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ファーストアルバムの「オリジナルプリント」

作曲家としてキャリアを築いてきた自分が、シンガーleift(レフト)として活動を開始して、ちょうど1年が経った。振り返るほどのキャリアはまだないけど、考えてみればデビューから1年で、

ファーストアルバム『Beige』のリリース

6月21日(水)の、表参道WALL&WALLでのワンマンライブ

最近楽しいTikTok

と、今絶賛準備中のワンマンに至るまでの一連の流れを、とてもアグレッシブに進めてこられたと思ってる。もやつくこと、苦しいことも沢山あったけど、多くの「初めて」を経験している自分は、去年の今頃より遥かに自分をタフだなと思えているし、今は目の前に直面する難題に対して

おもしれーじゃんよ。

と心を燃やせる状態にまで、本来の闘争心が着火している。


そんな中。絶対に着手したいと思っていた事に、ようやく一歩踏み出すことができた。NFTを付与した、デジタル作品のリリースだ。


アルバム『Beige』のNFT作品

音楽とNFTという流れは、2021年の初頭くらいには絶対にやりたいと思っていたことだったし、それなりに知見はあるつもりでいた。今更NFTとは何か?を説明するのはここではしないけど、やりたいと思っていた理由は、

音源に対する「本物」への答えが欲しい

CDプレイヤー自体を持っていない(自分も含め)人にとっての、
音楽を「買う」意味への答えが欲しい

の2つだ。

その課題に答えを出してくれる方々に出会ったから、発売を決意した。後から詳しく話すので、まずはここに至るまでに考えたことを。


大嫌いな「レコード・カセット・CD VS ストリーミング論」

最初に言っておくと、結構な極論も混ざる書き方をする。

尊敬している、主に年上の音楽好きな方がこの話を始めた瞬間に、その敬意が一気に、音を立てて崩れていく。Spotifyで自分の曲を知ってもらえ始めた頃からずっと、「CDやレコードこそ"本物"」という音楽好きの皆さんとの議論に、めちゃくちゃ辟易していた。

手に取るという行為自体は、自分もアナログやヴィンテージを支柱にして音楽を作っているからこそ価値は理解しているつもりだ。つい先ほども、渋谷タワレコのVinylコーナーで心を躍らせてきたところ。

けど、CDやレコードが「本物」で、ストリーミングは「本物じゃない」「実態がない」「音楽家の尊厳が・・・」という議論には、全く賛同できない。

聴感云々ではなく、概念として話す。

レコードやCDとは「マスターデータをコピーして大量に売っている"複製物"」だ。基本的には「枚数を重ねて大きな利益を得る」「一度により多くコピーして沢山売った方が儲かる」「曲で価格が変わるのではなく、パッケージした"お皿"が購入物」ゆえ、盤の値段がほぼほぼある一定の金額帯に収まっている。

そしてこの流れは、自分が10代前半だった頃に「市場を脅かす」と散々議論され尽くされたであろう「ダウンロード販売」でも基本的に同じ。お皿がなくなった分、音源単体に一定の金額をつけて売られ始めたけど、基本的には「マスター原盤をコピーして、沢山売れば儲かる」という仕組み。

複製物を、同じような金額で均一的に売るという行為は、良いかどうかはさておき「大量生産、大量消費」だ。


ストリーミングは、CDやダウンロードと根本的に違う

CDか、ダウンロードか?みたいな議論がめちゃくちゃ巻き起こったのは知っているけど、ストリーミングの登場によって、「CDとダウンロードは本質的には同じ」と自分は理解した。それほどまでに、Spotifyがもたらした音楽市場への革命は大きく、「販路」で音楽家の数を制限していた産業に、変化が起きたのだと解釈している。

この思想を軸足に、ストリーミングを否定している人たちに言いたい。CDかストリーミングか、ではないのだ。アーティストの世界観や楽曲の価値を高めるために、ストリーミングやSNSを駆使して裾野を広げ、「これまでは」CDや興行で現金化して生きていくのが普遍的な正攻法だっただけ。

リスナー視点で言うと、令和の時代に「モノを持つ」行為は、

限られた部屋の面積の中で(物価と賃料が上がって収入が変わらなければ尚更)、本当に欲しいものを慎重に慎重に選んで、「飾る」行為。

だと思っている。CDショップに行って試聴して、買う行為が特別だった頃とは「特別」の概念が違う。だからこそ、ストリーミングで興味を持って、レコードを買いに行く行為は素敵だなと自分は思うし、行かなくても、音を聴かずにCDやレコードを買わなくても、事前に聴いて「ハズレを引かない」可能性が高くなった現代を愛おしく思う。


