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「天空のスタジオ」に引っ越して気づいた事

ライブのリハの真っ只中であった2週間ほど前に、
4年弱住んだ家を引っ越しました。

ワンマンライブ前の引っ越しは、想像以上に、めちゃくちゃに肉体を酷使した。控えめに言ってもすごく大変でした。

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引っ越し初日は、伊勢から送ってもらったとびきりの金目鯛を持って、はじめさんが僕の大切な楽器運搬を手伝ってくれました。巨匠が車を出してくれたおかげで、特に大きな事故もなく、無事に僕の楽器たちは部屋に収まりました。はじめさん、ありがとうございました!


VOYAGERで完結した、以前の自宅スタジオ

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まだ2週間も経っていないのに
既に懐かしい、前の自宅・最後の日。

アルバム「VOYAGER」を作っている頃から、ずっと気に入っていたこの家は、だんだん卒業の時期が近づいているのではないか、と感じていました。コロナの #stayhome 期間にかかわらず、僕は基本的に何年も自宅で作業するのが自分のスタイル。世の中が自粛ムードになる前から、作業から仲間との時間まで、家の中で仕事・娯楽が完結しやすい環境を整えてきていた。


それでも、コロナで変わっていく
世の中のムードを僕は結構直に受けていて。

きっと僕自身が邪気みたいな物を放出していたのでしょう。気に入っていた植物が相次いで枯れてしまったり、背中や腰が妙に痛かったり、世の中、特に音楽業界や広告業界の仕事が止まっている中、無理やり心身を前進させようと気を張っていたこともあるのかもしれない。ダメージが知らず知らずのうちに溜まってきてしまっていて、寝ても全然疲れが取れなくなっていた。

最初は、アルバムで精神に無理をしていたからだと思っていましたが、アルバムをリリースした後に気づいたんです。もう、前の家で一切、新曲を作る気になれなくなっていた自分に。

思えば、2016年12月から2020年9月下旬まで。延べ3年10ヶ月弱の時間、この場所で本当にたくさんの音楽、そして思い出ができました。何曲書いたんだろう、全く数える気にもならないくらい書いたと思うし、色んな仲間と、料理したり、語らったり、本当に良い時間をくれた場所でした

前の僕のお家へ。
本当に、本当にありがとう。
お世話になった不動産屋さん、大家さん
近隣の皆様もご理解くださりありがとうございました。


部屋と「電源」で決まっていた「Kotaroの音」

僕のサウンドのキャラクターは、空間の特性にかなり依存しています。マイクで録音する音は特にそう。基本的に吸音もしないし、部屋の鳴り方、モニター環境さえも「個性」だと思ってずっと音楽を作ってきた。

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写真は先日、アイラヴミー・さとうみほのさんの番組「Music Spice!」にゲスト出演したときのもの。あぁ・・・この空間すでに懐かしい・・・。

これだけ日々、アレンジしてミックスしてマスタリングに持っていってを繰り返していると、部屋の鳴り方とマスタリングでの変化もイメージできるようになっていて、その感覚はどんどん精度を高めていけた。「あの家じゃないと鳴らない音」が、確かに存在していました。

色んな要因はあったけど、
割と大きかったのは電源環境。

前の家はエアコンが200V電源だったので、そのコンセントから分岐させて、僕が日々マスタリングしてもらっているDr. SWING氏から売ってもらった100V電源トランスに変圧して、ノイズフィルターを何層もかまして電気を使っていました。これが、びっくりするくらい音を変えていました。

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新しい家でも電気工事技師の方に依頼してこれと同じ仕様にできるよう早速作業してもらいましたが、電源以外の環境が全く同じとは思えないほど音が変わります。ぼやっとしていて掴み難かった低域が一気にボトムに張り付いて、中域は切れ味鋭くそれでいて痛くなく、高域は上に美しく伸びていく。全ダイナミックレンジが伸びに伸びる、最高の環境に。

久しぶりのその差を体験して、どんな音響機材より、電源が一番音を変えると再認識。そんなに難しい工事じゃないから、皆さんにも是非おすすめ。賃貸でもさほど家にダメージは与えませんのでご安心を!


