記憶

彼と一切の連絡を取らず、ここまである意味、平穏にやってきた。もちろん心は乱れるが、「やっぱりね」とか「仕方ないものね」とかそんな気持ちで過ごしていたのだ。


昨夜、オンラインで繋がる友人達ととある動画を見ていた。画面をさほど見ず、音を聞いていた。見たくて見たのに「しまった!」と思った時には時すでに遅し。


彼の声と話し方に似ている人の音だけを聞いて、想像以上に影響を受けてしまった。元々、私の彼の声が似ているねという話はその友人達としていた。私の動揺に「やっぱり似てる。とりあえず消そう!」と言われる始末。


どれぐらいの動揺かというと、脈拍を測定すると急に100に近かった。自覚できる動悸。


あー、何だろう、この動揺は。



困ったことに、好きだから、と言い切れない自分がいる。
元に戻れる自信が無い。
愛されていない私が、戻りたいといったからと言って、結果は別れなのではないかとずっと思いながら日々を過ごしている。
好きだと思わないようにすれば少しは楽なのではないか。
そう思うから言い切らないようにしている。
でも、それって結局、好きなのでは?
それならばいっそ別れを切り出す?



それもできなくて辛い。



短い間に脳裏に焼き付いた音の記憶は、かなり厄介だ。

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