大量複製やストリーミングで補完できないこと

これこそが、ずっとNFT付きの作品を世に送り出したかった理由だ。

背景を長々と書いたので、NFTに対する自分の思想を先に言う。leift、KOTARO SAITOにとってNFTの作品とは、

ライブの、制作者視点バージョン

だと思って欲しい。つまり、正真正銘「本物」の

leift公認の、オリジナルプリント音源

をリリースしたと思って欲しい。写真家の方の作品と、考え方は限りなく近いと思ってもらえると分かりやすいかな。


ライブを始めてよく分かったこと

ライブで得られる体感的な感動は、オーディエンスだけでなく演者にとっても「その瞬間でしか得られない本物の連続」だった。

お客さん一人一人が、ステージのバイブレーションを大きく変えるキッカケになる。演者は決して一方向的に音楽を送り出しているわけではなく、客席から反応をもらえるから溢れ出す表現が山ほどあって、会うこと以上に「お客さんと演者がセッションする行為」が価値。二度とない、その場にいた人の香りが、録画した映像に確かに残り、語り継がれていく。

9日後のワンマンへの準備が終盤を迎える今だからこそ、ライブへの想いを綴る自分のパワーが、今この文章にたぎっているように思える。それもまた、今しか書けない言葉をnoteに残す行為という意味で、ライブだ。


一方で、ライブを始める前からずっと

制作時に込めてきた想いが、自分にとって本物だと思えるリリースをしたい。どうしたらそれが叶うのか?

と、実はSpotifyで最初に話題になった『BRAINSTORM』をリリースし始めた2018年くらいから、ずっとそう思っていた。ライブをしないと、その想いを概念として形にできないのか?って。(重ね重ね強調すると、ストリーミングが本物ではないと言ってる訳じゃない。)

そう思って数年が経った頃知ったのが、NFTだった。


なぜ、ずっとNFTに着手しなかったのか

ITテック業界の方々や、エンタメとテックに詳しい方々がいろんなサービスや事例を紹介しているのは常々拝見しつつ、自分がNFTに手を出してこなかった(実際に購入もしていない)理由はシンプルで

ウォレットを作ってマーケットプレイスで買う行為が面倒
自分の曲を聴く方々に、自分が面倒なフローを強いられない

というインターフェース上の問題と、

NFTを付与して作品を出せば、
一点でめちゃくちゃ巨額の富になるかもしれない

という、NFTをせっかく付与できるのに、まるで「お皿に価値がある」みたいな流れが巻き起こっていたことが、疑問だった。仕方がないことだ、最初はどんな世界であっても、

中身より外側の鮮度で価値が決まる
先行者利益を求めて「やりました」と言いたい人が作品化しやすい
(勿論、全てがそうだとは思ってない!)

という流れは起こりやすい。特に2021年はleiftを準備し始めた時期と重なっていたから、Spotifyに日本では比較的早めに着手して結果を出せた身でありつつ、「一旦この流れは様子を見よう」と慎重だった。


疑問を解決してくれた人たちとの出会い

やっと、素晴らしいプラットフォーマーについて書ける。

前置きがとても長くてごめんなさい。
でも、これを書かないとただ「NFT出しました!」になっちゃうんだ。
それは意図と違うし、本質的じゃないんだ。

leiftのファーストアルバム『Beige』のNFT音源、つまり「オリジナルプリント」の音源は、ここで購入、試聴することができる。

元々、この.mura(ドットミューラ)のことは知っていた。自分が主宰するオンラインサロン「artists」のゲスト講師である山口哲一さんが立ち上げた事業だからだ。山口さんは超積極的な発信をされているから、彼の投稿を見ない日はない。

直接山口さんからお声をかけていただいた訳では実はないのだけど、運営する皆さんからお声をかけてもらい、お話を伺う事になった。

そこで、.muraがとても便利で、NFTと「音楽ファン」の架け橋的機能を持つことを深く実感した。とても素晴らしいと、身内贔屓なしに思った。

だから、絶対に.muraでリリースしたいと思ったし、自分もこのサービスが発展する事に、アーティストサイドから関わりたいと思った。


.muraの尊さ

クレジットカードでNFT音源を買える

まず、ここが素晴らしい。NFTを一般化させにくい一番の理由は、買うのが難しかったからじゃないかと思う。

テックに詳しい方や暗号資産に投資している人は慣れているのだろうけど、leiftのリスナーの方々が全員、そういう方々だとは思っていない。カード決済可能という形で解決してくれた.muraは、素晴らしいと思った。