新居に構えた「天空のスタジオ」

僕が本当に幸運だと思うのは、このコロナの時世において、引っ越したことが完全なる前向きなものであること。日々、サポートいただいている関係者の皆様、仕事でやり取りする取引先の皆様、何より僕の楽曲を聴いてくれているファンの皆様あってのことです。

この1年、毎日本当に綱渡り状態のまま生きてきていますが、今回の引っ越しも公私共に非常に前向きな「進化」を示したものです。僕自身が次のステージへ向かう瞬間が来て、それまで「克服しなくてはいけないと思い込んでいた様々な事象を手放すタイミング」が来たのかなと。

そういう意味で、今まで欲しいかなと思っていて全く使っていなかった物を、結構断捨離して次の家にやってきました。感情があると、つい捨てられなくなってしまう物を、欲しいと言ってくれた友人に託したり。思い出があって捨てられないものも、「ありがとう」と言いながら捨て去ったり。自分自身の波動エネルギーも結果的に高まったと感じています。


その結果でしょうか。次の僕のスタジオは、必要最低限のものだけが表に出ていて、無駄な思考を一切張り巡らせることなく、作ることが喜びに感じる場所にしていくことができそうです。

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目指したのは、視界のほとんどを空が埋め尽くす「天空のスタジオ」です。作っていく楽曲そのものが、下を向かず、前、そして上を見上げて登っていくような音楽を目指したかった。この場所はこんな僕の願いを叶えてくれる、以前のスタジオよりかなり天井が高く開放感溢れる場所です。

前の家同様、電源工事を施したそのサウンドは、以前の家より天井が高いことで、ボトムはパワフルに安定しつつ、よりハイエンドが美しく伸びていく「スタジアム仕様」のサウンドになりました。以前の環境は築40年強のリフォーム物件だったのに対し、こちらは比較的近代的な作りの建物。電源も新しめだからか、以前のミックスより透明感が増したのを先週マスタリングで感じました。本当、大切なことだから何度も言うけど、電源マジ大事。

時間帯で楽器可な物件であることも幸いして、部屋から外への音漏れも以前に比べてかなり解消されたこの空間。空間が4.6帖とコンパクトであることもあり、密度の大きいサウンドが天井へと抜けていく感じ、気に入りました。

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日中はかなり大きめの音量で作業できそうなので、先日購入した70年代の良質なコンディションであるRoland JC-60というギターアンプでシンセベースやリードを鳴らして録音も可能です。マイクや部屋を伝う音、ライン録音とは一味違う風格を持っていて、めちゃくちゃいい。


カジュアルに音楽を楽しみながら生きる

ここに引っ越してきて一番変わったのは、「日々音楽を聴くこと」です。意外な回答かもしれませんが、僕はこれまでの環境下では意識して、普段あまり音楽を聴いていませんでした。スタジオと生活エリアの区別がなかったからだな、と今振り返って思います。

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今はリビングとスタジオを分けたので、今こうしてnoteを書いているリビングからは僕の愛する楽器たちは見えません。隣接はしているので思いついたらすぐに作業できる環境ではあるけれど、食事や、こうしてnoteを書く、昼夜のチルタイム時には楽器を視界から遮ることができる環境を作りました。

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おかげで、日々の生活で音楽をより楽しめるようになりました。リビングには愛用しているBluetoothスピーカー、HK Studio Aurora 2を。これ、コンパクトですがミックスチェック用の一台としても大活躍!これでちゃんと鳴れば現代のサウンドだ、と僕とはじめさんは愛用しています。

余談ですがこのスピーカーも
200Vを降圧した電源から電気を送り込んだところ、
劇的に音がクリアになりました。
すごいな電源・・・

部屋でかける音はチルトラックやシンセアンビエントのシリーズが多く、生活を邪魔せず、ミニマルに鳴る楽曲が今の好みです。きっとこの傾向は僕の作る楽曲にもいい影響を及ぼすんじゃないかな。

