想との関係が丁寧に説明されており、私はすごく楽しかったのですが、ライト建築の入門としてはキャプションがやや多めに感じて読むだけで疲れてしまうかも…と思いました。

 藤崎殊海さんのnoteを見ると、最初に行われた豊田市美術館の展覧会では、リトル第二邸「北の家」窓ガラスやクーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラスなど、撮影OKだった展示物が多かったようで、うらやましいなと思いました。でも、近くで展覧会をみられるのはすごく嬉しいし、東京の恵まれているところだな思います。

 東京の展示の実際の様子は、下に示したアートの情報サイトTOKYO ART BEATの記事がオススメです。写真が豊富で分かりやすいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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