SpotifyやYouTubeの再生回数に応じてコインがもらえる

.muraの特に素晴らしいことは、音楽を聴く、愛する人にとって本質的な「愛情のお返し」ができることだ。早い時期から応援してくれている「古参」の方々が、アーティストを応援すればするほど「音楽の世界で喜びに変えられる機能」がついている。

SpotifyやYouTube Musicで聴かれた再生回数を元に、.mura内で特典に利用可能なコインが付与される(これは今後使えるようになるらしい)。例えば、と特典をこっそり聞いたのだけど、マジで音楽好きのことをよく分かっている特典ばかりで、そこがとっても素晴らしいと思った。

NFTという概念や機能そのものが価値になっているのではなく、あくまで主軸は「音楽を楽しみたい」「アーティストを心から応援したい」というファンに寄り添いながら、「より良い音楽を作りたい」「音楽で食っていくきっかけを作りたい」というアーティストの課題に応え得る場だと感じた。

早く特典をより展開してもらいたいし、本質的な価値に共鳴してリリースを決めた人間としては日本ではかなり早い段階で参入した身として、まだまだ音楽の世界でweb3とどう向き合うかの答えが出ていないこの世界で、まずは一緒にひとつ解を作れたら嬉しいなと思う。


せっかくNFTリリースをするのだから

今回、1曲だけ他のどこでも配信してない楽曲をリリースした。

chord (Dec.10 2021)

アルバムは全11曲なのだが、最後を締めくくる曲『chord』こそが、leiftとまだ名乗る前の段階で、一番最初にデモとしてミックスまで完成させた楽曲。このバージョンを聴いたことがある人は関係者の中でも数えるほどしかいない。なぜなら、とっても稚拙な歌声で、当時の自分の限界中の限界だから。とても、多くの方に聴いてもらいたい歌ではない。

そのバージョンが完成した「2021年12月10日」の気持ちが、存分に詰まっているからこそ、今聴くと自分の心が大きく揺れる。しんどかった。辛かった。でも、これが完成した午前6時半の朝焼けを、一生忘れない。

その日の朝焼けの写真が残ってた。

自分の誕生日の前日に、灰になって完成させたこのバージョンは、宝物だ。

そんなこの曲を、1人だけに聴いてもらいたくて、リリースした。結果、リリース後秒で売れた。この曲で描いた、僕の妻である安奈ちゃんが買ってくれたからだ。だから、結果的に、1人しか聴けないこの曲が、本当の意味で世に出ることは、この先もない。

それって、とっても価値のあることじゃない?


オリジナルプリントが一点しかなく、それを公に証明する

それもまた、NFTが付与されて、売り物として1点ものであることの尊さだと強く信じている。マスタリングされた音源はあくまで「完成データ」でしかなく、勿論それが「オリジナル」なのだけど、売り物として「一点だけ認められた音楽」と「マスター」は、概念が違う。

フィルム写真だと分かりやすい。フィルムは作家やアーティストのもの、写真として現像されたものは、買い手のものだ。


マスターは非売品、プリントは売り物

その意味で、NFTで音源をリリースするということは、「決まった数の"本物"」をフィルムから現像して、世界共通の証明をして「個人の所有物を公の売り物と化す」ことだと考えている。

マスター(原盤)となる「作者の創造性の塊」は、ペイントされた絵画の場合一点ものとして「キャンバスに描かれる」が故に一点しか原画がないだけ。音楽の場合は記録物としてWAVファイルに書き込んだものが現代ではマスターになるので、そういう意味では写真作品と概念がとても似ている。

今後も、よほどの意義がない限り、leiftやKOTARO SAITOの「マスターの権利」を他人に譲る気は自分にはない。

でも、マスターを有する者として、「本当に価値を認めた"本物の売り物"」の数を自由に決めて、「CD1枚 3,000円」などの定価的な価値観に影響を受けない作品展開をする。アルバム『Beige』が、その足がかりになったら嬉しいし、今後より「NFT限定のリリース」も価値ある形で検討したい。