僕が最近聴いている楽曲は以下で聴いてもらえます。最近の気分で、気になった物を追加しています。随時更新していますのでお楽しみに。街でシャザムした物をそのまま入れたりもするので、かなり取り留めも無いプレイリストですが今の気分を共有するにはいいかなと。

昨日、今日くらいからようやくしっかり落ち着いて仕事したり、今後の活動方針についてビジョンをアップデートする時間を作れるようになりました。

新たな環境はどこにいても「空」を感じられる開放的な場所なので、なるべく遠く景色を見ながら、アルバム「VOYAGER」で共に飛び立った皆さんを更に上昇気流へとご一緒してもらえるよう、半歩宙に浮いたようなサウンドを作って行けたらいいなと考えています。


過去より、現在。そして未来へ

このnote、実はライブリハを続けていた9/26に書き始めました。その当時はまだ前の家を離れた寂しさを引きずりながら書き始めていたせいか、冒頭は少しだけセンチメンタルな感情を纏っているように感じます。

しかし、ライブを終えて次の作品制作に入った10月を迎えて以来、僕の心はより未来へ向いてます。それは単に環境が変わったからだけではなく、この場所が僕に指し示してくれる針路が、とても明快に「過去に戻ることでなく未来へ進むこと」だからだと思えます。

一番思うのは、新しい家に引っ越してから、携帯電話を見る時間が半減しました。こう言うと語弊があるのですが、僕は今年の夏は特に、携帯電話をあまりにも見過ぎでした。

アルバムをリリースしたし、SNSで積極的に皆さんとコミュニケーションをしたかったのもあるけれど、それ以外の時間もあまりにも携帯に依存しすぎていた。過度にインプットを続けた状態、しかもその中には、今思えばまるで必要なく、それによって気分を害したり体調を崩すような、顔も名前も見えないような負の感情だけが吐き捨てられたような情報もちらほら。

新たに移した生活環境では、ものすごく健全かつナチュラルな生活ができています。朝早く起きて、草木のコンディションを確認し、朝食を作りハンドドリップでコーヒーを煎れ、掃除洗濯を行ってようやく仕事開始。それでも9時半〜12時ごろまでで一仕事終えられるので、昼食を軽く摂るか、少し外に出かけてみる。とにかく、所作1つへの集中力が高まったのが大きい。

最近作って美味しかったもの。豚肉、水茄子を山椒、味噌で炒めたもの。

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料理熱もさらに高まりました。


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スタジオに新たにお出迎えしたヌシ、ビカクシダ。別名コウモリランと呼ばれるこの巨大なシダの一種は、ライブ終了翌々日である中秋の名月が明けて行った朝、縁あって我がスタジオにやってきました。

・・・デカっ。

その形状から「レタス」と呼び親しんでいますが(笑)レタスがスタジオにもたらした影響は計り知れません。これだけ機材に、楽器に囲まれていても、全く圧迫感を感じなくなりました。聞いた話によると植物は悪い気を吸ってくれるそうで、レタスが部屋に納まった瞬間、この場所のスイッチが起動し無限浄化が始まった感覚に浸りました。

僕は集中力があまり続かないタイプで、作業は人より速いはずだけど、完成するまでに結構な時間がかかってしまう。このスタジオでは一つの作業をクイックに無駄なく、まさに「精神と時の部屋」な感覚で作り進められているので、昨日今日の制作案件も非常にスムーズに運ぶことができました。


この場所で成し遂げたいこと

自分にも負荷をかける気持ちで、次のステップへと踏み出したつもりです。今まで通りの自分ではここで暮らしていけないので、確実に進化を遂げて、更なる先の未来へと進んでいきます。


ここに引っ越す上で、自分の心に決め事を作りました。

①無駄な買い物はしない。機材も無駄に買わない。

音楽的な機材も含め、僕はここに来るために前宅で「まだ使える」と思っていた機材を一気に処分しました。うまく収納をすることを目的に、この空間は構築しません。あくまで、クリエイティビティが拡張され、世界に向けて希望や光という、上質で勇気に満ちたサウンドを届けていくことだけを追求したい。そのために必要なものって、楽器含め、実は多くはないんです。

