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舞台『D.C.III~ダ・カーポIII~ミライへの伝言』その2 プロットの章

前作の述懐記事では、導入編の後はプリプロダクション的な話を書いた気もするが、今作は二作目。すでにどんな座組みなのかも、どんな小屋なのか、規模感などもわかっている状態からのスタート、ということで、いきなりプロットの話に進もうと思う。

正式に舞台D.C.IIIの新作の依頼が来て、最初のネット打ち合わせを経て、まずはプロットを書くことになったわけだが、実を言えば、前作同様、そんなに難航しなかった。

第二作目、ということで初見の人ももちろん来るだろうが、前作公演と配信、上映会などを経て、D.C.IIIの舞台がどんなものか、という部分を理解した上でほとんどのお客さんがやってくる。
ということは、前作ほど噛み砕いて作品の解説をしなくてもよくなり、その分のリソースを本編の内容に回すことができる。
ただ、前作は休憩なしの「2時間20分」、脚本としては少々長すぎた、という反省もある。ほとんどのお客さんは内容に集中して見られたため、そこまで時間を感じなかったとは言ってくれたが、興行主的にはそういうわけにもいかない。
やはり「2時間ちょい程度」を目安にしたい、という打診はあった。となると、やはり情報量的にはトントンになるだろう。

『ミライヘの伝言』告知画像

次に内容だが、前作は、D.C.IIIの外枠(初音島編の序章から始まって、本筋の風見鶏編を描き、メインヒロインルートを主軸にD.C.IIIのヒロイン全員の設定を網羅しつつ、エピローグを初音島編で終える)を押さえつつ概要を舞台化したわけだが、今作はどうすべきか。

構想はあった。上映会のトークショーでも、姫乃ルートをベースにして、風見鶏⇒初音島⇒風見鶏という前作と逆の展開をすることで、前作と対になった作品を作れるのではないか、的なことを話したと記憶しているが、構想はあくまで構想。
漠然とした腹積もりを「作品」としてまとめるためには、中軸となるものが必要なのだ。

『君と旅する時の魔法』では、本筋部分を整理するため、あえて風見鶏編の清隆と姫乃を登場させず、彼らのバックボーンを完全にオミットしてあった。もちろん、必要に応じての措置だったわけだが、「もし次回作の話が出た場合にはそこを利用させてもらおう」という腹積もりが無かったと言えば嘘になる。
『D.C.III~ダ・カーポIII~』というナンバリングタイトルの主人公はあくまで「葛木清隆」だ。その葛木清隆が「風見鶏に来た目的」(D.C.IIIの物語上の目的地ではない)の部分を中心に構成すれば、前作と対になる物語が作れる。

ただ、問題もあった。清隆の目的を明るみに出し、姫乃の設定を中軸に据えた作品を作ろうとすれば、避けては通れないテーマが浮上してしまう。それば、D.C.IIIだけに留まらない、シリーズをまたぐ一大テーマだ。
それを舞台で扱う以上は、舞台なりの解答を観客に示さねばならない。

プロットをまとめるにあたって、僕は、「コンセプト」「超大まかなあらすじ」「大まかなあらすじ」「細かなプロット」をそれぞれ執筆させてもらった。

僕がプロットにつけた仮のタイトルは、舞台『D.C.III Refrain~ダ・カーポIII リフレイン~ミライへ贈るメッセージ(仮)』。

そう。前作『君と旅する時の魔法』のタイトルが、yozuca*さんの唄う主題歌「ダ・カーポIII キミにささげるあいのマホウ」へのオマージュだったように、新作はfripSideさんの「endless memory~refrain as Da Capo~」に捧げるタイトルにしよう、と考えたのだ。OPはもちろん「endless memory」で!

そう思って喜び勇んでCIRCUSさんに確認を取ってみたら、「すみません。『endless memory』はゲーム内でしか使えないんですよ」とのお返事。
あ、契約なら仕方ないです。当時、舞台化するなんて誰も予測してませんでしたしねw

ともあれ、風見鶏編を主軸に、「サクラギ」という謎の臨時講師の男性を登場させることにして、彼を狂言回しとして「王立ロンドン魔法学園」や「晴れない霧」の基本設定を観客に知ってもらう、という流れを想定し、清隆とリッカ、姫乃の物語のプロットを書きあげることができた。

もちろん、当時、メインで抱えていた別の執筆のお仕事があったので、その合間合間で書かねばならなかったわけだが、それでもプロットの作成は一ヶ月ほどで完了した。
今、プロットを読み返しても、多少の変更はあったものの、ほぼ上演版と同じ内容がすでにできあがっている。

前作が内容やギミックともに、かなりウェルメイドな作品に仕上がったため、二作目のプレッシャは計り知れなかったが、

「これ、行けるんじゃないかな?」

そう思えるものができあがりそうな予感はあったのだった。


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