今後、やってみたいこと

ここから先は、.muraの方々にも言っていない妄想だが、より別のフィールドの仲間を募るためにも書いておこうと思う。

「本物」を、「飾る場」があって初めて欲しくなる

今、自分のスタジオにはこれまで多くの作品のアートワークを依頼した「NoL」さんの原画が飾られている。

絵やインテリア、料理、を盛り付けるお皿にもそれなりに造詣を持つ自分にとって、「本物を持つことは"場所"の中で豊かに生きること」だという強い信条がある。生きる場所にも、一緒に過ごす人にも、そしてその場にあるべき「モノたち」にも想いを持って対峙している自分にとって、今はまだ構築し切れていない環境が1つある。それは、

デジタル上の空間

だ。あくまで期待を軸にした想像だけど、ここから数年で、一気にリアルワールドとデジタル上の空間が、共存する社会はやってくると感じてる。

これを見て、よりその確信が強くなった。思うにNFTが付与された「デジタル上の本物」とは、こんな社会のなかで生活を彩ってくれる存在だろう。

余談だけど、Apple社がなぜあんなにも360° Reality Audioに力を入れていたのかが、Apple Vision Proの製品発表でとっても納得した。

だからこそだ。せっかくNFTで作品をリリースしたのだから、次は少しずつ現実とデジタルが入り混ざる世界の空間デザインを、音楽も駆使しながらやってみたい。これは音楽に限った話じゃない。ただ自分は音楽が一番、現実とバーチャルが融合した世界で、イケてるライフスタイルを作っていくのに貢献しやすいはず。テックだけじゃ、イケてる世界にはならない。世界を作る機会が完成したら、中身がないと気持ちよくなれないから。


テックに向かう前にできること

今ある、リアルな世界とウェブの世界をつなぐ行為もまた、来る次のライフスタイルへのソフトランディングには不可欠だろう。そのために、

①リアルな世界でのライブプロデュース
②ウェブやバーチャルの世界での活動
③リアルな場でNFTを買いたくなる作品作り

を、今後ミックスさせていく。これについては日々のアーティスト活動による発信行為とは少しアプローチの仕方が異なる。

個人の領域を超え、協業できるパートナーが少しずつ見つかりそうなので、改めてここでも紹介させてもらう。


その世界で、何をやるか

一言で言うと、新しいフィールドを開拓する人間だからできる「キュレーション」言い換えれば「仲間探し」だ。

音楽コンシェルジュのふくりゅうさんが、NFTバージョンの『Beige』リリースに際して、こんな素敵なコメントを寄せてくれた。

leiftこと、音楽家KOTARO SAITOは、ストリーミング時代を誰よりも早く理解し、いかにすれば“自ら創出した音楽作品をリスナーへ届けるところまでをエンターテインできるか”という大切さにいち早く気づき、実践した挑戦者だ。

.muraのライナーノーツより

この言葉にはとても勇気づけてもらった。NFTはNFTという概念単体で独立していい話ではなく、NFTという概念をどう生活の中に活かすかこそがポイントだと思う。

一番大切なのは「世の中がいかに、より心豊かになれるか」

という、豊かさを享受する側の幸せを追求することにこそ意味がある。その意味で、web3の現在のフェーズを考えていくと、まだ本当の意味で楽しみ方が浸透しきってない今だからこそ

まだ世の中に浸透しきっていない才能を可視化して
その魅力に気付いた人たちが結束して、世の中に伝えること

これに尽きる。少なくとも、自分がやりたいのは、それ。勿論その「浸透しきっていない才能」に、leiftも含まれる。


リアルな世界でのアーティストやブランド、となると「知られているものを好きと言いたい」という同調性や権威性は欲しくなりがち。でも、現実とバーチャルが混ざる世界はまだ世界そのものが狭く実態が見えない部分も多いから、

マーケットと一緒に育っていくシーンがあっていい

と、強く考えている。
音楽という側面で、ひとつ自分らしい在り方を築気たら嬉しい。

妄想とは言ったけど。
なんの「裏取り」もなくそんな事は言わないので、
算段が(たとえまだ小さい光でも)あるから言っている、
と理解してもらえたら嬉しい。


さぁ!まずは自分のワンマンだ。
練習に戻るとしよう。是非来てください。

leift 1st. One-man Live Beige

日時:6月21日(水)開場18:30 開演19:30
会場:表参道WALL&WALL
(東京メトロ表参道駅より徒歩1分)

出演:
leift
サポートメンバー:
宮内告典(ドラム)
Hajime Uchiyama(ギター)
チケット料金:
前売 5,000円
当日 5,500円(前売り券が売り切れ次第販売終了)
※ワンドリンク別
チケット販売はこちら(どちらでも買っていただけます)


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