引っ越しした時点で、すでに部屋の収納の多くを使っている状態。だからこそ、これからデータで充分なものはデータで持つことにして、自分にとって物質的に必要なものは、便利なものではなく、心を強く打たれた「作品」性の高いものだけにします。それ以外のものは、沢山の思い出を胸に、「ありがとう」と心からのお礼をして捨てました。

それが今の自分らしいと思っているし、僕自身が提供できるのも、モノではなく「デキゴト」だと信じています。楽しんでもらえる出来事こそが僕らが一番追い求めたいコト。ものに執着するって、現代的ではないと思うから。


②戦略より、感情を大切に生きる。

これは別で書こうと思っている音楽活動に対する方針にも強く関わりますが、「こうしたほうがいい」をなるべく捨てて「こうしたい」という気持ちを大切に生きようと思っています。

生きていると、何かと事情論に流されてしまうことは、特に僕の場合結構多くあります。一番多いのは人間関係の事情論。進めてしまったものを、なるべく互いが傷つくことなく収めよう。こういう言い方をすれば、衝突しても何とかうまく収まるんじゃないか。そこには、人(広義にも狭義にも)に何かを伝えるときに計算や狙いが生まれます。


この空間で音楽を聴きながら考えや想いを巡らせていると、さっき「精神と時の部屋」と書きましたが、ノイズが一切遮断され、自分の生き方に本当に必要なものだけが浮かんで出てくる、そんな体験ができています。

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日々、水を潤沢に与えられて芽を出し続ける(すごい芽の量 笑)このエバーフレッシュのように、陽の光を燦々と浴びながら伸びたい方向に感情を伸ばし続け、自分が本当にやりたいことにだけ目を向け、それがどう世の中の力になれるのか、それだけを集中して考え抜き、作品を形にし続ける。

とても勇気のいることだけど、思えば今年に入ってからそれまでの仕事スタイルや生活スタイルはいい意味で崩れ落ちていき、自分が信じ抜いたことでしかやり通せない毎日を生きてきたじゃないか。やりたくもないことで、心に負荷をかけて、やり通した時に得られる充実感がさほど・・・ってなるくらいなら、僕はやりたいことをこの場所で全力でやり続けます。


③ケミカル、ジャンクを可能な限り排除する。

信用できないものを体の近くに置かない、とも言えるこの誓い。結構大変な事なのはわかっているけど、この家に来てから調子がとてもいい大きな理由の一つは、食事、水、空気に至るまで、なるべく自分の目が届くところで手に入れたものを摂取しているからだと思います。

もちろん疲れ切って外食やUber Eatsに頼ってしまうことは今もあるけれど、日々の生活の3食やコーヒー、紅茶などに至るまで、口にするもの、触れるものに責任を持った生き方ってすごく自分を豊かにしてくれます。作り置きや買った食材をきちんと使い切ることを意識するだけで、外食に頼りがちな生活から一気に食費も節約することに成功しています。

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これからの時代は、物質的な価値観よりクリエイティビティによって生活水準を高められる時代だと感じています。家具をアプリ経由で個人にオーダーメイドしたり、自宅での生活を魅力的に発信することで企業とのコラボが生まれたり、ただの生活もDXやSNSで工夫するだけで新しい気づきをもたらすことを今回の引越しで学びました。

生きることそのものにクリエイティブであることが結果的に金銭含む物質的幸福を支えてくれることだって今まで以上にあるはず。アナログな「心と心の会話」を、最新の方法論で稼働領域を拡げていく。それは僕がここ、noteで実現したいビジョンと全く同じことなんですよね。


物質的側面以上に、精神的な無駄を一切削ぎ落とした僕の新しい生活。ここから生まれていく、有機的で想いをダイレクトに込める音楽がより多くの方々の心に深く届きますように。


次のリリースは10/21(水)に決定しました!
次回作は5トラック入りのEPです!ライブでも演奏した
「あの曲」の様々な側面をどうかお楽しみに!



齊藤耕太郎 / Kotaro Saito







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